法律解釈の手筋

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平成28年度 予備試験 刑事訴訟法 解答例

解答例

 

第1 設問1 (以下、刑訴法は法名略。)

 1 逮捕の適法性

 (1) ①の逮捕は、同一の被疑事実について逮捕・勾留が先行するところ、一罪一逮捕・一勾留の原則に反し違法とならないか。

 (2) 刑訴法は、被疑事実、すなわち事件ごとに身体拘束の厳格な期間制限を設けているところ(法203条以下)、同一の被疑事実については一回の逮捕・勾留のみが許される。したがって、再逮捕は原則として違法である。

   ア 「一罪」とは、身体拘束の不当な蒸し返し防止から、被疑事実の同一性をいい、それは公訴事実の同一性と重なると考える。

   イ 本件では、平成28年3月8日の逮捕と同一の被疑事実について①の逮捕がなされており、公訴事実の同一性が認められる。したがって、被疑事実の同一性が認められる。

   ウ よって、「一罪」にあたる。

 (3) もっとも、例外的に適法とならないか。

   ア 再逮捕を常に許さないとなると、捜査の流動性が害される。また、刑訴法には再逮捕を想定している条文があり、再逮捕を一定の限度で許容しているといえる(199条3項、規則142条1項8号)。

     そこで、①新証拠の発見など、新事情の出現があり、かつ、②再逮捕が真にやむを得ない場合[1]には、例外的に再逮捕が許されると考える。

   イ 本件では、甲を釈放した後、甲が平成28年3月5日に、V方で盗まれた彫刻1点を、H県から離れたL県内の古美術店に売却していたという事実が判明しており、新事情の出現がある(①充足)。また、被疑事実は窃盗および現住建造物放火罪という重大な犯罪であり、かつ、甲は前回の逮捕・勾留において一貫して本件被疑事実を否認しているところ、身体拘束の必要性が高い。以上にかんがみれば、再逮捕は真にやむを得ないといえる(②充足)。

   ウ したがって、①の逮捕は例外的に適法である。

 2 勾留の適法性

 (1) ①の再勾留についても適法か。

 (2) 再勾留を直接許容する条文はないが、勾留は逮捕と一連の手続であるため、再逮捕が許容されている以上、再勾留も上記2要件を満たす場合には許容されると考える。 

もっとも、勾留は逮捕に比してその期間が長く、人権侵害の程度が大きいため、より厳格に要件充足性を判断すべきである。

 (3) 本件では、前述のとおり、新事情が発見されている(①充足)。確かに、先行する勾留は20日間と期間満了まで行われており、再勾留は認められないとも思える。しかし、先行する勾留の期間満了を理由に再勾留が認められないとすれば、捜査の実行性が著しく害される。本件の新事情は、彫刻という流通性の低い盗品を、犯行の4日後という近接した日時に甲が売却しているという事情であり、合理的な理由のない限り、甲の犯人性が強く推認される重要な事実である[2]。また、甲も先行逮捕・勾留の否認から一転して自白している。以上に加えて、事案の重大性、甲はかつて否認をしていたという前述の事実も併せてかんがみると、本件再勾留は、期間満了を考慮してもなお真にやむを得ないといえる(②充足)。

 (4) したがって、①の勾留も適法である。

第2 設問2

 1 判決書謄本の伝聞性

 (1) 判決書謄本は、公判廷期日外の供述を内容とする証拠で、当該公判廷外供述の内容の真実性を証明するために用いられるものであり、伝聞証拠(320条1項)にあたるため、原則として証拠能力が認められない。

 (2) もっとも、判決書は裁判官たる「公務員の作成した書面」(323条1号)であり、例外的に証拠能力が認められる。

 (3) したがって、この点において証拠能力は認められる。

 2 類似事実証拠排除法則

 (1) 判決書謄本は、甲の同種事実の前科についての判決書であるところ、類似事実は甲の犯人性を証明するのにある程度は役立つため、自然的関連性はある。

 (2) もっとも、同種前科による犯人性の証明は法律的関連性がないのではないか。

   ア 同種前科による犯人性の立証は、同種前科の存在によって被告人の悪性格(犯罪性向)を推認させ、そこから犯人性を推認させるという二重の推認を経るが、二段階目の推認は極めて弱く、事実認定を誤らせる危険が大きい。また、争点拡散のおそれもある。そこで、原則として同種前科による犯人性の立証は法律的関連性がなく、許されないと考える。

    もっとも、二重の推認による弊害のおそれがない場合、すなわち、同種前科から直接犯人性を推認できる場合には、かかる立証も許されると考える。

     そこで、①前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し[3]、かつ、②それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似する場合には、法律的関連性が認められる[4]

   イ 本件では、確かに、盗品が彫刻であったり、放火に火炎瓶を用いたりするなど、犯罪事実に特徴がないではない。しかし、彫刻は高級品であり、窃盗犯人が彫刻を見つければ盗むことが相当程度考えられる。放火の方法も、ガソリンやウィスキー瓶という比較的容易に入手しやすい道具によるものであるし、そもそもの放火自体も、窃盗犯人が証拠隠滅のために行う犯行として合理的といえる。以上にかんがみれば、本件前科事実は、およそ甲以外の別人によっては行われないほどの犯行とまではいえず、顕著な特徴があるとはいえない(①充足)。

   ウ したがって、本件同種前科による犯人性の立証は、法律的関連性がない。

 (3) したがって、本件判決書謄本を甲が本件公訴事実の犯人であることを立証するために用いることは許されない。

以上

 

[1] 具体的には、事案の重大性、事情変更による逮捕の必要度、先行逮捕・勾留の身体拘束期間とその間の捜査状況などの諸事情を勘案して、被逮捕者の利益と対比してみても再逮捕は真にやむを得ない場合である。あてはめの際に留意。

[2] 近接所持の法理を参照。

[3] 顕著な特徴とは、それが別人によっても行われるということが経験則上考えにくいような場合をいう。

[4] 最決平成24年9月7日参照。なお、最決平成25年2月20日は、前科以外の他の類似犯罪事実の証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合にも同様の法理があてはまるとした。