法律解釈の手筋

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平成26年度 予備試験 民事訴訟法 解答例

解答例

第1 設問1

 1 第1に、Xは、Wに対して別訴を提起し、裁判所に対して、弁論の併合(152条1項)をする旨の職権発動の申し出をすることが考えられる。しかし、かかる方法は、弁論の併合が裁判所の裁量に委ねられており、必ずしも本件訴訟の手続で併せて審理してもらえる保障がない。

 2 そこで、第2に、Xは、主観的追加的併合をすることが考えられる。明文なき主観的追加的併合が認められるか[1]

 (1) 判例[2]は、新訴につき旧訴の訴訟状態を利用できるとは限らないため訴訟経済に適うとは限らないこと、訴訟が複雑化するおそれ、軽率な提訴や濫訴が増えるおそれ、訴訟遅延のおそれから、明文なき主観的追加的併合を認めない。

    しかし、主観的追加的併合の必要性があり、上記判例の趣旨が妥当しない場合には、判例の射程が及ばず、明文なき主観的追加的併合が認められると考える。具体的には、被告側の固有必要的共同訴訟において被告から漏れていた者を追加する場合及び旧訴と新訴が、同時審判申出共同訴訟(41条1項)を適用又は類推適用される関係にある場合、任意的当事者変更を認める必要がある場合と考える[3]

 (2) 本件では、保険訴訟とXのWに対する請求は、固有必要的共同訴訟の関係にはない。また、法律上の択一関係や事実上の択一関係もないため、同時審判申出共同訴訟が認められる関係にもない。

 (3) したがって、明文なき主観的追加的併合は認められない。

3 以上より、Xは別訴提起及び弁論併合の申し立てによるほかない。なお、このように解してもXにとって大きな不都合はなく、弁論の併合による適切な訴訟運営を期待するほかない[4]

第2 設問2

 1 まず、YのAX間の本件売買契約が締結されたことを認める旨の陳述によって、当事者拘束効が生じるか。

 (1)  当事者拘束力の生じる自白とは、相手方の主張する事実と一致する、自己に不利益な事実を認めて争わない旨の陳述をいう。当事者拘束力の趣旨は、第1次的には不要証効(179条)によって生じる相手方の信頼保護であり、間接的に、裁判所拘束力によるコスト管理の要請にある。 

そこで、「事実」とは、裁判所拘束力と同様に、主要事実に限ると考える。

    また、「不利益」かどうかは、基準の明確性から、証明責任の分配基準によって決すると考える。証明責任は、ある一定の法律効果が有利に働く者が、当該法規の要件事実について、証明責任を負う。そして、その要件事実は、実体法の趣旨を基準に、立証の難易、証拠との距離等によって微調整する。

 (2) 本件訴訟の訴訟物は、XのYに対する所有権に基づく甲土地明渡請求権であるところ、AX間売買契約締結事実は、Xの所有権を基礎づける事実として、主要事実にあたる。また、かかる事実は、Xの甲土地所有権が発生するための事実であり、Xにとって有利であるところ、Xが証明責任を負う事実である。

 (3) したがって、Yの上記陳述は自白にあたり、当事者拘束力が生じる。

 2 それでは、Wとの関係においても当事者拘束力が生じ、WはAX間売買契約締結事実を争うことができないか。

 (1) ①について

   ア Wは、本件訴訟の係争物である甲土地上に建築されている乙建物をYから賃借しており、「第三者がその訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したとき」(51条)にあたるため、当事者参加とは、参加承継(51条、49条1項)を意味すると考える。それでは、参加承継・引受承継がなされた場合に、被承継人が訴訟参加前にした自白に承継人は拘束されるか。訴訟状態承認義務の可否が問題となる。

   イ 通説は、相手方の既得的地位の保障の観点から、生成中の既判力なるものが承継人にも及ぶとし、訴訟状態承認義務を肯定する。

     しかし、このような既得的地位の保障は、承継人の手続保障を著しく害する。また、既判力というのは、訴訟物に生じるのに対し、訴訟状態承認義務は判決理由中の判断ともいえる自白等の訴訟行為等に拘束力を認めるのであり、既判力とは構造的に矛盾する。そして、このような訴訟の過程に拘束力を認めるというのは、裁判官の心証という浮動的で検証不可能なものに基づいて拘束力を認めることにほかならず、妥当でない。

     そこで、参加承継・引受承継には、訴訟状態承認義務は認められないと考える[5]。確かに、参加承継の場合には、承継人自ら訴訟に参加しているため、引受承継と異なって訴訟状態承認義務を肯定してよいようにも思われるが、時効中断や期間遵守の他、訴訟資料の流用というメリットを享受したくて参加する者が考えられるため、訴訟状態承認義務を当然に肯定してよいことにはならないと考える。

   ウ 本件では、Wとしては、Yの自白に拘束されない。したがって、Wは、AX売買契約締結事実を争うことができる。

 (2) ②について

   ア 本件では、Wが参加承継をした後に、Yが自白をしているため、WはYのかかる自白について訴訟状態承認義務を負わない。

   イ そして、参加承継人は、他方当事者の訴訟追行に左右されず、XW訴訟において、XY訴訟でのYの自白の効力は及ばない(51条、49条1項、47条4項、40条1項)。

   ウ したがって、Wは、AX間売買契約締結事実を争うことができる。

 (3) ③について

   ア 本件では、裁判所が訴訟引受決定をしているため、引受承継(50条1項)がなされたと考える。

   イ そして、前述のとおり、引受承継においても訴訟状態承認義務を否定すべきであるから、Wは、Yの自白に拘束されない。

   ウ したがって、Wは、AX間売買契約締結事実を争うことができる。

以上

 

[1] 明文なき主観的追加的併合のメリットとしては、①訴訟手数料の節約②7条類推適用による同一裁判所への訴え提起が認められること③裁判所が弁論併合をしない場合に、原告のイニシアティブで同一手続に服することができること、がある(瀬木・544頁)。

[2] 最判1987年(昭和62年)7月17日民集41巻5号1402頁。

[3] 重点講義(下)・422頁。

[4] 関連裁判籍については、別訴提起の場合でも7条の類推適用を認めてよいように思われる。訴え提起手数料に関しては、そもそも裁判所書記官がそのような処理を認めないとの指摘に賛同するため、消極に解したい。LQ・559頁、瀬木・544頁。

[5] 新堂幸司「訴訟承継論よ、さようなら」『民事手続法と商事法務』(商事法務、2006)378頁参照。訴訟状態承認義務を否定する論拠をまとめると①口頭弁論終結後の承継人との対比で「生成中の既判力」は認められないこと②訴訟承継人も新たな当事者であり、手続保障を与えなければならないこと③承継人から手続保障を奪う「生成中の既判力」は、115条1項1号の解釈上認められないこと④裁判官の心証・証拠調べ・弁論の全趣旨について「生成中の既判力」を認めるとしても検証不可能でありナンセンスであること⑤承継人と相手方との間では、当事者権と裁判所の訴訟指揮とのせめぎ合いになり、その中で従前の訴訟資料をどこまで使えるかが流動的に決まるところ、そこに「生成中の既判力」の働く余地はないことを挙げる。他に否定説を主張する論者として、金美紗「訴訟承継における『訴訟状態の拘束力』について」慶應法学17号(2010年)・95頁。もっとも、程度の差はあるが、原則的に訴訟状態承認義務を肯定する見解が、多数説である。重点講義(下)・585頁、瀬木・596頁、LQ・592頁等。