法律解釈の手筋

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慶應ロー入試 2019年度('18年9月/'19年4月入学) 商法 解答例

解答例

第1 設問1

 1 本件取締役会決議は、Xへの招集通知を欠くため、368条1項に反し、無効とならないか。

 2 取締役会は、取締役会の権限行使を慎重かつ適切ならしめるために合議体をなしており、招集通知はそのような合議体への出席の機会を確保する重要な制度であるといえる。そこで、取締役に招集通知を欠く役会は原則として無効と考える。

   もっとも、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響を及ぼさないと認めるべき特段の事情があるときには、当該役会は有効と考える。

3 本件では、Y社の取締役は4人であり、ABCとXとの間で対立が起きている。そう だとすれば、招集通知のなされなかったXが取締役会に出席したとしても、BCが協力して賛成の議決権行使をすることが予想され、本件取締役会において、Xが参加することで決議が覆ることはないといえる。したがって、Xが本件取締役会に出席してもなお決議の結果に影響を及ぼさないと認めるべき特段の事情があったといえる。

 4 よって、本件取締役会決議は有効である。

第2 設問2

 1 Xは、①本件取締役会決議の無効②本件新株発行に関して株主総会決議の手続がとられていないこと③本件新株発行に関して株主への通知又は公告が行われていないこと、の3点が、本件新株発行無効の訴え(828条1項2号)の無効事由にあたると主張することが考えられる。

 2 無効事由とは、法的安定性の観点から、重大な瑕疵に限られると考える。どのような瑕疵が重大といえるかは、個別具体的に判断する。

 3 第1に、本件では、取締役会決議が368条1項に反し無効であるという瑕疵が認められる。しかし、募集株式の発行は公開会社にとっては、資金調達の一手段であり業務執行に準ずるものである。また、株主の保護は、通知・公告による差止請求によっても図られる。

   したがって、かかる瑕疵は重大な瑕疵とはいえず、無効事由とならないと考える。

 4 第2に、本件では、新株発行に関して株主総会決議の手続はとられていない。しかし、Y社は公開会社であり、本件新株発行は公正な払込金額によっているため、取締役会決議のみで足りる(201条1項、199条3項、199条2項)。

   したがって、かかる点に瑕疵はない。

 5 第3に、本件新株発行に関して、株主への通知又は公告が行われておらず、201条3項、同条4項に反する瑕疵が認められる。通知又は公告を欠く場合、株主の差止請求の機会を奪うことになり、株主の利益を大きく侵害することになる。もっとも、差止請求をしたとしても差止めが認められる余地がない場合にまで重大な瑕疵を認めるのは妥当でない。そこで、重大な瑕疵といえるためには差止事由(210条各号)のあることが必要であると考える。本件では、取締役会決議が無効であり、201条1項、199条2項に反する「法令」「違反」がある(210条1号)。

したがって、本件で通知又は公告が行われていないことは、重大な瑕疵にあたり、無効事由になると考える。

 6 以上より、Xの上記主張は、③のみ認められる。

以上