法律解釈の手筋

再現答案、参考答案、法律の解釈etc…徒然とUPしていくブログ… 

債務不履行解除の手筋-最判昭和36年判決&平成8年判決-

第1 付随的債務の債務不履行解除

1.最高裁昭和36年11月21日第三小法廷判決

【事案(簡易版)】

YはAに対し甲土地を売却した。その後、AはXに対し同土地を売却した。YはAのために租税金を納付したため、それの償還請求をAに対してしたが、Aがこれに応じなかった。そのため、YはAとの甲土地売買契約について、素材負担義務不履行を理由として解除した。

Xは自己の甲土地所有を主張し、Yの解除の意思表示について争った。

第1審、原審ともに「地租固定資産税負担義務は契約の要素をなすものでなく、また右義務の不履行によって契約をなした目的を達成することが不能になるものではない」として、Yの解除を認めず、Xの請求を認容した。

 

【判旨】

上告棄却

「判示租税負担義務が本件売買契約の目的達成に必須的でない附随的義務に過ぎないものであり、特段の事情の認められない本件においては、右租税負担義務は本件売買契約の要素でないから、該義務の不履行を原因とする上告人の本件売買契約の解除は無効である、というにあること判文上明白である。そして、法律が債務の不履行による契約の解除を認める趣意は、契約の要素をなす債務の履行がないために、該契約をなした目的を達することができない場合を救済するためであり、当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠つたに過ぎないような場合には、特段の事情の存しない限り、相手方は当該契約を解除することができないものと解するのが相当であるから、右と同趣旨に出でた原判決は正当であり、原判決には所論の違法はない。」

 

2.判例の意義

法定解除制度の意義について、債権者の反対債務からの解放と捉え、それは契約目的の不達成という場合であるとした。それを前提に、いわゆる付随的義務についての不履行は特段の事情の存しない限り、契約解除することができない、とした。

すなわち、

要素の債務についての不履行→解除可

付随的義務についての不履行→原則解除不可、例外的に特段の事情で解除可

となる。

なお、「要素」の債務か「付随的」債務かの区別は、契約目的の達成に必要か否かという観点から判断することになり、契約解釈の問題となる。具体的判断基準は判例からは読み取れない(要検討)。また、付随的債務不履行における「特段の事情」についても、どのような場面を想定しているか、判例からはうかがえない(要検討)。

 

3.民法541条の催告期間の徒過は、常に契約目的不達成を導くか

541条の催告期間はすでにだいたいの履行の準備を終えているはずの債務者が履行するために必要な期間であり、債権者の契約目的不達成を導くほどの長期間ではない。

したがって、債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは解除が認められない(改正法541条但し書参照)。

 

3.現物返還の場合の使用利益返還請求の可否

判例は、現物返還の場合も、果実と使用収益の返還義務を肯定する。その根拠は、545条2項は金銭の場合には利息を付して返還しなければならないと規定していることとの均衡とされる。

しかし、判例の立場には疑問も呈されている。545条2項の利息とは、法定果実である収益であり、使用利益ではない。したがって、果実の返還義務を認めるのはよいとして、使用利益は545条2項との均衡論からは導けないのではないか。

なお、給付の巻き戻し場面でも、債権者債務者の有する目的物と代金が客観的に等価的均衡を有している場合で、かつ、代金の利息と目的物の果実、使用利益が等しいといえる場合には、575条類推適用の余地があると思われる(しかし、かかる場面はかなり例外的になると考えられる。)。

また、189条1項の抗弁によって債務者が使用利益の返還義務を免れることはできない。給付利得の場面では、契約法が物権法に優先するからである。

 

 

第2 複数契約上の債務不履行と契約解除

1.最高裁平成8年11月12日第3小法廷判決

【事案(簡易版)】

XはY会社と、リゾートマンションの一室の売買契約を締結(乙契約)し、かつ、βクラブの会員権を購入(甲契約)した。乙契約の契約書には「βクラブ会員権付」との記載がなされており、また、特約事項として①買主は不動産購入と同時にβクラブ会員となること②買主から本件不動産を買い受けた者についてもβクラブの会則を遵守させることを定めていたという事情がある。本件クラブの会則には、本件マンションの区分所有権は、本件クラブの会員権付きであり、これと分離して処分することができないこと、区分所有権を他に譲渡した場合には、会員としての資格は自動的に消滅すること、そして、区分所有権を譲り受けた者は、被上告人の承認を得て新会員としての登録を受けることができる旨が定められている。

Xは甲契約において予定されていた屋外プールの着工が遅れていることを理由として、甲契約と乙契約を解除する旨の意思表示をし、売買代金返還請求および、会員権の登録料及び入会預り金の返還請求をした。

 

【判旨】

原審破棄自判

「同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった二個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができるものと解するのが相当である。」

「これを本件について見ると、本件不動産は、屋内プールを含むスポーツ施設を利用することを主要な目的としたいわゆるリゾートマンションであり、前記の事実関係の下においては、上告人らは、本件不動産をそのような目的を持つ物件として購入したものであることがうかがわれ、被上告人による屋内プールの完成の遅延という本件会員権契約の要素たる債務の履行遅滞により、本件売買契約を締結した目的を達成することができなくなったものというべきであるから、本件売買契約においてその目的が表示されていたかどうかにかかわらず、右の履行遅滞を理由として民法五四一条により本件売買契約を解除することができるものと解するのが相当である。」として、Xの請求を認容した。

 

2.判例の意義

契約が複数ある場合にあっても、ひとつの契約が他方の契約と社会通念上密接に関連付けられていて、契約の目的不達成を導く場合には解除を認めた。いわゆる複合契約論である。

解除の意義については前回論述したとおり、債権者を反対債務から解放し、もって契約目的不達成から救済する点にある。そうだとすれば、契約の外にある事情(他の契約)によっても契約解除が導かれる可能性があることは十分にあり得、本判決は常識的な内容を判示するものであるとされる。

(1)甲契約のみの解除は可能か

「甲契約と併せて乙契約をも」との判旨からは、甲契約のみの解除を認める趣旨であるということができる。しかし、本判決はこの点について何らの判断もしていないと考えるのが素直と思われる。

(2)契約相手が異なる複数の契約の場合にも本判決の趣旨が及ぶか

複合契約論からは、判例のいう密接関連性、相互依存という基準との関係において契約の主体の異同は判断要素のひとつに過ぎないとの理論が整合的であると考えられている。

ただ、どこまで及ぶかには慎重な判断を要すると思われる(要検討)。

 

3.参考論証

(1)本件では当該契約とは別個の契約の債務不履行を理由としているところ、他の契約の債務不履行を理由として当該契約の解除をすることができるか。

ア 債務不履行解除の趣旨は、債権者を反対債務から解放し、もって契約目的不達成から救済する点にある。そうだとすれば、複数契約が関連しあって、全体として目的不達成となりうる場合はあると考える。

 そこで、①複数契約が密接に関連し②契約すべてが履行されないと契約の目的が全体として達成されないと認められる場合には、債務不履行が生じていない契約についても解除をなし得ると考える。

イ 本件では、-認定-。

判断要素は①両契約の時間的近接性②契約上の権利発生の連動性③契約締結目的の共通性④一方の契約単独存続価値など。

ウ したがって、本件では解除できる/できない。