法律解釈の手筋

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【予備試験】 刑事実体法 簡易事例まとめ 【口述対策】

 

 

1.窃盗罪(235条)

(1)占有の存否[1]

【事例1-1】 

Xが、海外出張中であり長期間家を空けているAの家に侵入し、現金100万円を持ち去った場合、何罪が成立するか(住居侵入罪以外)[2]

【事例1-2】

 事例1-1を変えて、Xの盗んだ物がA宅の庭に置いてあった自転車であった場合はどうか[3]

【事例2-1】

 ホテルに宿泊していた客Aが、トイレにカメラを置き忘れて、そのままチェックアウトした後、Xがそのカメラを持ち去った場合、何罪が成立するか[4]

【事例2-2】

 事例2-1を変えて、被害者Aのカメラを置き忘れた場所が鉄道列車内である場合はどうか[5]

 

(2)意思に反する占有移転

【事例3-1】

 Xが体感器(パチスロの大当たりに反応して、打ち手に知らせる機械)を装着してパチスロ遊戯をした場合、何罪が成立するか[6]

【事例3-2】

 事例3-1に加えて、Yが前述のような行為をしているXを隠ぺいする目的をもって、共犯者の壁役として、その隣で普通にパチスロ遊戯をしていた場合、Yには何罪が成立するか[7]

 

(3)不法領得の意思[8]

(ⅰ)権利者排除意思[9]

【事例4-1】

製薬会社である甲会社の部長Xが、厚生労働省担当者Yと共謀のうえ、他社の新薬製造承認申請用書類を持ち出し、コピーした後、直ちに返却した場合、Xについて何罪が成立するか[10](同書類は機密情報である)。

【事例4-2】

Xが、区役所が管理保管する区役所内の閲覧コーナーのみでの閲覧が許されている住民基本台帳閲覧用マイクロフィルムを正規の方法で借り、これを無断で区役所外に持ち出し、コピーした後、直ちに原マイクロフィルムを区役所に返却した場合、何罪が成立するか[11](区役所は、かかるデータを閲覧させることで利益を上げているわけではないし、住民に対するサービスとして閲覧業務を行っている)。

(ⅱ)利用処分意思

【事例5-1】

 XがAに暴行を加えた後、物取りの犯行に見せ、犯行を隠ぺいする目的でAの所持していたバッグを持ち去った場合、何罪が成立するか[12](暴行罪、傷害罪以外)。

【事例5-2】

 Xが被害者Aと交際するきっかけをつかむ目的で、身元の分かる書類などの入った財布を盗んだ場合、何罪が成立するか[13]

【事例5-3】

 事例5-2を変えて、拾得者を装って被害者Aに接触を図る目的で盗んだ場合はどうか[14]

【事例5-4】

 事例5-2を変えて、刑務所に服役する目的で財布を盗んだ場合はどうか[15]

 

2.詐欺罪(246条)

(1)クレジットカードの不正使用

(ⅰ)自己名義カードの不正使用

【事例1-1】

 クレジットカード会員であるXが代金支払意思・能力がないにも関わらず、加盟店において自己名義のカードを使用して商品を購入した場合、何罪が成立するか[16]

【事例1-2】

 事例1-1において、会員カード加盟店規約に、加盟店は代金支払意思・能力のないカード会員の取引に応じた場合に、法的責任を負うというような責任条項が一切ない場合、結論が異なり得るか[17]

(ⅱ)他人名義カードの不正使用

【事例2-1】

Xが第三者Aのクレジットカードを窃取して、それを無権限で利用して、加盟店で商品を購入した場合、何罪が成立するか[18](窃盗罪以外)。

【事例2-2】

 事例2-1を変えて、第三者Aがクレジットカードの使用を許諾していた場合はどうか[19]

【事例2-3】

 事例2-2を変えて、第三者がXの家族であった場合、結論は異なり得るか[20]

 

(2)証明文書の不正取得

【事例3-1】

Aが名義を偽って運転免許証を不正に取得した場合、何罪が成立するか[21]

【事例3-2】

事例3-1を変えて、他人名義で預金通帳の交付を受けた場合はどうか[22]

 

(3)振込め詐欺

【事例4-1】

Xが、Aの息子になりすまして、Aに電話をかけてお金が必要でであるかのように偽り、Aにあらかじめ用意していたB名義のC銀行の預金口座に100万円の振り込みを行わせた場合、何罪が成立するか[23]

