法律解釈の手筋

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平成30年度 新司法試験 憲法 再現答案

再現答案

第1 青少年の権利

 1 本件条例案8条3項は、青少年の情報摂取の自由を侵害し、憲法21条1項に反し違憲とならないか。

 2 情報摂取の事由が21条1項によって保障されるかが問題となるが、情報の送り手と受け手が分離した現代においては情報の受け手から表現の自由を再構築する必要がある。そこで、表現の自由にはその派生原理として当然に情報摂取の自由が含まれると考える。

 3 もっとも、条例案8条3項はA市内での規制図書類の販売・貸与(以下「販売等」という。) を禁止するにすぎず他の市では規制図書類の購入ができるところ、上記自由への制約はないとの反論が想定される。しかし、青少年は通常移動手段に乏しく、他市へ自力で行くことは困難である。そうだとすれば、A市内での販売等の一律禁止は、上記自由への制約が認められると考える。

 4 それでは、上記制約が正当化されるか。

 (1) そもそも本件制約根拠は公共の福祉ではなくパターナリスティックな制約であるため、制約根拠となり得ないとの反論が考えられる。

    確かに、自己加害の防止は制約根拠とはならないが、自己加害が転じて他者加害になり得るような場合には、パターナリスティックな制約も許されると考える。

    本件では、青少年の健全な育成という制約にあるが、発達途上の者にわいせつな文書が流通することで性的趣向が歪み、性犯罪に走る危険があるので、本件制約は他社加害防止としての側面がある。

    したがって、制約根拠となる。

 (2) 本件自由は21条1項という精神的自由ではあるが、政治的意思決定に関与するよいうような自己統治の価値は稀薄であるので、その限りで権利の重要性は落ちる。もっとも、制約態様は、規制図書類の販売等の一律禁止であり、非常に強度である。

    そこで、①目的が重要で②目的と手段の間に実質的関連性が認められる場合でない限り、違憲と考える。

 (3) 8条3項の目的は前述のとおり青少年の健全な育成にあるが、未来ある青少年を性犯罪者にしないようにすることや、性犯罪被害者の防止の観点から、目的は重要といえる(①充足)。また、上記目的との関係では、販売等の禁止により青少年の健全な育成に資するため、目的適合性がある。そして、青少年の手に規制図書類が手に入ってしまっては意味がないので、一律販売禁止という手段も目的必要性がある。以上にかんがみれば、目的手段の実質的関連性も認められる(②充足)。

(4) したがって、条例案8条3項はこの限りで合憲である。

第2 18歳以上の人の権利

 1 本件条例案8条1項・2項は、18歳以上の人の情報摂取の自由を侵害し、憲法21条1項に反し、違憲とならないか。

 2 まず、上記自由が21条1項によって保障されることは、前述のとおりである。

 3 本件では、日用品等販売店舗や学校近くの店舗から規制図書類を買えなくなるにすぎないため、移動手段も乏しくない18歳以上の者との関係では上記自由の制約がないとの反論が考えられる。

   しかし、日用品等販売店舗から規制図書類が消えては、容易な購入が困難となる。思うに、規制図書類のようなものは、積極的に書店に行って買おうと思うような類のものではなく、ふと思い立った時に近くの店舗で買うものであって、日用品販売等店舗での購入というのが意味を持つといえるはずである。そうだとすれば、本件条例案8条1項2項は、そのような18歳以上の人の情報摂取を妨げるものであって、権利制約があるといえる。

 4 それでは、本件制約は正当化されるか。

 (1) まず、権利の重要性は前述のとおりである。これに対して、制約については、本件制約目的は青少年の健全な育成にあって、それがたまたま18歳以上の人の上記権利を制約してしまったにすぎず、付随的制約にすぎないところ、制約態様は非常に弱い。

    そこで、①目的が正当で②目的手段の間に合理的関連性があれば合憲と考える。

 (2) まず8条1項については、8条2項3項のみでも青少年の健全な育成保護との関係では十分とも思えるため、かかる制約の目的は、青少年の健全な育成に加えて、性風俗に係る善良な市民の価値観を尊重する点にもある。かかる、市民の価値観の尊重という目的は、多数派の価値観を押し付けることになりかねず、そもそも目的が正当でないとの反論があり得るが、性風俗に関しては、一定の共通了解がないとはいえないし、そこまで不当な価値観を押し付けることにはならないであろうから、目的はなお正当といえる。次に8条2項については、学校近くでの販売等の禁止なので、その目的は専ら青少年の健全な育成にあると思われるが、前述のとおり目的重要性が認められる以上、目的は正当である(①充足)。そして、本件手段も日用品等販売店舗で規制図書類は売られていると女性が不快に思うということもある以上、その規制図書類の販売等禁止はそのような不快にさせること自体なくなるため、目的に資するとして適合性はある。以上にかんがみれば、目的手段の合理的関連性も認められる(②充足)。

 (3) したがって、本件条例案8条1項2項もこの限りで合憲である。

第3 スーパーマーケットやコンビニ等(以下「コンビニ等」という。)の権利

 1 本件条例案8条1項はコンビニ等の販売等の自由を侵害し、憲法21条1項に反し違憲とならないか。

 2 まず、上記自由は何らコンビニ等の思想内容を外部に伝達するものではないため表現の自由としての保障が及ばないし、規制図書類の製作者の表現の自由を主張することはかかる権利主体と密接関連性がなく援用することは許されないとの反論が考えられる。

