法律解釈の手筋

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慶應ロー入試 令和2年度(2020年度) 憲法 解答例

解答例

第1 法令違憲

 1 Xは、以下のとおり主張する。すなわち、本件条例1条が、Y町クジラ・イルカ会館(以下「本件会館」という。)の設置目的を捕鯨・イルカ漁を守るための社会的諸活動を支援するため、としていることは、憲法14条1項に反し違憲である。捕鯨・イルカ漁を護るための社会的諸活動を支援するため、という目的部分については無効である結果、本件条例6条1号該当性が認められないため、Y町町長が本件申請を不許可としたこと(以下「本件不許可処分」という。)は違法である。

 2 まず、本件条例1条は、捕鯨・イルカ漁に賛成する者に対して集会等の場を提供することを規定しているところ、捕鯨・イルカ漁に賛成する者と反対する者との間に別異取扱いをしているといえる。

(1) これに対して、Y町側は特定の目的を有する者のみに対して「公の施設」を設置することも許されている以上、別異取扱いは認められないと反論することが考えられる。

 (2) しかし、「公の施設」とは、社会の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設をいい、かつ、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取り扱いをしてはならないと規定しているところ(地自法244条3項)、特定の思想ないし見解を有する者のみを優遇して利用させることは、社会の福祉を増進する目的に反するはずであり、別異取扱いにあたる。

 3 そして、上記別異取扱いを正当化する目的は認められず、不当な別異取扱いであることは明らかである。

 4 したがって、本件条例は14条1項に反し違憲である。

5 本件では、Y町は、Y町の伝統文化としての捕鯨・イルカ漁を一般市民に広く理解してもらうために本件会館を設置するという第1次的判断権を行使し立法裁量が縮減されているところ、捕鯨・イルカ漁に関する会館の設置という方向で本件条例1条を合理的に解釈し直すことが可能であると考える。よって、本件条例1条は一部無効であり、本件会館設置目的は、「捕鯨・イルカ漁に関する活動のための集会等の場を提供する目的」と読み替えるべきである。

以上より、Xの本件申請は、本件条例1条の目的に反するものではなく、本件条例6条1号該当性が認められない結果、本件不許可処分は違法である。

第2 適用違憲

1 もし仮に、上記主張が認められないとしても、本件不許可処分は、6条1号該当性が認められない以上、Xの集会の自由を侵害し憲法21条1項に反し違憲であると主張する。

2 憲法21条1項は、集会の自由を保障する。集会の自由とは、多数人が政治・経済・学問・芸術・宗教などの問題に関する共通の目的をもって一定の場所に集まる自由[1]をいう。Xの開催しようとした捕鯨・イルカ漁に反対する見解をY町においても広めるための集会は、Y町の行う捕鯨・イルカ漁及びそれに関する伝統的な文化行事への反対運動を目的としてY町クジラ・イルカ会館という一定の場所に集まるものであり、集会にあたる。

   したがって、Xのかかる自由は21条1項によって保障される。

3 本件会館は、「公の施設」(地自法244条1項)として設置されており、「正当な理由」がない限り、本件会館の利用を拒絶することは許されないため、Xの上記自由は、本件不許可処分によって制約されている。

(1) これに対して、Y町側は、本件申請は、捕鯨・イルカ漁反対派のXからの申請であることからすれば、本件条例1条の目的外の利用である以上、要保護性に欠ける結果、上記自由への制約は認められず、当該処分についてはY町町長に行政裁量が認められる、と反論することが考えられる。

(2) しかし、Xは上記集会の趣旨から、同集会を、捕鯨・イルカ漁反対派に限定せず、捕鯨・イルカ漁賛成派も自由に参加できる集会として申請していた。そして、このような討論を経ることこそ、真にY町の伝統文化として維持・継承されてきた捕鯨・イルカ漁の社会的諸活動の支援や、後世への伝達に必要な過程であり、本件条例1条の本件会館の設置目的に反するものということはできない。

4 そして、以上にかんがみれば、「本件施設の目的に反すると認められる場合」にあたらないことになるため、本件条例6条1号にあたらない。

5 よって、本件不許可処分は、憲法21条1項に反し違憲である。

以上

 

[1] 芦部[7版]・222頁。