【事例4-2】

 事例4-1のあと、Xから依頼を受けたYが、事情を知ったうえで、C銀行のATMにおいて、B名義のキャッシュカードを利用して被害金額全額を払い戻した場合、何罪が成立するか[24]

 

(4)「重要な事項」該当性[25]

【事例5-1】

Xが、空港のチェックインカウンターの係員に対して,真実はX名義の搭乗券をカナダに不法入国を企図している外国人に交付し,同人をXとしてその航空機に搭乗させる意図であるのにその情を秘して,あたかも自身が搭乗するかのように装って,国際線の搭乗券の交付を受けた場合、何罪が成立するか[26]

【事例5-2】

事例5-2を変えて、国際線ではなく国内線であれば結論は異なり得るか[27]

【事例5-3】

事例5-2に重要事項性が認められないことを前提として、Xの搭乗手続を担当した職員が本人確認について一切許してはならないとの思いから、必要以上に厳格な確認を行っていた場合はどうか[28]

【事例5-4】

Xが、覚せい剤を渡すつもりがないのに、覚せい剤を後日渡すと言って100万円を被害者Aから譲り受けた場合、何罪が成立するか[29]

 

3.横領罪(252条以下)

(1)横領後の横領

【事例1-1】

Xが業務上占有するA所有の土地について、Bに対して同土地の抵当権を設定し、さらにその1週間後、Cに対して同土地を売却し所有権移転登記を了した場合、何罪が成立するか[30]

【事例1-2】

事例1-1を変えて、XのCに対する売却行為がBへの抵当権設定行為の数年後になされた場合、両罪の罪数は異なりうるか[31]

【事例1-3】

事例1-1を変えて、占有しているものが金銭であり、その金銭の一部を繰り返し遊興費として費消する場合、罪数はどのように評価すべきか[32]

 

(2)横領と背任[33]

【事例2-1】

甲銀行の役職員Xが、第三者Aが融資適格を有していないにも関わらず、融資によってあげた利益を着服する目的でAに対して銀行資金1000万円を融資した場合、何罪が成立するか[34](甲に財産上の損害が生じたとする)。

【事例2-2】

事例2-1を変えて、Xが甲銀行の経営を立て直す目的だった場合はどうか[35]

【事例2-3】

銀行の役職員Xが、自らの地位を保全する目的だった場合はどうか[36]

 

4.盗品等関与罪[37](256条)

(1)被害者による盗品等の回復

【事例1-1】

Xが、Yの盗んだ壺を、Yのために被害者Aに100万円で返還するため、Y宅に向けて壺を運搬した場合、何罪が成立するか[38]

【事例1-2】

事例1-1を変えて、Xが被害者Aから依頼を受けて100万円で壺をXから取り戻した場合はどうか[39]

 

[1] 「窃取」とは、他人の占有する財物を、占有者の意思に反して自己又は第三者の占有に移転する行為というところ、窃盗罪成立には、他人の占有が必要。

[2] 窃盗罪が成立(最決平成11・12・9。なお、この事例自体は不動産侵奪罪であり、判例の射程は問題となりうる)。

「本件土地の所有者である小島工務店は、代表者が行方をくらまして事実上廃業状態となり、本件土地を現実に支配管理することが困難な状態になったけれども、本件土地に対する占有を喪失していたとはいえず」として、占有を認める。

現実に管理されていなくとも、①人の看守なき建物が多数存在すること及び②登記名義によって権利関係は公示されている不動産の特殊性から、不動産の管理者には不動産の事実的支配があり、その中の財物について占有は認められる。

[3] 窃盗罪が成立。

一般人の自由な立ち入りを許容しない態様で管理されていれば占有が認められる(家に鍵がかかっているか否かで【事例1-1】の窃盗罪の成否は左右されない)とすれば、囲繞地についても管理者の占有が認められる。

