法律解釈の手筋

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平成30年度 新司法試験 民法 再現答案

 

再現答案

 

 

第1 設問1

 1 BはAに対し、売買契約(民法555条(以下法名略))に基づく代金支払請求をすることが考えられる。

 2 ABは平成29年9月10日に本件売買契約を締結しており、履行期である9月21日も到来している。

 3 これに対して、AはBが松茸5キログラムを引き渡すまで代金は支払わないとの同時履行抗弁権(533条)によって反論することが考えられる。

 (1) これに対して、Bは「債務の履行の提供」をしたと再反論することが考えられる。

 (2) 種類物債務の取立債務ついては、履行期に少なくとも分離・準備がなされていれば「履行の提供」にあたると考える。

 (3) 本件では、松茸をCと共に収穫して分離し、かつ、かかる松茸を箱詰めしており履行の準備もしている。そして、履行期である同月21日の夜に履行ができる状態であった。

 (4) したがって、Bは「債務の履行の提供」をしたといえる。

 4 そうだとしても、Aは、本件松茸は履行不能になっているところ、536条1項によって反対債権も消滅したと反論することが考えられる。これに対して、Bは、本件松茸は特定(401条2項)している以上、534条1項によって本件売買代金債権は消滅しないと再反論することが考えられる。

 (1) 種類物債務でかつ取立債務の場合、「債務者が給付をするのに必要な行為を完了し」たといえるためには、再調達義務から免れる以上、厳格に考え、分離・準備・通知が必要であると考える。

    本件では、Bは前述のとおり分離・準備をしている。さらに、BはAに引渡準備が整った旨を電話で連絡しているため、通知もあったといえる。

    したがって、本件では、特定が生じ、534条1項が適用される(534条2項、401条2項)とも思える。

 (2) しかし、債権者主義の制度趣旨は目的物を支配しているも者がその危険を負担すべきであるという点にあるところ、所有権が移転してもなお目的物を債務者が支配しているような場合にはかかる趣旨が妥当しない。

    そこで、種類物債務における対価危険の移転は引渡時と考える。

    本件では、まだ債務者Bが松茸を支配しており、引き渡していない。

    したがって、536条1項が適用されるとも思える。

 (3) もっとも、Aは履行期である同月21日の夜に乙倉庫に松茸を引き取りに行っておらず、受領遅滞(413条)が認められる。

    そこで、受領遅滞の効果として、対価危険がAに移転し、Aのかかる反論は認められない(413条、536条2項)。

 5 そうだとしても、Aは、松茸の滅失についてはBの帰責性が認められる以上、債務不履行解除(543条、415条)をすることが考えられる。

 (1) まず、特定した松茸は滅失しており、Bは履行不能に陥っている。

 (2) もっとも、かかる履行不能にBの帰責性が認められるか。

   ア 受領遅滞の効果によって、債務者は自己の財産と同一の注意義務によって特定物を保管していれば、帰責性が認められない。

   イ 本件では、BはCとともに、松茸の収穫や、乙倉庫の管理を行っている。Cは秋の収穫時にBが毎年雇っている者であり、収穫や乙倉庫の管理は、BのAに対する債務の履行に必要不可欠であって、それを手伝うCは債務の履行過程に組み込まれた履行補助者である。そうだとすれば、Cがうっかり簡易な錠のみで乙倉庫を離れたことについて、Cの帰責性が認められるとも思える。しかし、CはBに対し乙倉庫を離れるときは普段よりもしっかり施錠するように指示していることから、自己の財産と同一の注意義務は履行しているといえる。

   ウ したがって、Cに帰責性は認められない。

 (3) よって、Aのかかる反論は認められない。

 6 以上より、Bの請求は認められる。

第2 設問2(1)

 1 Dの発言は正当である。以下、その理由を述べる。

 2 所有権留保の法的性質

   前提として、所有権留保の法的性質が問題となるが、動産の非占有担保としての重要性を高く評価し、留保所有権者に所有権が残ると考える。もっとも、留保権設定者は物権的期待権を有すると考える。

