法律解釈の手筋

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東大ロー入試 令和2年度(2020年度) 民事系 解答例

解答例

第1 設問1[1]

1 共同相続された株式が相続人にどのように帰属するか。

2 株式は、自益権と議決権等の共益権からなっており、共同相続人に当然に分割される単なる金銭債権とは異なる。また、当然に共同相続人に分割されるとすれば、共同相続人間の紛争を全体として解決することが困難になるおそれがある。

  そこで、共同相続された株式は準共有(民法264条)になると考える[2]

3 本件では、本件株式をXBCが共同相続しており、かつ、遺産分割協議はまだ成立していない。

4 よって、本件株式について議決権が行使された時点において、本件株式はXBCの準共有になっていた。

第2 設問2

 1 本件決議において、BがY社の同意に基づいて本件株式の持分権を超える議決権行使をしたことは、106条但し書に反し、違法ではないか。

 2 まず、106条本文の趣旨は、会社の事務処理上の便宜から、「特別の定め」(民法264条但し書)を設けた点にある。そして、106条但し書は、その文言上、会社がかかる利益を放棄する場合には同条本文の適用を排除することを定めているにすぎず、会社が同条但し書の同意をした場合であっても、権利行使の方法が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは、当該権利行使は違法であると考える。このように解しないと、一部の共有者による非合法なクーデターを容認することになるからである。

   次に、共有株式の議決権行使の方法については、共有者全員の一致がなければならないとすると、会社の運営に支障をきたすおそれがあり、妥当でない。そこで、特段の事情のない限り、民法252条にいう管理行為として、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決するべきであると考える[3]

3 本件では、権利行使者の指定及び通知(106条本文)はなされていない。しかし、Bは、本件株式の前にCと協議し、本件議案につき賛成することで合意していたところ、BCの持分割合の合計は3分の2であるため、共有者の過半数の同意がある。また、本件総会において、BはY社から議決権行使の同意を得ている。

4 したがって、本件決議の内容が合併、事業譲渡、解散などの、準共有株式の変更行為にあたるような特段の事情がない限り、本件決議は106条但し書に反せず、適法である。

第3 設問3

 1 Xは、甲社株式の共有権を有しているにすぎず、権利行使者の指定も受けていないところ、「株主」にあたらず、原告適格が認められないのではないか。

 (1) 株主総会決議取消しの訴えの提起も株主の権利の行使である以上、株式準共有者が権利行使者の指定によらずに単独でかかる訴えを提起することは、会社法106条本文により許されないのが原則である。もっとも、特段の事情が認められる場合には、例外的に共有者が単独で訴えを提起することができると考える[4]

 (2) 本件では、Y社は、株式準共有者の1人であるBの議決権行使に同意することで本件株式総会を可決させておきながら、他方の共有者であるXの訴えについてその原告適格を争うとするのであれば、共有者の一方の権利行使は認め、他方の権利行使は認めないという矛盾挙動にあたるところ、信義に反する特段の事情にあたるといえる。

 (3) そこで、本件では、特段の事情が認められるため、Xは「株主」にあたり、原告適格が認められる。

(4) なお、設問1において株式が共同相続された場合には当然に分割されるとの見解を採用するのであれば、共同相続人は単独で権利行使が可能である以上、株主総会取消しの訴えについても当然に原告適格を有すると考える。

以上

 

[1] 本問題と類似の問題として、平成28年度司法試験予備試験商法設問2、『事例で考える会社法』事例⑥・116頁〔田中亘〕等参照。

[2] 最判平成26年2月25日民集68巻2号173頁。

[3] 最判平成27年2月19日民集69巻1号25頁。

[4] 最判平成2年12月4日民集44巻9号1165頁。