法律解釈の手筋

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東大ロー入試 平成28年度(平成27年11月/平成28年4月入学) 民事系 解答例

解答例

第1 設問1 (設問1では、民法については法名略。)

 1 XはYに対し、保障契約に基づく債務履行請求(446条1項)をすること考えられる。

(1) Xの請求が認められるためには①被保証債権の発生原因事実②保証債権の発生原因事実③②が書面によること④被保証債権の債権移転原因事実が必要である。

 (2) まず、BA間の請負契約締結により、報酬債権は発生している(①)。また、BY間で「書面」(446条2項)により(③)、当該債権を保証する契約が締結されている(②)。そして、報酬債権はXB間の債権譲渡契約によりXに移転している(④)ため、随伴性によりBY保証債権もXに移転する。

 2 Yの反論

 (1) まず、Yは、催告の抗弁(452条)及び検索の抗弁(453条)を主張することが考えられるところ、各要件を満たした場合には、かかる反論は認められる。

 (2) 次に、Yは、AがBに対して有する同時履行の抗弁権(634条2項)を援用することが考えられる。

   ア 「瑕疵」(634条2項)があるか。

     「瑕疵」とは、当事者の予定する品質・性状を欠くことをいい、契約内容に照らして考える。

     本件では、改装工事の一部が工事仕様書の想定する品質性能を有していないところ、Aとしては工事仕様書通りに改装されることを望んでいたはずであるため、当事者の予定する品質・性状を欠くといえ、「瑕疵」が認められる。

   イ AはBに代わってCに工事の修補を注文しており、その代金支払分について「損害」が発生している。

   ウ もっとも、かかる同時履行を保証人Yが援用できるか。

   (ア) 確かに、明文の規定は存在しないが、相殺については保証人にも抗弁の援用 が認められている(457条2項)こと、事前の通知によって抗弁の存在が明らかになっても保証人が援用できないとすればその後の求償において主債務者に不利益が生じることになることに鑑みれば、保証人は主債務者の抗弁を援用できると考える。

   (イ) したがって、本件でもYはAの同時履行の抗弁を援用できる。

   エ そうだとしても、かかるAの抗弁は、Xとの関係では「譲渡人に対して生じた事由」(468条2項)でなければならないところ、本件抗弁は「事由」にあたるか。

   (ア) 同項の趣旨は、債務者保護にあるところ、「事由」とは抗弁発生の基礎となる事由も含むと考える。そして、抗弁事由発生の一般的抽象的可能性があれば足りると考える。

   (イ) 本件では、AB請負代金債権の移転通知日は6月12日に行われている。他方、同時履行の抗弁権の事由発生は8月31日であり、通知よりも後である。もっとも、同時履行の抗弁の基礎となる瑕疵修補請求は、請負契約に内在するものといえるところ、6月1日時点でその一般的抽象的可能性はあるといえる。

   (ウ) したがって、本件抗弁も「事由」にあたる。

   オ よって、Yのかかる反論は認められる。

 (3) 最後に、Yは、AのBに対する損害賠償債権(634条2項)を自働債権として、請負代金債権との相殺の抗弁権を援用(457条2項)することが考えられる。

   ア AB瑕疵修補請求権が認められることは、前述のとおりである。

   イ もっとも、AはそもそもAのBに対する損害賠償債権と、BのAに対する請負代金債権を相殺することが認められるか。同時履行の抗弁の付着する債権同士を相殺することができるか。

   (ア) 634条2項が同時履行の抗弁権を認めた趣旨は、代金減額請求によって注文者が請負代金債権の差額について債権発生時点から履行遅滞に陥ることになることを防ぐ点にある。そうだとすれば、同項は、相殺を禁止するものではなく、むしろ相殺へ誘導する規定といえる。

