法律解釈の手筋

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慶應ロー入試 2019年度('18年9月/'19年4月入学) 民法 解答例

解答例

 

第1 設問1 (以下、民法は法名略。)

 1 EはBに対し、所有権に基づく返還請求として乙建物収去甲土地明渡請求をする。

 2 甲土地は、Aが所有権を有していたが、Cが相続によって所有権を取得した。その後、CはDに対し、2008年6月20日、3000万円で売り、Eが相続によって所有権を取得した。甲土地上には現在乙建物が存在している。Bは、1987年9月頃、甲土地上に乙建物を建築した。

 3 これに対して、第1に、Bは、自己が「第三者」(177条)にあたるため、Eが甲土地所有権移転登記を具備するまでEの甲土地所有権取得を認めないと反論することが考えられる。

 (1) 「第三者」とは、登記の画一的処理による取引安全の保護の観点から、登記欠缺を主張する正当な利益を有する者をいうと考える。

本件では、BはAから1987年3月26日、甲土地について贈与を受けているところ、Eの登記欠缺を主張する正当な利益を有する。

    したがって、Bは「第三者」にあたる。

 (2) もっとも、Eは甲土地について、2018年8月に登記を具備していると再反論することが考えられ、かかる再反論は認められ、Bの反論は認められない。

 4 第2に、Bは、Aからの甲土地贈与から20年間を経過したことによる時効取得(162条1項)を援用し、反論することが考えられる。

 (1)  Bは、1987年3月26日から甲土地を「平穏」「公然」と「占有」している。BはAから同土地について贈与を受けているのであるから「所有の意思」もある。また、Bは有効な契約に基づいて占有しているのだから、その土地が他人の物であることにつき善意無過失である。そして、2007年3月26日は経過している。

 (2) もっとも、同土地は占有開始時点で既にB所有のものとなっており「他人の物」といえないのではないか。

   ア 同項が「他人の物」と規定したのは、通常自己物について時効取得することはないからであり、自己物の取得時効を認めない趣旨ではない。そして、立証の困難性回避の点からは、自己物についても取得時効を認めるべきである。

     そこで「他人の物」という要件は不要と考える。

   イ したがって、Bは甲土地の取得時効を主張することができる。

(3) これに対して、Eは、DがBとの関係で「第三者」(177条)にあたるため、Dが登記を具備した以上、Bは甲土地の所有権を喪失すると再反論することが考えられる。

ア 時効取得後の第三者との関係では、時効取得者も登記を具備することが可能であるのだから、登記具備懈怠の帰責性を問える。また、時効取得後の第三者との関係は、二重譲渡類似の関係ともいえる。

  そこで、時効取得後の第三者は「第三者」(民法177条)にあたる。もっとも、①第三者が、占有者が多年にわたり目的物を占有していることを認識し、かつ、②登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在する場合には、自由競争原理を逸脱した背信的悪意者にあたり、「第三者」にあたらないと考える[1]

イ 本件では、DはBが甲土地を時効取得した後にCから同土地を買い受けている上、同土地について所有権移転登記を具備している。確かに、Dは、Bが長年同土地を占有していることを認識している(①充足)。もっとも、Dは、CからAが甲土地をBに無償で貸していただけであり、いつでも立ち退いてもらうことができると聞かされていた以上、Bの登記の欠缺を主張することが信義に反するとまでいえない(②不充足)。

ウ したがって、Dは「第三者」にあたり対抗要件を具備した以上、Bは所有権を喪失した。

 (4) したがって、Bのかかる反論は認められない。

 5 第3に、Bは、Dの甲土地所有権設定登記を起算点として10年の経過によって、再度甲土地所有権を取得したと反論することが考えられる。

(1) Dの甲土地所有権移転登記は2008年6月20日になされており、2018年6月20日は経過している。その間も、Bは前述と同様に「平穏」「公然」「善意」「無過失」で「占有」を継続している。

(2) Eは、DからBの取得時効完成後に同土地を相続しているが、一般承継人であり「第三者」にあたらないため、対抗要件具備による所有権喪失の再抗弁を主張できない。

(3) したがって、Bのかかる反論は認められる。

 6 よって、Eのかかる請求は認められない。

第2 設問2

 1 GはBに対し所有権に基づく返還請求としての乙建物収去甲土地明渡請求をする。

2 甲土地はGが競売の買受人として所有権を取得している。甲土地上には現在乙建物が存在している。Bは、1987年9月頃、甲土地上に乙建物を建築した。

 3 これに対して、第1に、Bは、自己が「第三者」(177条)にあたるため、Gが甲土地所有権移転登記を具備するまでGの甲土地所有権取得を認めないと反論することが考えられる。

 (1) Bは賃借人であるが、不動産賃借人は物権取得者類似の地位にあるため、Gの登記欠缺を主張する正当な利益を有するといえ、「第三者」にあたる。

 (2) もっとも、Gは、甲土地について、2018年8月20日に登記を具備していると再反論することが考えられ、かかる再反論は認められ、Bの反論は認められない。

 4 第2に、Gは占有権原の抗弁をもって反論することが考えられるが、Gは甲土地について賃借権の登記(605条)を具備していない。また、甲土地上の乙建物についても所有権保存登記がなされていない(借地借家法10条1項)。

    したがって、Gのかかる反論は認められない。

 5 第3に、Bは、Fの抵当権設定登記から10年が経過したことで賃借権について時効取得し(162条1項)、抵当権者Fとの関係でも対抗できると反論することが考えられる。

   しかし、不動産賃借人は抵当権設定登記に先立って対抗要件を具備しなければ賃借権を対抗することができない以上、抵当権設定登記後にその目的不動産について賃借権を時効取得しても抵当権者に対抗することはできないと考える[2]

   したがって、Bのかかる反論は認められない。

4 よって、Gのかかる請求は認められる。

以上 (約2500字)

 

[1] 最判平成18年1月17日参照。

[2] 最判平成23年1月21日参照。