法律解釈の手筋

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【Bさん】平成31年度 東大ロー入試 公法系 再現答案【83点】 

※こちらは、平成31年度の東大ロー入試を受験した私のTwitterのフォロワー様(そして東大ローで知り合いました!笑)の再現答案です。今後東大ローを受験される方の参考になれば幸いです。そして、再現答案を寄稿してくれたBさんには感謝しております。この場をお借りしてお礼申し上げます。以下の文章はBさんからいただいた文章を、手を加えず体裁のみを整えて記載しております。

 

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1.再現答案

第1 本件旅券返納命令はA の海外渡航の⾃由(憲法[以下略]22 条1 項)を侵害し、違憲違法か。

1 22 条1 項は広く移動の⾃由を「移転」の⾃由として保障しているから、海外渡航の⾃由も「移転」の⾃由によって保障されている。A がC 国を介在して、B 国に渡航する⾃由も「移転」の⾃由として保障される。そして、A は旅券法(以下、法)19 条1 項4号に基づいた本件返納命令によってB 国に⾏くことが困難になっており、A のかかる⾃由が侵害されている。

2 もっとも、海外渡航の⾃由は、国家情勢や国際的要請を勘案して判断されるため⾼度の政治的判断を含む場合もあること、及び、法19 条1 項4号は「できる」としていることから、いかなる事情に基づいて海外渡航を規制するかについて外務⼤⾂の広い裁量が認められる。しかし、A の当該⾃由はフリージャーナリストとして閉鎖的国家であるB の国家情勢の情報を得ることという社会的機能分担を担い、これを通じたA ⾃⾝の⼈格の形成発展につながる⾃⼰実現的側⾯を多分に有している。また、情報が閉鎖しているB 国の実態を国⺠に知らせることは国⺠の政治的意思決定にも資するから、国⺠の知る⾃由の点(博多駅事件)で⾃⼰統治的側⾯も認められる。したがって、A のB 国に渡航する⾃由は重要な権利である。⼀⽅、A は本件返納命令に従ったことによって、旅券としての効⼒は失われていないものの、⾃由にB 国に⾏くこと⾃体が規制されている。これは事前にA がB 国に⾏くことを規制しており、事後的制裁と⽐べて、外務⼤⾂の恣意が⼊る余地が⼤きく、制約の程度が⼤きい。

3 以上より、本件返納命令は⽬的が重要で、⼿段が⽬的と実質的関連性を有する場合には当該制約が是正される。

⑴ まず、⽬的について検討する。本件⽬的はA 本⼈の保護、いわゆるパターナリズムに基づくものか。パターナリズムは個⼈の⾃律権を害するから、原則として許されないものである。もっとも、判例(有害図書事件)は判断能⼒の未熟な⻘少年に対するパターナリズム等については例外的に許容している。確かに、本件返納命令はA がB 国に⾏くことでA の⽣命や⾝体を危険にさらすことを守るためになされたように思える。しかし、本件返納命令はB 国にA が⾏き⼈質に取られるおそれ等を考え、反社会的勢⼒に屈しないという国際的要請や、⼈質に取られた場合のA を救済したことによる利益に味をしめた組織が新たな被害者を⽣むことを防⽌することも含まれており、かつ、これが主要な⽬的である。したがって、本件返納命令はA の本⼈保護をそもそも主要な⽬的とするものではなく、パターナリズムに基づくものとはいえない。本件⽬的は重要なものである。

⑵ 次に⼿段が⽬的と実質的関連性を有するか検討する。本件返納命令により、A はB 国に⾏くことが実質的に不可能となっており、上記弊害が⽣じる余地はないから⼿段適合性は認められる。では、⼿段必要性が認められるか。前述した権利の重要性や制約の強度等に鑑みれば「⽣命…中⽌…」(法19 条1 項4号)とは、外務⼤⾂の主観に基づくものではなく、客観的事実に照らし、実質的にかかる危険が認められる場合を指すと限定して解さなければならない。A に客観的事実に照らし、実質的にかかる危険が認められる状況があり、「⽣命…中⽌させる必要」があるといえるか、以下検討する。