      そこで、634条2項の同時履行の抗弁権の付着する両債権については、注文者が相殺することは許されると考える。

(イ) したがって、本件でもAはBに対して上記相殺をすることができる。

ウ かかる抗弁も請負契約に付着する瑕疵修補に代わる損害賠償請求を自働債権とするものであり、「事由」(468条2項)にあたることは前述のとおりである。

エ よって、Yのかかる反論は認められる。なお、私的自治の原則から、上記相殺の抗弁の援用は、債権消滅の効果を認めるものではなく、主債務者が相殺をするまでは履行請求を拒むことができるという効果であると考える。

第2 設問2 (設問2では、民訴法については法名略。)

 1 まず、XA、XY両訴訟が必要的共同訴訟(40条)にあたる場合には、Aが債権譲渡契約締結の事実を争っている以上、Yとの関係でもかかる事実は争っているものと扱われる(40条1項)ため、かかる事実は認められないと扱わなければならない。そこで、本件両訴訟が必要的共同訴訟にあたるか。

 (1) 第1に、固有必要的共同訴訟にあたるか。

    訴え提起は、敗訴によってあたかも権利処分と同様の効果が発生する。もっとも、当事者適格は、誰と誰との間で紛争解決をすることが適切かという概念でもある。そこで体法上の管理処分権及び訴訟政策的観点から、訴訟共同の必要性を考える。

    本件両訴訟は、それぞれ主債務履行請求権と保証債務履行請求権であるところ、実体法上訴訟共同の必要性はない。また、訴訟政策的にも訴訟共同の必要性はあまりない。

       したがって、固有必要的共同訴訟にはあたらない。

 (2) 第2に類似必要的共同訴訟にあたるかが問題になるも、両訴訟の訴訟物が異なる以上、類似必要的共同訴訟にもあたらない。

 (3) したがって、XA、XY訴訟は通常共同訴訟(38条)にあたり、共同訴訟人独立の原則(39条)が妥当する。

 2 債権譲渡契約締結の事実について、審判排除効の生じる擬制自白(159条3項、1項)が成立し、裁判所はかかる事実が認められると扱わなければならないのではないか。

 (1) 審判排除効の生じる自白とは、当事者に争いのない事実をいい、その事実は主要事実に限られる。なぜなら、主要事実に審判排除効を生じさせれば最低限当事者への不意打ち防止となるほか、間接事実補助事実に審判排除効を認めると、自由心証主義(247条)を不当に制約することになり得るからである。また、審判排除効は当事者と裁判所の役割分担の規律であるところ、不利益要件は問題とならない。

 (2) 本件訴訟物はXのYに対する保証契約に基づく保証債務履行請求権であるところ、債権譲渡契約締結の事実は請求原因たる債権移転発生原因事実を基礎づける主要事実にあたる。そして、Yは期日に出頭していないため、かかる事実に擬制自白が成立する。

 (3) もっとも、通常共同訴訟にも同一確定の必要から、共同訴訟人間の主張共通の原則が認められないか。

    共同訴訟人間の主張共通の原則とは、共同訴訟人の一人が積極的な訴訟活動を行わない場合に、他の共同訴訟人が主張した有利な事実については、その共同訴訟人との関係でも主張したとみる原則をいう。

    確かに、原告の主張立証責任の負担は変わらないし、同一裁判体での審判である以上、訴訟不経済にもならない。被告にも有利である。

    しかし、弁論の分離・併合(152条)という裁判所の専権によって、勝訴敗訴が異なり得るのは、やはり弁論主義から落ち着きのよいものとはいえない。

    したがって、かかる原則を採用することはできない。

 (4) また、AはXY訴訟に補助参加の申出をしておらず、45条1項の適用もない。

(5) よって、裁判所は、審判排除効によって、債権譲渡契約締結の事実が認められるとして扱わなければならない。もっとも、これではAは後訴でYから求償請求を受ける可能性があり、酷である。そこで、裁判所としては、Aに対し補助参加の申出をしておく旨の求釈明をすべきである。

以上