   しかし、店舗にはどのような図書を販売するかの取捨選択の自由があるし、かつ、図書類の情報流通基盤としての重要な役割がある。特に、前述のような規制図書類については日用品等販売店舗には、その販売に大きな役割があるといえる。

   したがって、上記自由は21条1項によって保障されると考える。

 3 そして販売等の一切の禁止によって上記自由は制約されている。

 4 それでは、上記制約は正当化されるか。

 (1) まず、情報流通基盤としての重要性にかんがみれば上記自由に重要性はあるが、前述のとおり自己統治の価値としての役割は稀薄なので、その限りで重要性は劣る。もっとも、規制態様は情報流通の遮断という態様の強いものであり、かつ、それは刑罰によって担保されている。

    そこで、①目的が重要で②目的手段に実質的関連性が認められない限り違憲となると考える。

 (2) 8条1項の目的は前述のとおりであるが、善良な市民の価値観の尊重という目的はその正当性も怪しいものであるところ、重要性は認められない。そこで、本件条例案が正当化されるのは、青少年の健全な育成という目的との実質的関連性が認められる限りであると考える(①充足)。そして、学校近くでもないA市内全域での規制図書類の販売等禁止は、移動手段のない青少年との関係で目に触れることも少ない店舗での販売までも禁止することになり、過剰な規律である。上記目的との関連では、学校近くでの販売等の禁止で充分目的は達成できるといえ、本件手段には必要性がない。したがって、目的手段に実質的関連性がない(②不充足)。

    また、本件条例案7条をみると「衣服の全部又は一部を着けない者の卑わいな姿態」も規制図書類に含めているところ、ちょっと露出度の高い服でも規制図書類にあたりかねず、このような規制は過度に広範であって、必要性に欠ける(②不充足)。

 (3) したがって、本件条例案8条1項は違憲である。

第4 学校周辺の店舗の権利

 1 本件条例案8条2項は、学校周辺の店舗の販売の自由を奪い、憲法21条1項に反し違憲とならないか。

 2 まず、権利の保障については前述のとおりである。

 3 また、権利制約についても販売等の一律禁止という制約がある。

 4 それでは、上記制約が正当化されるか。

 (1) まず、権利の重要性は第3、4(1)のとおりである。また、制約態様も第3、4(1)のとおりである。

    そこで、①目的が重要で②目的手段の実質的関連性が認められない限り違憲となると考える。

 (2) 本件では、学校近くでの規制図書類の販売禁止であるので、その目的は専ら青少年の健全な育成にあるが、かかる目的が重要であること前述のとおりである(①充足)。次に手段であるが、一律禁止にすれば確かに青少年が規制図書類を目にする機会も減り、規制図書類の購入契機を減らすといえるため、目的適合性はある。しかし、そのような契機をなくすだけであれば、規制図書類の表紙にカバーをつければいいだけのことであって、販売等禁止にまでする必要性はない。以上にかんがみれば、目的手段の実質的関連性は認められない(②不充足)。

 (3) したがって、本件条例案8条2項は違憲である。

第5 書店等の権利

 1 本件条例案8条4項は、書店等の規制図書類販売の自由を侵害し憲法21条1項に反し違憲とならないか。

 2 まず、上記自由が表現の自由として保障されることは前述のとおりである。

 3 もっとも、本件では、規制図書類とそれ以外の区分けを要求するにすぎず、上記自由への制約はないとの反論が考えられる。しかし、このような区分けによって規制図書類が見つかりにくくなるし、購入者の販売に心理的障壁もできることから、自由な情報流通を妨げる点で、なお権利の制約はあるといい得る。

 4 それでは、上記制約は正当化されるか。

 (1) まず、権利の重要性は前述のとおりである。もっとも、上記のとおりその制約は販売を禁止するものではなく、情報流通を事実上妨げるにすぎないため、間接的制約にあたり、制約態様は非常に弱い。

    そこで、①目的が正当で②目的手段に合理的関連性が認められない場合には違憲と考える。

 (2) 本件目的は、書店での図書類の区分けであり、青少年の健全な育成に加えて善良な市民の価値観の尊重にもあるといえる。そして、両目的が正当であること前述のとおりである(①充足)。また、本件手段も、図書類の区分けによって市民が規制図書類を目にして不快になることはなくなるといえ、目的適合性があり、目的との間に合理的関連性がある(②充足)。

 5 したがって、本件条例案8条4項は合憲である。

第6 その他

 1 すべての権利に関連して、形式的正当性として本件条例が「法律の範囲内」(憲法94条)であるかが問題となるが、本件条例目的は青少年の健全な育成と市民の善良な価値観の確保にあるのに対し、刑法175条の保護法益は性的風俗にあるところ、目的が異なる。そして、条例の目的について、刑法はその規制を禁止する趣旨を含まないため、許されると考える。

以上

 

 

 

解答実感

・約4300字(思考時間30分、答案作成時間90分)

・出題形式変わって面食らってうまく書けなかった(言い訳)。

・間違いなくパターナリスティックについて論じすぎで草。

・やっぱ販売店舗側は22条1項だな、と反省。

・問題文の事実使えてなさすぎわろち。

・法律の範囲内はもはや書かなかった方がよかったレベル。

・明確性も書きたかった。

・でもそれでも大きく沈んではいないと楽観視している。

・予想は1500~2000番以内