法律解釈の手筋

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東大ロー入試 平成29年度(平成28年11月/平成29年4月入学) 民事系 解答例

解答例

第1 設問1

 1 まず、Bは、自己が先にAと甲土地の売買契約を締結し、所有権を取得したと反論することが考えられる。これに対して、Cはその後「第三者」(177条)たるDが甲土地について登記を具備したため、Bの所有権は喪失したと再反論することが考えられる。

 (1) 登記による画一的処理による取引安全の観点から、「第三者」とは、当事者及び一般承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいうと考える。

 (2) 本件Dは、Aから甲土地を買い受けているため、Bの登記の欠缺を主張する正当な利益がある。

 (3) したがって「第三者」にあたる。

   よって、Cの再反論が認められ、Bの反論は認められない。

 2 次に、Bは、Dが甲土地取得後、甲土地を時効取得(162条2項)したと反論することが考えられる。

 (1) Bは、1993年5月10日から甲土地を「平穏」「公然」と「占有」している。BはAから同土地を買い受けているのであるから「所有の意思」もある。また、Bは有効な契約に基づいて占有しているのだから、その土地が他人の物であることにつき善意無過失である。

    もっとも、同土地は既にB所有のものとなっており「他人の物」といえないのではないか。

   ア 同項が「他人の物」と規定したのは、通常自己物について時効取得することはないからであり、自己物の取得時効を認めない趣旨ではない。そして、立証の困難性回避の点からは、自己物についても取得時効を認めるべきである。

     そこで「他人の物」という要件は不要と考える。

   イ したがって、Bは甲土地の取得時効を主張することができる。

 (2) もっとも、Cは、Dが「第三者」(177条)にあたる以上、BはDとの関係でかかる反論をすることが許されない結果、Bは甲土地の所有権を喪失するとの再反論をすることが考えられる[1]

    しかし、時効取得によって所有権を原始取得する以上、時効取得前の第三者との関係では当事者類似の関係になるため、Bの時効完成前に甲土地を取得したDは、Bの時効取得に基づく所有権との関係では「第三者」にあたらない。

    したがって、Cのかかる再反論は認められない。

(3) そうだとしても、Cは、自己がBとの関係で「第三者」(177条)にあたるため、Cが登記を具備した以上、Bは甲土地の所有権を喪失すると再反論することが考えられる[2]

ア 時効取得後の第三者との関係では、時効取得者も登記を具備することが可能であるのだから、登記具備懈怠の帰責性を問える。また、時効取得後の第三者との関係は、二重譲渡類似の関係ともいえる。

  そこで、時効取得後の第三者は「第三者」(民法177条)にあたる。もっとも、①第三者が、占有者が多年にわたり目的物を占有していることを認識し、かつ、②登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在する場合には、自由競争原理を逸脱した背信的悪意者にあたり、「第三者」にあたらないと考える。

イ 本件では、CはBが甲土地を時効取得した後に、Dから同土地を買い受けている、しかし、CはもともとBが甲土地を占有することになったAB売買について所有権移転登記手続の委託を受けていた者であるところ、Bがかかる時点から同土地を占有していることを認識していたといえる(①充足)。また、自己が代理をしたときに誤って登記に乙土地を記載してしまったゆえに甲土地の登記移転を許しているにも関わらず、その登記をBが具備していないとの主張をCに許すことは、信義に反するといえる(②充足)。

ウ したがって、Cは「第三者」にあたらない。

 (4) よってCの再反論はいずれも認められず、Bの反論が認められる。

   以上より、Cの請求は認められない。

第2 設問2[3]

 Eは、時効取得後の第三者であり、また、Cとは異なり背信性を基礎づけるような事情もない。確かに、Eは背信的悪意者であるCの不動産取引業を承継している会社である。しかし、背信性が承継されることはない。また、Eの法人格を否認するような事情もない。

 したがって、Eの請求は認められる。

第3 設問3 (この設問では、民事訴訟法は法名略。)

 1 ①について

 (1) 裁判所は、本件訴えが重複訴訟禁止(142条)に反するとして訴え却下判決をすべきではないか。

   ア 同条の趣旨は、被告の応訴の煩、訴訟不経済、既判力抵触のおそれといった弊害の防止にある。

そこで、「事件」とは、①当事者が同一で②審判対象が同一であるものをいうと考える。

   イ 本件では、原告・被告が逆転しているものの、当事者は同一である(①充足)。また、債務不存在確認の訴えの訴訟物は、給付訴訟の反対形相であることから、CのBに対する所有権に基づく甲土地明渡請求権である。後訴の訴訟もCのBに対する所有権に基づく甲土地明渡請求権であり、訴訟物たる権利関係が同一といえ、審判対象が同一である(②充足)。

   ウ したがって、「事件」にあたり、裁判所は訴え却下判決をすべきとも思える。

(2) もっとも、給付訴訟は、執行力がある点で債務不存在確認に比して紛争解決能力が高いところ、本件訴えは適法として、前訴確認訴訟を確認の利益喪失を理由に訴え却下判決すべきではないか。

  ア 確かに、債務不存在確認の訴えは、給付訴訟が提起された以上、その目的を完全に果たしたとも思える。しかし、確認の訴えの目的はそれだけではないはずである。

     そもそも、反訴提起で後訴給付訴訟を適法、前訴債務不存在確認訴訟を確認の利益喪失を理由に訴え却下とした判例は、同一期日に同一裁判所によって確認訴訟と給付訴訟の判決がなされるため、既判力抵触による司法への信頼が害されないことを前提に、前訴確認訴訟の必要性が喪われたと判断したと考えられる。したがって、既判力抵触のおそれのある別訴提起では、判例の射程は及ばない。

     したがって、別訴提起された給付訴訟と確認訴訟は、「包摂」関係にあるとはいえず、上記扱いは許されないと考える。

   イ よって、本件でも、後訴を適法とすることはできない。

 (3) もっとも、裁判所には適切な訴訟運営が望まれるところ、弁論併合(152条1項)が望ましいと考える。

 2 ②について

 (1) 本件訴えも重複訴訟禁止(142条)に反するとして、訴え却下判決をすべきではないか。

   ア まず、当事者は、前述のとおり同一である(①充足)。しかし、前訴訴訟物はBの甲土地所有権であるのに対し、後訴訴訟物はCのBに対する所有権に基づく甲土地明渡請求権であるところ、訴訟物たる権利関係は同一でない。したがって、審判対象は同一とはいえない(②不充足)。

   イ よって、「事件」にあたらない。

 (2)  以上より、重複訴訟禁止には反せず、裁判所は本案判決をすべきである。もっとも、前訴既判力と後訴の判決理由中の判断となる甲土地の所有権者については争点効抵触のおそれがある。そこで、裁判所としては弁論併合(152条1項)をすることが望ましいと考える。

以上

 

[1] 時効取得前の第三者

[2] 時効取得後の第三者と時効における背信的悪意者の抗弁

[3] よくわからない。