法律解釈の手筋

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令和元年度(2020年度) 予備試験 民法 解答例(新規定対応)

問題等

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関係図は、以下のとおり。

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令和元年度 予備試験 民法 関係図

解答例 

 

第1 設問1(以下民法は法名略。)

1 DはCに対し、所有権に基づく返還請求としての建物収去土地明渡請求をすることが考えられる。

2 本件土地はAが元々所有しており、これを平成28年3月15日にAの子であるBが相続した。そして、競売によってDが本件土地を買い受けた。本件土地には本件建物が存在して本件土地を占有している。本件建物はCが所有している。

3 Cの主位的反論

(1) 第1に、Cは、Aから所有権を取得したため「第三者」(177条)にあたり、Dが本件土地の所有権移転登記を受けるまで、競売による本件土地の所有権取得を認めない、と反論することが考えられる。

ア 177条の趣旨は、登記による画一的処理による取引安全を図る点にあるところ、「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう。

イ 本件では、Cは、Aから平成20年4月1日に本件土地の贈与を受けている。そして、Cは、Dが本件土地の所有権を取得すれば、本件土地の所有権を取得できないことになるため、Dの登記の欠缺を主張する正当な利益を有する。

ウ したがって、Cは「第三者」にあたる。

(2) これに対して、Dは、既に本件土地の所有権移転登記を具備している以上本件土地の所有権取得をCに対抗できる、との再反論をすることが考えられ、かかる再反論は認められる。

(3) したがって、Cの主位的反論は認められない。

4 Cの予備的反論

(1) 第2に、Cは、Dが本件土地の所有者であるとしても、自己には本件土地に対する法定地上権の成立が認められ(388条)、かかる占有権原をDに対して対抗することができる、との反論をすることが考えられる。以下、法定地上権の成立要件を検討する。

ア 平成20年8月21日までに本件土地上に本件建物が建築された以上、平成28年6月1日にBがDに対し本件土地について抵当権設定契約をした当時、本件建物が存在していた。

イ 本件建物は建築当時からC所有の建物である。また、平成20年4月1日にBの被相続人であるAは本件土地をCに贈与しているため、本件土地の所有権もCに帰属している。したがって、上記抵当権設定契約当時、本件土地及び本件建物はいずれもCの所有に属しており、「土地及び建物……同一の所有者に属する」といえる。なお、本件土地の所有権移転登記はA名義のままであるが、Dとしては、Cから約定利用権を対抗されることが予想されるため、その内容を調査するはずであり、その段階で本件土地が実際にはC所有であることを知ることができるはずである。そのため、かかる事情は同要件充足性を否定しない[1]

ウ 前述のとおり、本件土地に抵当権が設定されている。

エ 本件抵当権は平成29年3月1日に競売手続が実行され、D自らが買い受けており、少なくとも平成29年12月1日時点で本件土地の所有者はD,本件建物の所有者はCとなり、「所有者を異にするに至った」。

オ したがって、法定地上権が成立する。

(2) よって、Cの予備的反論は認められる。

5 以上より、Dのかかる請求は認められない。

第2 設問2

1 CはDに対し、所有権に基づく妨害排除請求としての抵当権設定登記抹消登記請求をすることが考えられる。

2 Cは、第1に、請求原因として、元所有者のAから平成20年4月1日に本件土地を贈与され所有権を取得したと主張することが考えられる。また、本件土地については、Dの抵当権設定登記が存在する。

(1) これに対して、Dは、自己が「第三者」(177条)にあたり、Cの本件土地所有権移転登記具備より先に抵当権設定登記を具備している以上、Cは自己に本件土地の所有権を対抗することができない、と反論することが考えらえる。前述の「第三者」の定義により判断する。

ア Dは、Cが本件土地について負担のない所有権を取得してしまうと、抵当権を取得することができないため、Cの登記欠缺につき正当な利益を有する。

イ したがって、Dは「第三者」にあたる。

(2) よって、Dの反論が認められ、Cのかかる請求は認められない。

3 Cは、第2に、請求原因として、平成20年4月1日に取得時効を原因として本件土地の所有権を原始取得したと主張することが考えられる。

(1) Cは、平成20年4月1日にAから本件土地の引渡しを受けて占有を開始しており、それ以降、10年経過時点の平成30年4月1日時点まで本件土地の占有を継続している。Cは、Aから本件土地を贈与として譲り受けており、「所有の意思」がある。また、Cは本件土地上の本件建物に居住しており、その占有の態様は「平穏」かつ「公然」である。また、Cは有効な契約に基づき占有しているのだから、その土地が他人の物であることにつき善意無過失である。もっとも、本件土地は占有開始時点で既にC所有のものとなっており「他人の物」といえないのではないか。

ア 同項が「他人の物」と規定したのは、通常自己物について時効取得することはないからであり、自己物の取得時効を認めない趣旨ではない。そして、立証の困難性回避の点からは、自己物についても取得時効を認めるべきである。そこで「他人の物」という要件は不要と考える[2]

イ したがって、Cは甲土地の取得時効を主張することができる。

(2) これに対して、Dは、自己が「第三者」(177条)にあたる以上、先に抵当権設定登記を具備している自己に対して、本件土地の所有権を対抗することができない、との反論をすることが考えられる。

ア 時効取得によって所有権を原始取得する場合、時効取得前の第三者は、その反射的効果として所有権を失うため当事者類似の関係になる。そこで、時効完成前に取引関係に入った第三者は「第三者」にあたらないと考える[3]。そして、Cの時効完成前に本件土地に抵当権を取得したDは、Cの時効取得に基づく所有権との関係では「第三者」にあたらない。

イ したがって、Dのかかる反論は認められない。

4 以上より、Cのかかる請求は認められる。

以上

 

[1] 最判1973(昭和48)年9月18日民集27巻8号1066頁、最判1975(昭和50)年7月11日金法766頁。

[2] 最判1967(昭和42)年7月21日民集21巻6号1643頁。

[3] 最判1966(昭和41)年11月22日民集20巻9号1901頁。