[4] 窃盗罪が成立(大判大正8・4・4)。

確かに被害者Bの占有はないが、ホテルの管理者が事実上支配しているといえるため、カメラに対するホテル管理者の占有が認められる。

[5] 占有離脱物横領罪が成立(大判大正15・11・2)。

被害者Bの占有もないし、電車という多数の者が出入りするような場所では鉄道の管理者にカメラに対する排他的支配があるとはいえないため、他人の占有が認められない。

[6] 窃盗罪が成立(最決平成9・4・13)。

体感器を装着してのパチスロ遊戯は通常の遊戯方法を逸脱するものであり、被害店舗の意思に反する占有移転行為にあたる。

[7] 犯罪不成立(最決平成21・6・29)。

確かに、通常の遊戯方法であっても、被害行為を隠ぺいするためのパチスロ遊戯行為は、被害店舗の意思に反する。しかし、意思に反する占有移転とは、窃盗罪を基礎づけるに足りる「合理的意思」に反することが必要であるところ、通常の遊戯方法にとどまる本件行為は、店側の意に沿わない占有取得であったとしても「合理的意思」には反しない(同様の事例として、未成年者が自販機で酒を購入した場合を想起すべき)。

[8] 使用窃盗及び毀棄隠匿罪との区別の必要性から窃盗罪成立には、不法領得の意思が必要。不法領得の意思とは「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し処分する意思」(最判昭和26・7・13)をいう。

[9] ここでの議論は横領罪にも妥当する。

[10] 窃盗罪が成立(東京地判昭和59・6・15)。

「本件各資料の経済的価値がその具現化された情報の有用性、価値性に依存するものである以上、資料の内容をコピーしその情報を獲得しようとする意思は、権利者を排除し右資料を自己の物と同様にその経済的用法に従つて利用する意思にほかならない」として、不法領得の意思を認めた。

機密情報については、それが第三者に知られないことに価値があるのであり、コピーする目的はその利用可能性の侵害の認められるものである以上、権利者排除意思が認められる。

[11] 窃盗罪が成立(札幌地判平成5・6・28)。

市町村が管理する住民に関するデータは、市長村が排他的に保管・管理すべきものであり、これに関する記録を第三者が管理・保持することはおよそ容認されていないため、権利者排除意思が認められる。

[12] 器物損壊罪が成立(東京地判昭和62・10・6は窃盗罪の成立を否定するのみで器物損壊罪の成立については明示しない。なお、東京高判12・5・15は窃盗罪成立を肯定しているため、窃盗罪成立もあり得る)。

事後的奪取意思であるため強盗罪は成立しない。また、犯行隠ぺい目的は、財物を犯行現場から持ち去った結果として一定の利益を受けようとしているにすぎないため、利用処分意思がない。

[13] 窃盗罪が成立(東京高判19・3・16)。

被害者のプライバシー情報という財物を利用処分する意思がある。

[14] 窃盗罪が成立(東京高判平成19・3・16)。

財物の利用返還という利用態様によって目的を達成しようとするものであり、商品の返品・転売目的で盗んだ場合と同様といえるため、利用処分意思がある。

[15] 器物損壊罪が成立(広島地判昭和50・6・24。なお、同判決は、器物損壊罪の成否については判断していない。また、神戸地判平成15・10・9は窃盗罪成立)。

刑務所に入ることになるのは、財物を奪う行為の結果であり、財物の効用を享受する意思とはいえないため、利用処分意思がない。

[16] 被害店舗に対する1項詐欺罪が成立。

加盟店規約の解釈として、加盟店がカード会員に支払意思・能力がないことを知りながら、漫然とカード取引をした場合に信義則違反などを理由にカード会社から立替払いを受けられないおそれが認められれば、加盟店はカード会員の支払意思・能力に関心を持たざるを得ず、かかる事項は財物交付の判断の基礎となる「重要な事項」に該当する。

[17] 異なり得るが、なお詐欺罪が成立する余地あり。

加盟店にとっては、クレジットカード取引を維持することが経営上きわめて重要であり、そのためには、自らもクレジットカードシステムを構成する一員としてカード会社に損害を与えないように配慮すべきであり、加盟店固有の利害として会員の支払意思・能力は「重要な事項」にあたり、被害店舗に対する1項詐欺罪が成立し得る。

もしくは、カード会社の代理人として、カード会社に損害を生じさせないため、会員の支払意思・能力に関心を払わなければならないことがカード会社財産を処分する立場として「重要な事項」にあたり、カード会社を被害者とする2項詐欺罪が成立し得る。

