法律解釈の手筋

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令和3年度(2021年度) 慶應ロー入試 商法 解答例

解答例

第1 設問1

1 XはYに対し、売買契約に基づく代金支払請求をすることが考えられる。

(1) Xは、Aとの間で、2020年2月14日、「Y社発起人A」名義で、Y社の設立を条件として売買契約を締結している。

(2) 本件契約のXの契約相手方が誰かが問題となるが、この点については、本件契約時点でYは設立されておらず、Yが契約の当事者となることはできない。また、契約の名義は「Y社発起人A」となっている。したがって、Xの契約相手方はBである。

2 それでは、本件契約の権利義務がBからY社へ移転するかが問題となる。

(1) 発起人の権限の範囲は、相手方の取引の安全、会社設立までに時間を要しない現行法との関係では、開業準備行為についてまで認める必要はないと考える。したがって、開業準備行為の1つである財産引受け(28条2号)は、特にその必要性が大きいため、法が厳格な要件の下特別に認めたものと考える。

(2) 本件契約は、飲食店の開業準備として高級日本酒を購入するものであり、開業準備行為にあたる。また、本件契約は、Y社の設立を条件とする財産引受けでもあるものの、定款による記載がない。

(3) したがって、本件契約の権利義務はY社に移転しない。

3 よって、Xのかかる請求は認められない。

第2 設問2

1 AはXと「Y社発起人A」との名義で本件契約をしているにすぎず、Yの代表者名義で本件契約をしているわけではない。

2 したがって、本件契約には顕名が欠けるため、Aは、無権代理人の責任を負わない。

3 なお、このように解しても、XはAに対して、契約相手方として本件契約の履行請求をすることができるため、不都合はない。

以上