法律解釈の手筋

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令和元年 予備試験 民事訴訟法 解答速報 解答例

解答例

第1 設問1

 1 X1らのYに対する売買契約に基づく甲土地所有権移転登記請求権は、所有権移転登記が持分権を基礎としてすることができず、かつ、いかなる持分割合での移転登記をするかが原告の意思にかかっていることから、訴訟法上合一確定の要請が働く固有必要的共同訴訟(40条1項)にあたる[1]。そこで、甲土地の共有権を有する者に提訴共同の必要があり、共有者が共同して訴訟を提起していない場合は、訴え却下となる。

   本件では、本件訴えの訴訟係属前にX1が死亡しているところ、甲土地の共有者は、X2及びAである。

   訴訟の当事者が誰であるかは、基準の明確性の観点から訴状の記載によって判断すると考えるところ、本件訴えの当事者は原告がX1及びX2、被告がYである。

   したがって、本件訴えはX2及びAの提訴共同がなされておらず、原告適格を欠くため、訴え却下となるのが原則である。

 2 もっとも、X2側としては、以下の対応をすることが考えられる[2]

(1) 第1に、X2及びAを本件訴訟の当事者とするため、当事者の表示の訂正をすることで、当事者適格欠缺の瑕疵を治癒することが考えられる。

ア まず、X1は訴訟係属時点で死亡しているものの、本件訴え提起時点までは生きていた以上、潜在的訴訟係属はあったといえる。そこで、当然承継(124条1項1号)の類推適用により、本件訴えでX2及びAが原告になっていたと考えることができる。

イ また、弁護士LはX1及びX2の選任した訴訟代理人であるため、Lのした訴訟行為は、55条1項に基づく訴訟行為として有効である。なお、X2が死亡しても訴訟代理権は消滅しない(58条1項1号)。

(2) 第2に、上記対応が無理だとしても、任意的当事者変更により、当事者をX2からAに変更することで、例外的に当事者適格欠缺の瑕疵を治癒することが考えられる。

   ア まず、任意的当事者変更については明文の規定がないものの、時効の完成猶予、訴え提起期間順守等のメリットがあるため、訴えの主観的追加的併合と訴えの取下げの複合行為として認められると考える。

     そこで、任意的当事者変更が認められるためには、①旧訴と新訴との間に38条の要件該当性が認められること②第1審係属中であること③訴えの取下げについての同意があることが必要である[3]

  イ ①について、本件では、旧訴はX1・X2のYに対する売買契約に基づく所有権移転登記請求であるのに対し、新訴はX2・AのYに対するX1・X2とY間の売買契約に基づく所有権移転登記請求である。X1は旧訴の訴訟係属時点においてすでに死亡しているためそもそも38条の要件を充足することはあり得ないものの(①不充足)、実質的には、両訴訟の目的である権利は同一の売買契約に基づく所有権移転登記請求権であり、類推適用の基礎がある。

     ②について、本件訴えは第1審係属中である。

     ③については、Yは新訴によって本案判決を得る利益が認められ、かつそれで足りる以上、かかる同意は不要であると考える。

   ウ したがって、本件では、任意的当事者変更の類推適用が認められる。

第2 設問2

 1 X1らは、Zによる後訴での売買契約締結事実不存在の主張は、既判力(114条1項)に抵触し遮断されると主張することが考えられる。

2 既判力(114条1項)とは、確定された判決の主文に表された判断の通有性をいう。その趣旨は紛争解決の一回的解決という制度的要請にあり、正当化根拠は手続保障充足に基づく自己責任にある。

   そして、前訴既判力が後訴に作用する場合とは、前訴既判力と後訴の訴訟物が①同一②先決③矛盾のいずれかの関係にある場合であると考える。

既判力の物的範囲(「主文に包含するもの」114条1項)は、審理の簡易化・弾力化の観点から訴訟物にのみ及ぶ。また、時的範囲は、当事者に手続保障が与えられていたといえる時点、すなわち事実審口頭弁論終結時に生じる(民事執行法35条2項参照)。そして、人的範囲は、原則として手続保障の及んでいた当事者にのみ及ぶ(相対効原則 115条1項1号)。

3 本件では、後訴被告は前訴被告と異なるところ、相対効原則に反し、既判力が及ばないとも思える。しかし、Yの代表取締役Bは、強制執行を免れる目的で前訴口頭弁論終結前にZに対し甲土地の所有権移転登記手続をしている。このような場合にZに既判力が拡張されないとすれば、徒に紛争の蒸し返しを許すこととなり、妥当でない。

 (1) 115条1項2号の趣旨は、代替的手続保障にあるところ、口頭弁論終結前に、強制執行を免れる目的で被告が第三者と通謀して当該第三者に係争物を譲渡した場合には、被告は、あたかも当該第三者のためにその後の訴訟を追行していたとみることができ、同号の趣旨が及ぶ。

