法律解釈の手筋

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平成24年 予備試験 行政法 解答例

解答例

 

 

第1 実体違法

 1 第1に、Aは、本件工事はCが会社を通さずに行ったものであり、「排水設備の新設等を行おうとする者」(乙市下水道条例(以下「本件条例」という。)9条)にあたらず、事実誤認という違法事由が認められる、と主張することが考えられる。

 (1) 同条の趣旨は、下水道が公衆衛生に影響を及ぼすおそれのあるものであるところ、排水設備を新設等しようとする者について、事前に本件条例及び関連法令の適合性を審査する点にある[1]。「排水設備の新設等を行おうとする者」とは、そのような審査を受けるべき者をいい、新設等の態様、対象、目的等諸般の事情を考慮して、実質的に新設等を行う主体となっている者をいうと考える。

 (2) 本件では、確かにCはAの従業員であり、Aが本件工事の実質的な主体とも思える。しかし、本件工事は、休日という通常会社が活動しない日に、本件工事を行ったCの自宅の排水設備を対象に行われたものである。そして、本件工事は浄化槽を用いていたのをやめて公共下水道に接続する目的で行われており、専らCが自己の家の排水設備の改造を行うためになされたものであるといえる。以上にかんがみれば、実質的に本件工事を行う主体となっていたのはCであったといえる。

 (3) したがって、Aは「排水設備の新設等を行おうとする者」にあたらず、したがって乙市下水道排水設備指定工事店に関する規制(以下「本件規則」という。)7条2項6号にもあたらない。

    以上より、「Aが本市市町の確認を受けずに、下水道接続工事を行ったため。」という理由は、事実誤認が認められ、違法事由がある。

 2 第2に、Aは、仮に本件工事はAが行ったものだとしても、指定工事店としての指定を取り消す本件処分をしたことは、比例原則に反し違法であると主張することが考えられる。

 (1) 下水道設備の設置等は、本来営業の自由が認められるものの、公衆衛生確保の観点から、あらかじめ市長に排水設備の新設等の設計及び工事をする者の指定権を与え、実際の工事の前にも市長の確認を受けなければならないとされている。

    以上の消極目的規制にかんがみれば、同制度はいわゆる許可制度にあたり、行政庁に与えられる裁量は一般的に狭いと解される。そして、このように許可されることが基本である指定工事店制度にかんがみれば、本件規則11条の指定の取消処分についても他により軽い手段によって目的達成を行うことが可能である場合には、取消処分を行うことは比例原則に反すると考える。

 (2) 本件では、Aは本件処分以前には、本件条例及び本件規則に基づく処分を受けたことはなく、優良な建設会社であった。また、本件工事についても、Aが行ったものかCが独自に行ったものかは微妙な事例であり、Aの非難可能性が必ずしも大きいとはいえない。以上にかんがみれば、Aに対しては指定停止処分によっても十分制裁措置として目的達成が可能である。

 (3) したがって、本件処分は比例原則に反し違法である。

第2 手続違法

 1 第1に、本件処分は「不利益処分」(行手法2条4号柱書)にあたることは明らかであるところ、本件処分の通知書の記載内容は理由の提示(行手法14条)として不十分であり違法であると主張することが考えられる。

 (1) 理由提示の趣旨は、行政庁の判断の公正と慎重を担保して恣意的判断を抑制し、被処分者の不服申立て便宜を図る点にある。そこで、理由の提示は、被処分者がいかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分を受けたかを被処分者において記載自体から了知し得る程度の特定性が必要である[2]と考える。

 (2) 本件では、本件処分の通知書に「Aが、本市市町の確認を受けずに、下水道接続工事を行ったため。」と記載されていた。しかし、これでは、本件条例及び本件規則の内容を知らない限り、いかなる法規が適用されたかということが通知自体からAにとって了知することは困難である。

 (3) したがって、本件通知書は理由の提示として不十分であり、14条1項本文に反する。なお、同項但し書に該当する事由は、本件では認められない。

 2 第2に、本件処分は「許認可等を取り消す不利益処分」(行手法13条1項1号イ)にあたるところ、聴聞手続を経ることが必要である(同号柱書)。

 (1) 本件では、乙市の職員がAに電話して、本件工事について経緯を説明するように求めでいる。また、Aの代表者がCを伴ってC市役所を訪れ、本件工事はCが会社を通さずに行ったものであるなどと説明している。しかし、Aは、かかる事情以外には、意見陳述や資料提出の機会を与えられていなかった。

(2) 聴聞手続では、聴聞を行う期日までに相当な期間をおいて不利益処分の名宛人に行手法15条1項各号事項を定めた書面によって通知をしなければならない(行手法15条1項柱書)。

    Aは、上記の市役所への説明の前に市役所から電話による連絡はあったものの、書面による通知を受けていないため、上記事情を聴聞手続があったとみることはできない。

 (3) 本件では、行手法13条2項各号の聴聞手続を経なくてよい事由は認められない。

 (4) したがって、本件処分は行手法15条1項に反する。

 3 理由の提示及び聴聞手続は、行政庁の公正確保と透明性の向上を図るために適正手続(憲法31条)の観点から定められた重要な手続であるところ、同手続違反は取消事由にあたる[3]

以上

 

[1] 参考:下水道法1条「この法律は、流域別下水道整備総合計画の策定に関する事項並びに公共下水道、流域下水道及び都市下水路の設置その他の管理の基準等を定めて、下水道の整備を図り、もつて都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、あわせて公共用水域の水質の保全に資することを目的とする。」

[2] 最判1985年(昭和60年)1月22日民集39巻1号1頁参照。

[3] 事例研究・7頁参照。