法律解釈の手筋

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早稲田ロー入試 2019年度('18年9月/'19年4月入学) 民法 解答例

解答例

 

第1 問題1 小問1

 1 EはC所有の甲土地に対して抵当権を有するか。抵当権が存在しているためには、①被担保債権が存在し、②有効な抵当権設定契約が締結されていることが必要である。

2 まず、EはAに対して2000万円の貸金債権を有しており、被担保債権が存在する(①充足)。

3 もっとも、EA間の甲土地を目的物とする抵当権設定契約は有効か。甲土地はC所有であるため代理契約として有効であることが必要であるが、有権代理となるためには、㋐代理行為㋑㋐に先立つ代理権授与㋒㋐に際して顕名が必要である。

(1) EA間で甲土地抵当権設定契約が締結されている(㋐充足)。また、AはCの法定代理人として上記契約を締結しており、顕名もなされているといえる(㋑充足)。

(2) もっとも、上記契約は利益相反行為(826条1項)にあたり法定代理権(824条本文)の範囲外であるため、㋐に先立つ代理権授与がないのではないか。

  ア 利益相反行為にあたるかどうかは、取引安全の見地から、客観的外形的に判断すると考える[1]

  イ 本件では、AがEから資金を借りる際に、EがAの法定代理人として物的担保を提供しているところ、AとCは経済的に利害が対立する関係にある。

  ウ したがって、上記契約は利益相反行為にあたり法定代理権授与の範囲外であるところ、上記契約に先立つ代理権授与は認められない(㋑不充足)。

(3) よって、EA間の抵当権設定契約は無権代理として無効である。

4 また、法定代理権においては、代理権授与に対する帰責性というものを本人である子に観念できない以上、表見代理(110条)の適用もない。

5 そうだとしても、Cは無権代理人Aを相続しているところ、Aの上記行為を追認拒絶(113条1項)することは、信義則に反し許されないのではないか。

(1) まず、相続によって無権代理人と本人の資格が融合するかが問題となるが、資格融合説では、悪意の相手方すら保護されることになりかねず、善意の相手方が契約取消権を失うことにもなるため、資格は併存すると考える[2]

(2) そして、本人が無権代理人を相続する場合には、本人は無権代理人の被害者にすぎないため、追認拒絶権を失う理由はない。

(3) したがって、本人が無権代理人を相続しても、資格融合によって法律行為の効力が生じることはないし、追認拒絶を信義則上禁じられることもない。

6 よって、EA間の抵当権設定契約は無効であり、Cの追認なき限り、EはC所有の甲土地について抵当権を有しない。

7 もっとも、Cは117条による無権代理人Aの責任も相続によって承継する以上、Eに対し損害賠償責任を負う。

第2 問題1 小問2

 1 本件では、CはEに対し、所有権に基づく妨害排除請求としての甲土地抵当権設定登記抹消登記手続請求をすることが考えられる。かかる請求は認められるか。

 2 まず、Cは甲土地所有権を有する。

3 次に、EA間の抵当権設定契約は有権代理として有効か。

(1) 前述と同様に、Aは代理行為を行っており(㋐充足)、Cの代理人として当該代理行為を行っているため、顕名も認められる(㋒充足)。

(2) もっとも、前述と同様に、本件契約が利益相反行為として無効とならないか。前述の基準により判断する。

 本件では、被担保債権がEのDに対する貸金債権であるところ、AとCは債務者と保証人という関係にはたたず、利害が対立しない。以上にかんがみれば、外形的にみて、AとCの利益が相反するとはいえない。

 したがって、本件契約は利益相反行為にはあたらない。

 (3) よって、本件契約は有権代理として有効である。

 4 もっとも、そうだとしても代理権濫用が認められ、本件契約は無効とならないか。

(1) 親権者が子を代理してする法律行為は、利益相反行為に当たらない限り親権者の広範な裁量にゆだねられている。

そこで、親権者の行為が子の利益を無視して親権者自身又は第三者の利益を図ることのみを目的としてされるなど、親権者に子を代理する権限を与えた法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、親権者による代理権の濫用に当たらないと考える[3]

