法律解釈の手筋

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令和7年度 司法試験 倒産法 解答例

解答例

問題1

第1 設問1

1 小問1

(1) 破産手続開始決定によって、破産者を当事者とする破産財団に関する訴訟手続は中断する(破44Ⅰ)。

ア「破産財団に属する訴訟」とは、破産財団に属する財産に関する訴訟を含む。破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産は、破産財団となる(34条1項)。

イ 本件のAのBに対する不法行為に基づく損害賠償請求訴訟は、破産手続時における、AがBに対して有する不法行為に基づく損害賠償請求権に関するものであり、かかる請求権は、破産者が破産手続開始時に有する財産たる「破産財団」にあたる。

ウ したがって、(1)の訴訟手続は、「破産財団に関する訴訟」にあたり、訴訟手続は中断する。

(2) (1)の訴訟手続は、「破産債権に関するもの」ではないので、破産管財人Xが受継する(44条2項前段)。Bも受継の申立てをすることができ(44条2項後段)、Xは受継を拒絶できない。Aの破産手続が終了したときは、Xを当事者とする破産財団に関する訴訟手続は中断し(44条4項)、Aは、中断した訴訟手続を受け継がなければならない(44条5項前段)。この場合の受継の申立ては、Bもすることができる(44条5項後段)。さらに、Xが44条2項の受継をする前に破産手続が終了したときは、Aは、当然訴訟手続を受継する(44条6項)。

2 小問2

(1) AのEに対する慰謝料請求訴訟は、差押禁止財産(34条3項2号)たる「自由財産」に関するものであり「破産財団に関する訴訟」にあたらない。

ア 慰謝料請求権は、相続の対象となるため帰属上の一身専属権にはあたらないが、被害者の受けた精神的苦痛を金銭に見積もってこれを加害者に支払わせるものであるため、行使上の一身専属権にあたる。行使上の一身専属権は、差押債権者が債務者に代わって取り立てることによって換価することができないため、差押禁止財産(34条3項2号)にあたる。しかし、①当事者間の金額の合意成立や債務名義の成立等によって金額が客観的に確定したり②被害者が死亡して相続が発生したりした場合には、客観的存在としての金銭債権となり、一身専属性を失うと考える。

イ 本件では、(2)の訴訟手続は第一審裁判所に訴訟係属中であり、慰謝料の金額が客観的に確定していない(①不充足)。また、被害者Aは死亡していない(②不充足)。

ウ したがって、AのEに対する慰謝料請求権は、差押禁止財産にあたり、「破産財団」にあたらないため、訴訟手続は中断しない。

(2) よって、(2)の訴訟手続は、そのままAE間にして訴訟係属し、審理判断される。

第2 設問2

1 小問1

(1) AのCに対する本件和解契約に基づく弁済のうち、令和5年4月以降にかかる部分については、162条1項1号により、否認が認められる。

(2) 令和5年1月から3月までの弁済部分について

ア まず、Xとしては、令和4年6月に消費者金融2社に対する返済を怠っているため、「支払不能」にあたる、と主張する。しかし、令和4年11月、Fによって、A、C及び消費者金融2社との間で和解契約が成立し、債権計画が成立している。したがって、和解契約成立時点をもってAは支払不能を脱したといえ、その後の令和5年1月から3月における弁済と、令和4年6月時点の支払不能との間に因果関係がないため、否認が認められないと考える[1]

イ また、令和4年9月5日の任意整理を行う旨の受任通知は、「支払の停止」(162条3項)にあたるが、かかる支払停止は、破産手続開始の申立日である令和6年11月12日から起算して1年以上前であるため、支払不能は推定されない(162条3項括弧書)。

ウ 令和5年1月から3月までは和解契約の約定どおり弁済をしていたのであるから、その他「支払不能」や「支払停止」にあたる事情はない。

エ したがって、否認は認められない。

(3) 令和5年4月以降の弁済部分について

ア 令和5年4月以降は、本件各和解契約の約定どおりの弁済ができなくなっているところ、「支払不能」が認められる。

イ これに対して、Cは、Aが支払不能であったことについて知らなかった(162条1項1号イ)、と反論することが考えられる。しかし、令和5年4月以降、Cに対する弁済も隔月でしか弁済できていない以上、Cは、Aが支払不能であったことを知っていたといえる。

ウ よって、令和5年4月以降の弁済部分については、否認が認められる。

2 小問2[2]

(1) 預金20万円について

ア 否認が認められる場合、原状回復請求権が認められる(167条1項)。

イ なお、本件の否認が無償行為否認(160条3項)である場合、行為時に破産債権者を害することを知らなかったときは、現に受けている利益を償還すれば足りるが(167条2項)、本件では、前述と同様に、令和4年9月5日の任意整理を行う旨の受任通知の「支払の停止」と本件行為との間に因果関係は認められないため、無償行為否認は認められない。

ウ したがって、預金20万円の内、Aの法定相続分2分の1に相当する10万円について、価額償還請求をすることができる。

(2) 本件土地について

ア 否認権行使が認められる場合、前述と同様に原状回復が認められ、財産権自体の復帰が不可能又は著しく困難な場合、破産管財人は、その返還に代えて価額の償還を求めることができる。したがって、本件土地の時価のうち、2分の1に相当する額を請求することができる。そして、以下のとおり本件土地の時価は、

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