    そこで、口頭弁論終結前に被告と第三者が通謀して係争物譲渡をしたような場合には、115条1項2号の類推適用が認められると考える[4]

 (2) 本件では、BはZと通謀して、YからZに対する贈与を原因とする甲土地の所有権移転登記手続をしている。

 (3) したがって、115条1項2号類推適用により、前訴既判力がZに拡張される。

 4 前訴既判力の生じる訴訟物はX1らのYに対する売買契約に基づく所有権移転登記請求権の存在であり、前訴事実審口頭弁論終結時にかかる権利が存在することについて、X1らとY、Zとの間で既判力が生じる。

 5 それでは、前訴既判力が後訴で作用するか。

 (1) 前訴既判力の生じる訴訟物はX1らのYに対する売買契約に基づく甲土地所有権移転登記請求権であるのに対し、後訴訴訟物はX1らのZに対する所有権に基づく甲土地所有権移転登記請求権である。前訴は債権的請求権、後訴は物権的請求権である以上、両者は同一・先決・矛盾のいかなる関係にもない。

    そうだとすれば、既判力は後訴に作用しないとも思われる[5]

 (2) しかし、以上のように解すれば、既判力拡張による法的安定性が害される。

   ア 前訴請求が請求権競合により他の訴訟物によっても基礎付けられるような場合、法的評価の再施によって前訴訴訟物を特定し直すことができると考える。

     また、前訴訴訟物と後訴訴訟物が係争物譲渡によって被告が変更されたにすぎず、同一係争物についての物権的請求権が問題となっている場合、紛争解決の実効性確保の観点から、前訴請求と後訴請求の請求権の同一性が擬制され、前訴既判力たる訴訟物と後訴訴訟物は同一関係にあたると考える。

   イ 本件では、前訴既判力の生じる訴訟物は、法的評価の再施によって、X1らのYに対する所有権に基づく甲土地所有権移転登記請求権に生じると評価し直すことができる。そして、後訴訴訟物はX1らのZに対する所有権に基づく甲土地所有権移転登記請求権であり、所有権に基づく甲土地所有権移転登記請求権という同一の関係が認められる以上、請求権の同一性が擬制される[6]

   ウ したがって、前訴既判力と後訴訴訟物は同一関係にあると考える。

6 後訴裁判所は、前訴既判力を判決の基礎としなければならず(積極的作用)、前訴既判力に矛盾する当事者の主張を排斥しなければならない(消極的作用)。

   本件では、Zの上記主張は、前訴既判力の生じる甲土地所有権移転登記請求権の存在と矛盾抵触する主張であるところ、かかる主張は既判力の消極的作用により遮断される。

 7 よって、Zの上記主張は既判力により遮断される[7]

以上

 

[1]共同所有権に基づく所有権移転登記請求を固有必要的共同訴訟とした最判1971年(昭和46年)10月7日民集25巻7号885頁参照。同判決については理由が付されていないものの、理由についてはLQ・550頁参照。なお、同判決自体は共同所有権に基づく請求であるのに対し、本問は売買契約に基づく請求である。しかし、請求の根拠によって固有か必要かを異にする合理的根拠はないし、本文の理由は、売買契約も基づく請求の場合にも妥当する。

[2] 任意的訴訟担当については、委任は死亡によって終了するため(民法653条1号)、もし仮に任意的訴訟担当の授権がX1からX2に対してなされていたとしても、意味がない。選定当事者(30条1項)についても、選定については書面による証明を要するとされており(規則15条後段)、本件では認められないと思われる。また、もし仮に上記解釈によって当事者適格の瑕疵がないとしても、本問の売買契約の買主たる地位は相続によってX1からAに承継されている以上、本件訴えの当事者であるX1・X2が本案判決において請求認容を得ることはできない。ここでは、当事者をX1・Aとする方策が問われていると考える方が良いと思われる。

[3] リークエ100頁参照。

[4] 高橋重点講義(下)・591頁参照。本問と同様の事案で115条1項4号類推適用により既判力の拡張を認めた裁判例として、大阪高判1971年(昭和46年)4月8日参照。

[5] かかる問題意識については、口頭弁論終結後の承継人の問題として近年活発に議論されている論点である。百選[第5版]87事件(山本克己解説)、高橋重点講義(上)・701頁注123、リークエ457頁等を参照。かかる問題意識は本問においても生じうる。

[6] 重点講義(上)・703頁、高橋概論・282頁、リークエ458頁参照。

[7] 目的物所持者や訴訟担当者は実質説的に考える以上、後訴において既判力が拡張されるZは、X1らとYとの間の売買契約締結事実の不存在を主張する固有の利益が存しないという発想があり得る。しかし、実質説を採用したとしても、本解答例のような問題が生じることは変わりない。山本弘「弁論終結後の承継人に対する既判力の拡張に関する覚書」(初出:2015年)同『民事訴訟法・倒産法の研究』(有斐閣、2019年)283頁参照。