 3 本件請求はEのDに対する妨害排除請求としての甲トラックの撤去請求であるところ、①丙土地E所有②甲トラックD所有③甲トラック丙と地上存在が必要である。本件では、なおDに甲トラックの所有権が帰属するため、①ないし③の要件を充たすとも思える。しかし、所有権留保の場合、留保所有権者は当該動産について使用収益権限を有しない。そもそも、動産の所有権者に妨害排除請求が認められるのは、当該動産について使用収益権を有する者が撤去する地位を有するとされるからであると考える。そうだとすれば、本件において甲トラックの使用収益権を有しないDは、②要件を充足しないといえる。

   したがって、甲トラックを撤去する立場にあるのはAであり、Dではない。

 4 よって、Dの発言は正当である。

第3 設問2(2)

 1 Eの請求は認められるか。

 2 この点、妨害排除請求権者と登録のある自動車を譲渡した者はあたかも二重譲渡類似の関係にたつところ、自動車の譲渡人は登録名義を譲受人に移転しない限り、妨害排除請求者に対し、その権利の喪失を対抗することができないと考える。

 3 本件では、DはAに対し甲トラックを本件売買契約によりその使用収益権を移転させているが、その登録名義は移転しないままである。

   したがって、DはEに対しその権利の喪失を対抗できない。

 4 よって、Eのかかる請求は認められる。

第4 設問3

 1 遺言の解釈

 (1) 前提

F、G、HはCの子であり、相続人となる(887条1項)。もっとも、Hは廃除(892条)によって推定相続人の地位を喪失しており、相続人とならない。そこで、F及びGが相続人となり、法定相続分はそれぞれ2分の1(900条4号)となる。また、定期預金債権は不可分債権となり、遺産分割の対象となる。

(2) 遺言②について

    「相続させる」との遺言は、被相続人の合理的意思解釈から特段の事情のない限り、遺産分割方法の指定であると考える。

本件では、1200万円の定期預金を相続人Fに対し相続させる旨の遺言である。したがって、遺産分割方法の指定である。なお、Fの法定相続分は2分の1であり、Cの積極財産は2000万円であるから、1000万円を超える200万円については相続分の指定の意思を含むと考える。

(3) 遺言③について

   Gに対して600万円の預金債権を相続させる旨の遺言も、前述と同様に遺産分割方法の指定である。

(4) 遺言④について

   廃除された相続人Hに対して200万円の定期預金債権を与える旨の遺言をしているが、廃除された相続人はその地位を喪失する以上、受遺者としての地位も失うため、かかる遺言は無効であると考える。そこで、200万円の定期預金債権については、法定相続分に満たないGに承継されると考える。

 2 FはGに対し、いくらの金銭支払請求をすることができるか。

   まず、CのBに対する金銭債務は、債権者保護の観点からFGの不可分債務(430条)になると考える。そして、Fは本件債務全額についてBに対し「弁済」をしているため、Gに対し「負担部分」について求償権を有する(430条、442条)。

   したがって、300万円×800万円/(1200万円+800万円)=120万円をFはGに対し請求できる。

以上

 

 

解答実感

・約3000字(思考時間35分/答案作成時間85分)

・ゴミ答案その1。忘却の彼方で再現性は少し低いが、構成とか間違った箇所は間違っていない。

・ここまで悔しい答案は、久しぶり。

・普段判例べったりなのに焦ると突然学説有力説を展開し始める人。

・設問1は典型論点だし、簡単だと思われがちだけど、意外に構成が難しかったし、今見返してみてもやはり難しいのでは…?と思う。しっかりかけている人は実はそんなにいないんじゃないか? にしても、解除は少しやらかしたか…。

・設問2は完全にやらかし。先生ごめんなさい。

・設問3は知らない。なぜ不可分債務にしたかというと、分割債務にしたときにFはGにどう請求するんだ?と、不当利得返還請求という構成が全く思いつかなかったバカっぷりによる。廃除の人も受遺者となれる…短答知識はばかにできないな、と反省。

・予想順位としては、1500番くらいはさすがにいってほしい…。