法律解釈の手筋

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2021(令和3)年度 慶應ロー 刑事訴訟法 解答例

解答例

第1 設問1(以下刑事訴訟法は法名略。)

1 憲法38条3項、319条2項、3項

第2 設問2

補強法則の趣旨は、自白が被告人による自己の犯行を認める供述であり裁判官によって過大評価されやすい特質を有するところ、自白偏重による誤判を防止する点にある。

第3 設問3

1 本件で、下線部①の供述と下線部②③④の各証拠だけをもとにXを建造物侵入・窃盗の公訴事実で有罪とすることは、補強法則(憲法38条3項、刑訴法319条2項)に反し、許されないのではないか。

2 下線部②③④の各証拠は、補強証拠となるか。補強証拠の範囲が問題となる。

(1) 補強法則の趣旨は、設問2のとおりであるところ、補強を要する範囲とは、自白内容の真実性を実質的に担保する証拠があれば足りると考える[1]

(2) 本件では、下線部④において、甲大学の盗難被害届が出ているところ、かかる事実によって、甲大学に犯人が侵入した事実、犯人が甲大学の備品であるパソコンが盗難された事実が客観的に証明されるところ、Xの自白内容の真実性を実質的に担保できるといえる。

(3) したがって、下線部④の盗難被害届をもって補強証拠たり得る。

3 それでは、下線部④の被害届は、補強証拠としての証明力を有するか。

(1) 補強証拠の証明力は、補強法則の上記趣旨から、自白の真実性を保障するに足る程度のものであれば良いと考える[2]

(2) 本件では、下線部④の盗難被害届によって、Xの自白が真実性であったであろうことが保障されている。

(3) したがって、下線部④の被害届は、補強証拠としての証明力を有する。

4 よって、裁判所は、下線部①の供述録取書と下線部④の被害届をもって、Xを建造物侵入・窃盗の公訴事実で有罪とすることができる。

第4 設問4

1 まず、検察官としては、予備的訴因変更請求(312条1項)をして、盗品等有償処分あっせん罪(刑法256条2項)の訴因を追加すべきである。本件で、「公訴事実の同一性」が認められるか。

(1) 訴因変更制度の趣旨は、同制度が一個の訴訟手続の中で解決を図るべき範囲の問題であり、二重起訴の禁止(338条3号、339条1項3号)や一事不再理効による再訴禁止(337条1号)と表裏の関係にあるところ、1個の刑罰権に関わる2個以上の訴因について別訴そのものを許さない点にある。そこで「公訴事実の同一性」とは、別訴でともに有罪とされるとしたならば、二重処罰となる関係にあることをいうと考える。

(2) 本件では、当初訴因は、Xが某月10日午前8時30分頃から10時頃までの間、東京都港区所在の甲大学において研究室のパソコンを窃取した、という窃盗罪であるのに対し、予備的変更後の訴因は、Xが某月12日に東京品川区所在の丙電器店で盗品である甲大学研究室のパソコンについて有償処分のあっせんをした、という盗品等有償処分あっせん罪である。両訴因は、日時、場所において近接していることから、当初訴因の窃盗罪が成立した場合には、予備的に変更した盗品等有償処分あっせん罪が不可罰的事後行為として成立しないこととなる。したがって、両訴因は実体法上択一関係にあり、両訴因によって処罰するとすれば、二重処罰となる危険がある。

(3) したがって、本件では、「公訴事実の同一性」が認められる。

2 次に、検察官としては、下線部①の供述の立証趣旨について「被告人の盗品の知情性」、下線部②の映像の立証趣旨について「被告人が被害品について丙電器店に売却したこと」を追加するべきである。

(1) 下線部①の証拠は、被告人Xの供述録取書であるが、伝聞証拠(320条1項)にあたるため、原則として証拠能力が否定されるものの、供述内容は「不利益な事実の承認を内容とするもの」であり、322条1項本文前段の要件を充たす。したがって、下線部①の証拠に証拠能力が認められる。

(2) 当該パソコンが盗品であるとは知っていたこと、すなわち、盗品の知情性については下線部①のXの自白調書しかない。しかし、下線部②及び④によって、Xが盗品について有償処分のあっせんをしたことを客観的に証明できるところ、盗品の知情性について別途補強証拠は不要である。

以上

 

[1] 最判1948(昭和23)年10月30日刑集2巻11号1427頁など。

[2] 最大判1949年(昭和24)年5月18日刑集3巻6号734頁、最大判1955(昭和30)年6月22日刑集9巻8号1189頁。