法律解釈の手筋

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平成30年度 予備試験 民事実務基礎 解答例

解答例

第1 設問1

1 (1)について

Xは、YのAに対する売買代金債権に対して仮差押え(民保法20条1項)の申立て(民保法13条1項、民保規則13条)。をしておくべきである。

仮差押えによって、第三債務者であるAに対して弁済禁止効が発生し(民保法50条)、Aは、Yに弁済することができず、仮に弁済してもXはAに対し売買代金債権を取り立てることができる。かかる手段を講じないと、YがAに対して同債権を取り立て、金銭を隠匿することが考えられ、Xが本件訴訟に勝訴したとしても、債権を回収できないという問題が生じる。

2 (2)について

消費貸借契約に基づく貸金返還請求権 

履行遅滞に基づく損害賠償請求権

2個

3 (3)について

被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する平成28年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4 (4)について

(1) Xは、Yに対し、平成27年9月15日、弁済期を平成28年9月30日として、100万円を貸し付けた。

(2) 平成28年9月30日は経過した。

第2 設問2

1 (1)について

平成28年9月30日、請求原因(1)の貸付にかかる債務につき、100万円を弁済した。

2 (2)について

(1) (ⅰ)について

上記売買代金債権をもって、原告の本訴請求債権とその対等額において相殺するとの意思表示をした。

(2) (ⅱ)について

必要である。

自働債権に同時履行の抗弁権が付着している場合、その存在効果として相殺が許されないとするのが判例・通説であるため、売買契約に基づく代金債権を自働債権として主張する場合には、その抗弁権の存在効果を消滅させるため、目的物の引渡しを主張立証しなければならない。

第3 設問3について

時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺適状にある場合には、その債権者は相殺をすることができる(民法508条)。本件では、平成28年9月30日に、受働債権である貸金債権と相殺適状にあるところ、本件カメラの売買代金債権の消滅時効の成立する平成29年10月1日よりも前に相殺適状にある。

したがって、消滅時効の抗弁は相殺の効果を消滅させず主張自体失当となるため、Pは同主張を断念したと考える。

第4 設問4

1 Yは、弁済期である平成28年9月30日の前日と前々日に、銀行預金口座からそれぞれ50万円ずつ引き出しており、貸金債権の金額と同額である合計100万円の引き出しが認められる。また、平成28年9月30日にXとYがレストランで会い、YがXに食事をおごった事実はXも認めているところ、かかる事実を認定することができる。弁済期直前に貸金債権と同額の金銭がY名義の口座から引き出され、弁済期にXとYが会っていることからすれば、同日にYがXに100万円を弁済した事実を推認することができる。Xが、Yに対して初めてお金の返済を求めたのは、平成29年10月頃と供述しているが、弁済期にXとYが会っていることからすれば、その時に何かしらの話があってもよいはずであるのにこの点についてXから何らの供述もなく、不合理である。

2 確かに、YがXに100万円と高額の金銭を弁済していたとすれば、領収書がなければ不自然である。しかし、この点については、Yは、Xから領収書を受領したものの、平成29年8月31日の引っ越しの際に処分してしまったと供述している。引っ越しの事実は、本件住民票から認定できるところ、知り合い間の金銭のやり取りであれば、1年間領収書を保管した後に処分したとしても何ら不合理ではない。したがって、領収書が存在しないことは、Yの弁済の事実の存在を妨げることにはならない。

3 さらに、Xがなぜ本件訴訟を提起してきたかといえば、平成29年9月半ば頃にあったXの同窓会の経費の使い込みの件について、YがXに対して他の幹事たちの前で指摘したために、XY間の関係が悪化したという事情がある。Xも、少なくとも同窓会の経理について、他の幹事たちの面前でYから指摘を受けたことについては認めているところ、かかる事実から、XY間の関係が悪化したことは推認される。したがって、Xの本件訴訟はこのような経過の中でなされた恨みをはらすための訴訟である。

4 以上より、Yの弁済の事実が認められる。

以上