B 国は2017 年から激しい内戦状態にあり、⼀年以上継続しており、A がB 国に⾏けば⼈

質等に取られ⽣命等を侵害させる危険が⾼度の蓋然性を持って認められる。また、A は外務省の担当職員と事前に電話による説得を受けているにも関わらず、これを拒んでおり、A にB 国への明確かつ確固たる渡航の意思が認められること等に照らせば、A がB 国に⾏き、⽣命侵害等の危険は客観的事情に基づいて実質的に認められる。以上よりA には「⽣命…中⽌させる必要」があったといえる。⼿段必要性が認められる。また、A は事前に担当職員の説得等を受けており、本件返納命令は急になされたものではなく、いわゆる段階的規制である。そして、A が⼈質等にされれば、損害賠償等により救済措置を講じても、反射汽笛勢⼒に⼀度屈した事実は回復することはなく、事後的に回復が困難な損害であることからも、このような規制は相当性を有する。

⑶ よって、⽬的が重要で⼿段が実質的関連性を有するから、本件返納命令は合憲である。

第2 設問2(この設問につき⾏⼿法の規定を省略)

1 本件旅券返納命令はA に対する「不利益処分」(2 条4号)に当たるから、理由付記(14条1 項)が必要である。理由付記の程度が問題となる。

同項の趣旨は⾏政庁の恣意の抑制と、相⼿⽅の不服申⽴ての便宜を図ることにある。とすれば、かかる趣旨に鑑み、その程度はいかなる事実に照らして、いかなる法規を適⽤したかがその記載⾃体から直接了知できなければならない。これを本件についてみると、本件返納命令は「旅券法19 条1 項4号のため」としか記載されておらず、A のいかなる事実に基づいて同号が適⽤されたのかが記載⾃体から了知できない。したがって、本件理由付記には14 条1 項違反がある。

2 では、⾏⼿法の瑕疵が取消事由となるか。

⾏⼿法制定の趣旨や⽬的が適正な⾏政⼿続の保障にあること等に照らして、判例(旅券法事件)は14 条1 項違反がある場合には取消事由を構成すると考える。したがって、本件返納命令は14 条1 項違反を理由に取消事由となる。

第3 設問3(この設問につき⾏訴法の規定を省略する。)

1 執⾏停⽌(25 条)の積極要件は①「重⼤な損害」(25 条2 項3 項)②「緊急の必要」(2項)である。

⑴ ①とは事後的な⾦銭賠償等による回復が困難なものをいう。①について同条3項の考慮要素に照らして検討する。前述したように、A が仮にB 国に⼈質等に取られた場合の損害の性質は事後的に回復が困難な損害である。⼀⽅、A の権利の重要性についても前述したように⾃⼰実現、⾃⼰統治の価値を⼤きく有している。処分の内容はA がB 国に⾏くことができなくなるものであり、かかるA の権利に対する」侵害の程度は⼤きい。したがって、本件返納命令には事後的な⾦銭賠償等による回復が困難なものといえ、「重⼤な損害」が認められる。

⑵ ②について検討する。②とは、執⾏停⽌を認めるべき利益とそれによって被る不利益の⽐較考量によって決する。執⾏停⽌によって被る不利益は事後的かつ回復困難な損害を⾃演に防ぎ、反社会的勢⼒等に屈しないという国際要請的利益を含むものである。⼀⽅、これを認める利益は、A はB 国への渡航し情報を得ることはできないが、旅券の効⼒を失っておらず、隣国のC 国等で情報を仕⼊れることもできる軽微なものである。したがって、本件返納命令に「緊急の必要」は認められない。

2 よって、②を満たさず、執⾏停⽌の申⽴ては認められない。

 

2.感想

1は判例が22 条2項説なのにミスった。合憲限定解釈しようかと思ったが、パターナリズムを合憲限定解釈の中で組み込む⾃信がなかったので、⽬的⼿段審査を使った。(2 枚⽬5⾏⽬くらい)

2は典型論点(2 枚⽬22⾏⽬くらい)

3は当てはめが雑になった。(最後残り2⾏くらい)