[18] 被害店舗に対する1項詐欺罪が成立。

①自らが代金を支払う意思があるかのように装い、かつ、②カード会員であるとなりすましているが、①の点だけで自己名義カードの不正使用と同様に、詐欺罪を肯定できる。

[19] 被害店舗に対する1項詐欺罪が成立(最決平成16・2・9参照)。

上記①はなく、②の欺罔行為しかない。しかし、クレジットカード決済システムにおいては、カード本人が信用取引を行うことが大前提であり、加盟店の従業員にも、カード会員の同一性の確認が義務付けられている以上、カード利用者がカード会員か否かは財産交付の判断の基礎となる「重要な事項」にあたる。

[20] 詐欺罪は不成立と考え得る。

実質的違法性阻却があり得る。もしくは、家族間でのカードの貸し借りについてはそこまで厳格な対応が採られていないとして、このような範囲におけるカード利用者とカード会員の同一性齟齬は「重要な事項」に当たらないと考え得る。

[21] 公正証書原本不実記載罪(157条2項)が成立(高松地丸亀市判昭和38・9・16)。その他、アメリカの旅券(最判昭和27・12・25)、印鑑証明書(大判大正12・7・14)も、詐欺罪成立否定。

事実証明文書であり、被害者に財産上の損害が生じない。

[22] 詐欺罪が成立(最決平成14・10・21)。その他、保険証書(最決平成12・3・27)、国民健康保険被保険者証(最決平成18・8・21)、住民基本台帳カード(福岡高判平成24・4・20)も、詐欺罪成立。

「預金通帳は、それ自体として所有権の対象となり得るものであるにとどまらず、これを利用して預金の預入れ、払戻しを受けられるなどの財産的な価値を有するものと認められるから、他人名義で預金口座を開設し、それに伴って銀行から交付される場合であっても、刑法246条1項の財物に当たる」。

事実証明文書にとどまらず、経済的な価値・効用を付与する文書であるため、被害者に財産上の損害が生じる。

[23] 1項詐欺罪が成立(実務)。

確かに、振込みによって現実の金銭の移動は行われていない(したがって、理論的には2項詐欺罪が素直な理解といえる)。しかし、振込みによる資金移動が実質的には現金の占有移転と異ならないといえるため、振込みを占有の移転とみることができる(したがって、既遂時期は払戻時でなく、振込時となる)。

[24] 銀行に対する窃盗罪が成立(名古屋高判平成24・7・5)。

「その預貯金債権が振り込め詐欺の被害者が振り込んだ金銭によるものである場合など、預貯金口座が法令や公序良俗に反する行為に利用され、又は利用されるおそれがあると認められるときには、預貯金取引を停止する、という預貯金規定に基づき、口座を凍結して預貯金払戻し請求には応じない、という取扱いをしていること」ことから、本件行為はATM管理者の意思に反するとした。

振込め詐欺の被害金の振込先として利用されている以上、「振込みに係る金員を不正に取得するための行為であって、詐欺罪等の犯行の一環を成す場合」(最判平成20・10・10)であり、払戻行為が権利濫用行為である以上、銀行が払戻に応じないことについて実質的利益が認められる。したがって、ATMでの払戻行為はATM管理者の合理的意思に反する。なお、振り込め詐欺救済法の適用時に限って詐欺罪成立とする見解もある。

[25] ①挙動による欺罔行為と②重要事項性は異なる判断基準である。①は、当該行為に欺罔行為が含まれるかをみるものであり(支払うつもりなく飲食店で注文する行為は、注文行為は客観的にみれば欺罔行為とはいえないとも思えるが、支払意思・能力があることをもその注文行為の前提に含まれていると取引通念上いえる、というような場合)、重要事項性はその欺罔行為の実質的法益侵害性をみるものである(支払意思・能力がないことは当然に取引通念上重要といえる)。したがって、未成年者がコンビニでアダルト本を購入する場合は①を満たさない可能性があるが、20歳以上かどうかの確認が確認画面タッチ等でなされる酒・たばこを購入する場合は①は当然に満たすが、②を満たさない、ということになる。もっとも、①②の判断は大きく重なり合うため、②を満たさなければば①も満たさないことが多い。

