法律解釈の手筋

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東大ロー入試 平成31年度 民事系 解答例

解答例

第1 設問1[1]

 1 第1に、P社は、BがQ社の発行済株式全部をR社に譲渡した(以下「本件株式譲渡」という。)ことよって、実質的に賃借権の譲渡があったとして、612条2項に基づき、本件賃貸借契約を解除すると主張することが考えられる。

 (1) 賃借人が法人の場合、株式譲渡によって株主が変動したとしても、法人格は同一である。そこで、賃借人の法人が形骸化しているなど特段の事情のない限り、賃借権の譲渡は認められないと考える。

 (2) 本件では、Q社は本件不動産において本件共同事業において生産する製品を販売していたし、R社の完全子会社となったあとも、R社の製品を販売しており、Q社そのものが形骸化しているという事情は認められない。

 (3) したがって、P社のかかる主張は認められない。

 2 第2に、P社は、本件株式譲渡は信頼関係破壊の法理によって無催告解除をすると主張することが考えられる。

 (1)  賃貸借の当事者の一方が義務に違反し、信頼関係を裏切った場合には、相手方は催告を要せず賃貸借契約を解除することができ、義務違反には、賃貸借契約に基づいて信義則上当事者に要求される義務に反する行為も含まれる[2]

 (2) 本件についてみると、本件賃貸借契約は本件共同事業の一環として行われたものであり、本件不動産では共同事業において生産する製品を販売していた。そうだとすれば、信義則上、本件不動産は本件共同事業の目的に利用する義務がQ社は負っているといえる。それにも関わらず、BがQ社の発行株式全部をP社と競合関係にあるR社に譲渡したため本件共同事業は頓挫しており、同義務に違反している。しかも、その譲渡の相手は競合関係にあるR社である上、R社が本件不動産でP社と競合する製品を販売したため、P社の製品の売り上げが著しく減少している。以上にかんがみれば、上記義務違反は、PQ間の信頼関係を破壊するに足りるものといえる。

 (3) したがって、P社は、無催告解除をすることができる。

第2 設問2[3]

 1 (ア)について

 (1) Aは本件訴えの代理権を有しないため、不適法である。

   ア 訴訟法上、法人の代表者については、法定代理権の規定が準用されるところ(民事訴訟法(以下「民訴法」という。)37条)、法定代理については民事訴訟法に規定がない場合、他の法令による(同法28条)。

   イ 本件についてみると、P社は監査役会設置会社(会社法2条10号)である。本件訴えは、P社のP社取締役Bに対する訴えであるため、監査役がP社を代表する(同法386条1項1号)。その趣旨は、取締役の同僚意識による利益相反的な訴訟行為がなされるおそれを回避する点にある。したがって、取締役Aは、本件訴えの代表権を有しない。

   ウ よって、AがP社を代表して本件訴えを提起することは、不適法である。

(2) 裁判所は、補正命令をし(民訴法34条1項)、補正がされない場合には訴え却下判決をすべきである。

 2 (イ)について

 (1) FはP社の代表権を有し、本件訴えは適法である。

 (2) 前述のとおり、監査役は本件訴えの代表権を有する。確かに、本件では、監査役会の決議により本件訴えを提起しないという取締役会の判断を承認することが決定されている(390条2項3号)ところ、監査役においても本件訴えを提起することはできないとも思える。しかし、独任制の観点から、監査役会は監査役の権限の行使を妨げることはできない(同項柱書但し書)。

 (3) よって、Fは会社を代表して本件訴えを提起することができる。

第3 設問3

 1 株主は本件訴えについて法律上の利害関係を有しないため、補助参加(民訴法42条)もすることができない。

 (1) 補助参加の利益が認められるためには、当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に事実上の影響を及ぼすおそれがある場合をいうと考える[4]

 (2) 本件では、確かに本件訴えに敗訴してしまうと、P社は賃料回収ができなくなってしまい、会社の資産が減少する結果、株価が下落するおそれがあるかもしれない。しかし、かかるおそれは経済上の利益であって、株主の私法上の法的地位又は法的利益にはあたらない。

 (3) したがって、株主には補助参加の利益が認められず、補助参加が認められない。

 2 もっとも、株主は、共同訴訟参加(会社法849条、民訴法52条)をすることができる。

 (1) 株主は、取締役の責任を追及する訴えについて株主代表訴訟を提起することができる(847条3項、849条1項)。取締役は会社に対する忠実義務により、取引債務を履行すべきであるため、「責任」には、取締役の会社法上の責任のほか、取締役の会社に対する取引債務も含まれると考える[5]

    そして、かかる責任追及の訴えが会社によって提起された場合、株主は会社に共同訴訟参加することができる(849条1項)

 (2) 本件訴えは、取締役BのP社に対する取引債務としての保証債務の履行を求める訴えであるため、「責任」にあたる。

 (3) したがって、株主は、共同訴訟参加することができる。

以上

 

[1] 参考判例として、最判平成8年10月14日参照。

[2] 最判昭和47年11月16日参照。

[3][3] よく分からない。

[4] 最判平成13年1月30日参照。

[5] 最判平成21年3月10日参照。