法律解釈の手筋

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定期預金における民法478条の手筋-最判昭和41年判決&59年判決-

 

第1 定期預金の払戻しと478条適用

1.預金契約とは

(1)預金契約の法的性質

預金契約とは、預金者と金融機関との間でなされる契約であり、その法的性質は消費寄託契約(666条)であることに判例学説でほぼ争いなし。

なお、金融機関は預金に関する入出金事務などの管理を行っているところ、委任・準委任契約の性質も有するとされる(最判平成21年1月22日参照。金融機関が取引経過開示義務を負うとした。)。

(2)普通預金と定期預金

普通預金とは「金額のいかんにかかわらず、いつでも預け入れと払戻しができる預金」(潮見佳男『プラクティス債権総論』第4版348頁)をいう。

定期預金とは「一定期間を定めて預け入れ、その期間が満了するまでは原則として払戻しの請求ができない預金」(前掲潮見348頁)をいう。

 

2.定期預金の期限前払戻しとは

定期預金の期限前払戻しとは、定期預金を期限前に中途解約し、受寄物である金銭の払戻しを受けることをいう。

その法的形式は、預金契約(消費寄託契約)の解約と払戻し(666条2項に基づく返還義務)から成る(通説的見解は、寄託者の寄託物返還請求の意思表示に、解約告知の意思表示も含まれ、その告知により契約が終了し、返還義務が発生するとされる。)。

 

3.定期預金の期限前払戻しと478条適用

定期預金の期限前払戻しに478条が適用されるか。前述のとおり、定期預金の期限前払戻しについては、解約という法律行為も含まれるところ、解約の有効性については表見代理規定によって規律されるべきではないか。

【結論】

肯定(最判昭和41年10月4日)

【理由】

「期限前払戻の場合における弁済の具体的内容が契約成立時にすでに合意により確定されている」。すなわち、定期預金の中途解約は当事者においてすでに予定されており、期限前払戻しは「解約申出という方法による返還請求」とみることができる。

 

4.参考論証

(1) 本件における定期預金の期限前払戻しは「弁済」にあたるか。

ア 確かに、期限前払戻しは、定期預金の解約と払戻しという法律行為から成り立っており、解約という法律行為は弁済ではない。しかし、定期預金の解約は定期預金契約において既に当事者間において合意がされており、預金者は必要があれば引き出せると考えていることに鑑みれば、実質的にみて解約申出という方法による返還請求とみることができる。

   そこで、定期預金の期限前払戻しは「弁済」にあたると考える。

イ 本件は、定期預金の期限前払戻しである。

ウ したがって、「弁済」にあたる。

 

第2 預金担保貸付と478条類推適用

1.預金担保貸付とは

(1)預金担保貸付とは

定期預金を担保として、銀行が預金者に金銭を貸し付けること。定期預金の期限前払戻しでは、預金者が金利の面で不利を受けることになるため、預金担保貸付のメリットがある。

定期預金の満期までに貸付金が返済されない場合、定期預金との相殺によって処理される。

(2)預金担保貸付の法的性質

通説的見解によれば、金銭消費貸借契約(587条)と、相殺(505条1項)という法律行為から成るとされる。

 

2.預金担保貸付と478条適用

預金担保貸付について、478条が適用されるか。前述のとおり、預金担保貸付は消費貸借契約及び相殺という法律行為であり、「弁済」にはあたらないとも思えるため、問題となる。

【結論】

直接適用はできないが、478条類推適用を認める(最判昭和59年2月23日)。

【理由】

「少なくともその相殺の効力に関する限りは、これを実質的に定期預金の期限前解約による払戻と同視することができ、また、そうするのが相当」と述べるにとどまり、判例からはその理由は明確には分からない。もっとも、前述のとおり期限前払戻しと預金担保貸付は金利の面での違いがあるにすぎず、畢竟取引の実態として別異に解するまでの積極的理由はないとの考慮があるといえる。そうだとすれば、別記事で述べた通り、478条類推適用が認められる。もっとも、貸付であって「弁済」ないしそれと同視できる期限前払戻しとも法的性質は異なる以上、類推適用にとどまる。

そして、この理論を推し進めた場合、そもそも期限前払戻しと同視できるとされるのは貸付行為であり、相殺がなされるまでもなく478条類推適用が認められるとの結論が得られる(最高裁平成9年4月24日は、保険契約における契約者貸付制度の枠組において、相殺がなされる前の時点で478条類推適用の可能性を肯定する)。預金担保貸付は、預金を担保として取得しつつ貸付を行うことで、金利面での利益を受けながら期限前払戻しと同様の実態を確保できる以上、貸付行為自体が478条適用の主たる行為といえるからである。

 

3.参考論証

(1) 預金担保貸付は「弁済」にあたるか。

ア 預金担保貸付の法的性質は金銭消費貸借契約と定期預金との相殺であり「弁済」にはあたらないため、478条の直接適用はない。

  しかし、預金担保貸付は金利面での利益を得るために期限前払戻しに代わって行われるものであり、貸付と相殺という一連の法律行為は、実質的にみて定期預金の期限前払戻しと同視できる。そして、期限前払戻しは実質的にみて解約申出という方法による返還請求であり「弁済」と同視できるため、預金担保貸付も478条が類推適用されると考える。

イ 本件は、預金担保貸付である。

ウ したがって、478条が類推適用される。