法律解釈の手筋

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慶應ロー入試 平成26年度 刑法 解答例

解答例

1 甲が売店から新聞を手に取りそのまま売店から遠ざかった行為に窃盗罪(235条)が成立する。

(1) 新聞は売店たる「他人の財物」にあたる。

(2) 「窃取」とは、占有者の意思に反して、他人の財物を自己または第三者の占有に移転する行為をいうところ、甲の上記行為は、占有者たる売店店員の事実上の管理・支配が及んでいた新聞を、自己の占有に移転しているため、「窃取」にあたる。

(3) Xは代金も支払わずに新聞を取得することにしており、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用処分する不法領得の意思がある。

(4) Xは上記事実を認識・認容しており、故意が認められる。

(5) よって、甲の上記行為に窃盗罪が成立する。

2 甲がAに対し新聞を投げ、それによってAが線路上に転落し、電車に轢かれて死亡した行為に、傷害致死罪(205条)が成立する。

(1) 甲の上記行為はAに新聞を投げつけているところ、不法な有形力行使たる「暴行」(208条)にあたる。もっとも、Aの反抗を物理的に抑圧する有形力行使にはあたらず、心理的に抑圧する有形力行使でもないため、事後強盗罪の「暴行」にはあたらない。

(2) Aは即死しており、死という結果が発生している。

(3) 甲の上記行為と結果との間に因果関係が認められるか。

  ア 法的因果関係は、行為者の当該行為に当該結果発生を帰責させることができるかという問題であるところ、当該行為の危険性が結果へと現実化したといえる場合には、因果関係が認められる。そして、行為者の行為と結果との間に介在事情が存在する場合には、①介在事情が当該行為によって誘発されたか②介在事情に異常性がないか、という観点から危険性を判断する。

  イ 本件では、暴行罪の暴行と死という結果との間の因果関係が問題となっている。傷害罪には暴行罪の結果的加重犯類型が含まれるところ、さらなる加重犯として傷害致死罪も成立し得る。

    確かに、本件では、Aがバランスを崩して線路上に転落するという被害者の介在事情が存在している。しかし、Aがバランスを崩して線路上に転落したのは、甲がAに向けて新聞を投げ、それをAがよけたことに起因しており、Aの上記行為に誘発されたものである(①充足)。また、甲の上記行為は電車の駅のホームで行われているため、Aが線路上に転落することは十分あり得るものであり、線路上に転落したAが電車に轢かれることも通常性を有するといえる(②充足)。

    また、本件では、ホーム下に退避スペースがありそこに避難していればAが死亡することはなかったにも関わらず、Aが転落した線路上から隣の線路上に逃げたために反対方向からの列車に轢かれて死亡したという介在事情も存在する。しかし、前述のとおり、そもそもAが線路上に転落したのは甲の上記行為に誘発されたからであるし(①充足)、転落直後に列車が侵入してくるという緊急事態に対して、ホーム下に避難するという合理的行為を要請することは妥当でない。そうだとすれば、Aが隣の線路上に逃げたという介在事情も異常性を有するものとはいえない(②充足)。

    以上にかんがみれば、甲の上記行為の危険性が、Aの死という結果へと現実化したといえる。

  ウ したがって、因果関係が認められる。

(4) 甲は、Aの足音を頼りにAに対して新聞を投げているところ、上記行為が暴行罪の暴行にあたることを認識・認容しているといえ、故意が認められる。また、結果的加重犯は類型的に結果発生の高度の危険性が内包された犯罪類型であるため、重い結果について過失は不要である。

(5) よって、甲の上記行為に傷害致死罪が成立する。

3 以上より、甲の一連の行為に、①窃盗罪②傷害致死罪が成立し、両者が行為も保護法益も別個のものであるため、併合罪(45条1項)となる。

以上