法律解釈の手筋

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令和7年度(2025年度) 慶應ロー入試 民法 解答例

解答例

第1 設問1(以下、民法は法名略。)

1 Bは、AのDに対する乙債権譲渡(以下「本件譲渡」という。)が有効であり、かつ、Cの差押え(以下「本件差押え」といい、これにかかる差押命令を「本件差押命令」という。)に優先するため、支払を拒絶していると考えられる[1]。かかる支払拒絶は、以下のとおり、認められない。

2 本件譲渡は、有効である。

(1) 債権譲渡は、意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない(466条の6第1項)。もっとも、いかなる債権でもまとめて譲渡が可能と解すると、一般債権者が債務者の責任財産を把握することができず、不測の損害を被る。そこで、①始期終期を明確にするなど、譲渡目的債権が適宜の方法により特定されており、②公序良俗(90条)に反しない場合には、当該債権譲渡は有効であると考える[2]

(2) 本件では、令和6年3月分から令和12年5月分までの乙債権を譲渡しているところ、債権の発生原因及び始期と終期が明確であり、特定性に欠けるところはない(①充足)。Aは、確かにCの債権差押えを免れる目的を有しているが、譲渡目的債権の範囲は、6年2ヶ月分と不合理とまではいえず、他の債権者に不当な不利益を与えるとまではいえない(②充足)[3]

(3) したがって、本件譲渡は有効である。

3 本件譲渡は、本件差押えに優先する。

(1) 債権の差押えと債権譲渡の優劣は、確定日付ある証書による通知が債務者に到達した時点と、差押命令が第三債務者に送達された時点(民事執行法145条5項)の先後によって決すると考える。なぜなら、債権の二重譲渡において、公示機関としての債務者がその機能を果たすためには、債務者が債権譲渡を認識する必要があるため、確定日付ではなく、確定日付のある証書が債務者に到達した時期の先後で決するのが適当であるところ、かかる法理は、債権譲渡と差押えの競合にも妥当するからである[4]

(2) 本件譲渡の通知の到達日は令和6年2月8日であるのに対し、本件差押命令の送達日は同月10日である。

(3) したがって、本件譲渡は本件差押えに優先する。

4 これに対して、Cは、本件譲渡について、別途詐害行為取消訴訟を提起して[5]、本件譲渡を取り消した上(424条1項)、その旨を反論として主張することができる。

(1) Aは、令和5年秋頃から債務超過に陥っているところ、本件譲渡によって、Dに乙債権を、債権額の7割相当の額で売却しており、責任財産を減少させる行為として詐害行為にあたる。

(2) また、Aは、本件譲渡に際して、Aの債権者からの差押えの恐れがあると説明しており、「債権者を害することを知って」いた。

(3) Dは、上記説明を受けている以上、「債権者を害することを知らなかった」とはいえない。

(4) したがって、詐害行為取消権の行使が認められる。

5 よって、Cの反論が認められ、支払拒絶は認められない。

第2 設問2

1 Bは、AのBに対する甲建物及びその敷地の売却(以下、「本件売却」という。)が有効であるため、賃料が発生しなくなることから、支払を拒絶していると考えられる[6]。かかる支払拒絶は、以下のとおり、認められる。

2 AB間の賃貸借契約は、本件売却によって、賃貸⼈たる地位がAからBに承継される結果(605条の2第1項)、当然に消滅する。したがって、乙債権が発生しない。

3 これに対して、Cは、Bが前記2の事実を主張することは信義則上許されない、と反論することが考えられる[7]が、Bにおいて乙債権が発生しないことを主張することが許されないとまでいえる事情は見受けられない[8]。したがって、Cのかかる反論は認められない。

4 次に、

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