(2) 本件では、AはDの利益を図ることのみを目的として上記契約をしたという事実はない。また、Dの経営を助けることで、ACが経済的利益を享受する可能性もあるところ、Aの行為が法の趣旨に著しく反するということもできない[4]

(3) したがって、代理権濫用も認められず、本件契約は有効である。

5 よって、Cのかかる請求は認められる。

第3 問題2 小問1

1 Cが乙についていかなる権利を有するか検討する前提として、AB間の乙譲渡が、どのような法的性質を有するかが問題となる。

(1) 譲渡担保権者と設定者の地位の均衡の観点から、目的物の所有権が譲渡担保権者に一応移転するが、債権担保の目的に応じた部分に限られ、残りは設定者に留保されると考える。

(2) したがって、本件では、乙の所有権はBに一応移転しており、Aは乙について設定者留保権を有するにすぎない。

2 以上にかんがみると、乙のAC売買によって、Cは設定者留保権を取得するにすぎないのが原則である。

3 もっとも、即時取得(192条)によって、Cは乙所有権を取得しないか。

(1) AC売買は「取引行為」であり、また、「平穏」「公然」及びAが無権利者であることについて「善意」であることは推定される(186条1項)。また、「過失がない」ことについても推定される(188条)。

(2) したがって、Cは即時取得により乙所有権を取得する。

4 確かに、乙は、甲不動産の従物(87条2項)であり、甲不動産の譲渡担保の効力が及ぶ結果、甲不動産について譲渡担保が設定されていることについて善意無過失であることまでCに要求されるとも思える(370条類推適用)。

  しかし、本件譲渡担保の登記は、譲渡担保ではなく、所有権移転登記となっている。かかる場合、第三者は付加一体物に譲渡担保の効力が及んでいないと考えるのが通常であり、370条類推適用の基礎がない。したがって、かかる見解は採り得ない。

5 以上より、Cは乙について所有権を有する。

第4 問題2 小問2 

1 DはAに対し、所有権に基づく返還請求としての甲建物明渡請求をすることが考えられる。かかる請求が認められるためには、①D甲建物所有②A甲建物占有が必要である。

(1) Dは甲建物を所有しているといえるか。Bは背信的悪意者であるが、BD売買がなお有効であるか。

ア 不動産を目的とする譲渡担保契約において、債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には、債権者は、右譲渡担保契約がいわゆる帰属清算型であると処分清算型であるとを問わず、換価処分権を取得するから、債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは、原則として、譲受人は目的物の所有権を確定的に取得し、債務者は、清算金がある場合に債権者に対してその支払を求めることができるにとどまり、残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできなくなるものと考える。そして、権利関係確定の見地から、譲渡を受けた第三者が背信的悪意者でもよいと考える[5]

  イ 本件では、被担保債権たる本件融資の弁済期を経過した後にBD売買がなされている。また、本件ではDはいわゆる背信的悪意者であると思われるが、かかる点は結論を左右しない。

ウ したがって、Dは甲建物を所有する。

(2) Aは甲建物を占有する。

2 もっとも、本件売却代金は3300万円であり、被担保債権の3000万円を上回っているところ、AはBに対し清算金債権を有する。したがって、AはDに対し、かかる清算金債権を被担保債権として留置権(295条)を行使できる[6]

3 以上より、Dは、清算金の支払いと引換えにかかる請求をすることが認められる。

以上

 

[1] 最判昭和37年10月2日参照。

[2] 最判昭和37年4月20日参照。

[3] 最判平成4年12月10日参照。

[4] ここは反対の結論もあり得る。AはDとの関係が悪化することを恐れて、本件契約を締結しているため、AがDとの関係を続けられるという利益を図ることのみを目的としてなされたという認定はあり得る。本解答例は、本問のような事情の少ない場合に例外を認めることに躊躇を覚えたため、否定の方向で解答を作成した。

[5] 最判平成6年2月22日参照。

[6] 最判平成9年4月11日参照。