重要事項性は、従来財産的損害の要件として検討されてきたものであるが、財産的損害は重要事項性判断のメルクマールとして機能し、要件論としては欺罔行為に収斂する。

[26] 詐欺罪が成立(最決平成22・7・29)。

まず、搭乗券の交付を請求する行為それ自体が、請求者本人が搭乗する意思を示す行為であり、①挙動による欺罔行為といえる。

また、搭乗券の交付に際して厳重な本人確認が行われていたのは、乗客本人以外の者の搭乗が航空機の運航の安全上重大な弊害をもたらす危険性を含むものであり、本件航空会社がカナダ政府から同国への不法入国を防止するために搭乗券の発券を適切に行うことを義務づけられていたこと等の点において、当該乗客以外の者を航空機に搭乗させないことが本件航空会社の航空運送事業の経営上重要性を有していたからであるため、本件欺罔行為は②財産交付の判断の基礎となる「重要な事項」を偽るものである。

[27] 異なり得る。すなわち、犯罪不成立。

国内線であれば、国際線よりもテロ・不法入国について防止の要請が低く、本人の同一性について重大な関心を払っていないとも考えられるため②「重要な事項」を偽る行為といえないと考えられる(そもそも①挙動による欺罔行為を満たさないとの可能性もある)。

[28] 犯罪不成立。

重要事項性の判断は被害者の個人的関心ではなく、当該取引・業務における一般的な重要性によって客観的に判断されるべきであるため、「重要な事項」にはあたらない。

[29] 詐欺罪が成立。

確かに、覚せい剤を入手したいという目的は詐欺罪として保護される目的達成でなく、覚せい剤を実際に入手できるかどうかは「重要な事項」にあたらないとも思える。しかし、私人が(商取引の局面ではなく、あくまでも個人的な目的から)自己の財物を処分する際には、その目的が客観的に正当なものではないとしても、主観的な目的を幅広く保護する余地があると思われる。

そもそも、不当な目的が「重要な事項」判断に影響を及ぼすのかが疑問でもある。

[30] 先行行為及び後行行為に業務上横領罪が成立(最大判平成15・4・23)。両罪は包括一罪となる。

横領とは「所有権の機能を危殆化する行為」であれば足り売却はもちろん、抵当権設定も換価処分によって所有権を喪失する危険を設定するのだから「横領」に当たるし1個の客体に対して複数回の「横領」を観念することもできる。

[31] 異ならない。すなわち、包括一罪。

横領罪は所有権の機能の危殆化行為と完全な侵害行為を包摂して規定している以上、所有権を完全に侵害する過程すべてを包括的に評価すべきである。

[32] 連続的包括一罪。

確かに客体は異なるが、同一の委託信任関係に基づいて、同一の被害者に対して犯行が行われているのであれば、包括一罪と評価すべきである。この場合も、各横領行為の時間的連続性は問題とならない。

[33]横領と背任の区別は、自己の名義・計算で区別、すなわち、横領罪の領得行為(不法領得の意思の発現行為)があれば横領罪が成立し、背任罪は法条競合となる説を前提とする。また、横領罪にも不法領得の意思として権利者排除意思及び利用処分意思の2つを要求する説を前提とする。

[34] 業務上横領罪が成立(会社法960条に特別背任罪が規定されており、それが業務上横領罪よりも量刑が重いため、本来は同条が優先適用されると考えられる)。

利用処分意思が認められる。

[35] 犯罪不成立(最決平成13・11・5)。

利用処分意思(自己の計算)がなく横領罪は成立しないし、図利加害目的がないため背任罪も成立しない。

[36] 背任罪が成立。

財物から生じる効用それ自体を享受する意思はないため、利用処分意思は認められない。しかし、間接的利害目的が認められるため、背任罪が成立する。

[37] 保護法益は①被害者の追求権と②本犯助長性に求められる。

[38] 盗品等運搬罪が成立(最決昭和27・7・10)。

「窃盗犯人の利益のためにその領得を継受して贓物の所在を移転したものであつて、これによつて被害者をして該贓物の正常なる回復を全く困難ならしめたものである」とした。

まず、被害者に買い取らせるための行為は②本犯助長性がある。また、被害者は本来盗品等の返還を請求できる地位を有しているのであるから、金銭的負担を強いられる状況それ自体が、①正常な追求権侵害といえる。

[39] 犯罪不成立。

「窃盗犯人の利益のために」との判例の射程が及ばない。

確かに、盗品等関与罪の①追求権侵害②本犯助長性はあるため、盗品等関与罪が成立するとも思える。しかし、被害者はおよそ盗品等関与罪の主体たり得ない(構成要件にあたらない)以上、被害者のために行為する第三者についても、被害者の不可罰性が拡張されると考える。