解答例
第1 設問1(設問1及び設問2においては、破産法は、法名略。)
1 小問1
(1) 別除権者は、破産手続によらないで、その権利を行使することができる(65条1項)。ただし、担保権者がその権利を「第三者」(民法177条1項)に対して主張するための実体法上対抗要件の具備が求められている場合には、破産管財人が「第三者」に該当するため[1]、対抗要件を備えなければならない。
(2) 抵当権は、別除権にあたり(破産法2条9項)、本件抵当権を有するBは別除権者となる(2条10項)。また、Bは、本件抵当権について、抵当権設定登記を具備している。
(3) したがって、Bは、本件抵当権を行使たる担保不動産競売手続開始の申立てをすることができる。
2 小問2
(1) 別除権者は、別除権の行使によって満足を受けられない部分についてのみ破産債権の行使が認められる(不足額責任主義 108条1項)。そして、不足額を破産債権として行使しようとする別除権者は、被担保債権そのものの届出(111条1項)に加え、別除権の目的である財産及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額[2]を届け出なければならない(同条2項)。
(2) したがって、Bは、本件貸付債権6000万円から本件抵当権によって回収見込みのある4000万円を控除した、2000万円を不足額と見込まれる額として届出をすることで、不足額について行使することができる。
第2 設問2
1 ①訴訟について
(1) 破産財団に関する訴訟については、債権の調査・確定手続に至るまで中断状態が続く(44条1項)。「破産財団に関する訴訟」とは、①破産財団に属する財産に関する訴訟②財団債権に関する訴訟③破産債権に関する訴訟を含む。そして、③破産債権に関する訴訟については、当該破産債権が債権調査の手続で争いなく確定した場合は、その訴訟手続はそのまま終了し、受訴裁判所は訴訟終了宣言判決をすることとなる。
(2) まず、①訴訟に係る債権(以下、「α債権」という。)が破産債権に該当するかであるが、α債権は、CのAに対する消費貸借契約に基づく貸金債権であるところ、①破産者Aに対する請求権であり、②金銭債権という財産上の請求権であり、③執行可能性があり、④破産債権手続開始前から有する債権であるため、破産手続開始前の原因に基づくものであり、⑤財団債権にあたる事情もないため、破産債権(2条5項)に該当する。
(3) 次に、以下のとおり、α債権は確定した。
ア 債権調査手続において、破産管財人が認め、届出をした他の破産債権者から異議が出なかった場合は、破産債権が確定する(破124Ⅰ)。
イ α債権については、破産管財人Xが認め、届出をした他の破産債権者から異議が出ていない。
ウ したがって、α債権は確定した。
(4) よって、①訴訟は、破産手続との関係で、そのまま終了するという影響を受ける。
2 ②訴訟について
(1) 異議等のある破産債権を有する破産債権者は、異議者等の全員を相手方として、裁判所に破産債権査定申立てをすることができる(125条1項本文)。ただし、破産手続開始当時訴訟が係属する場合(127条参照)及び有名義債権が異議等の対象となっている場合(129条1項、2項)は、破産債権査定申立てをすることができない(125条1項但し書)。そして、異議等のある破産債権に関し破産手続開始当時訴訟が係属する場合は、破産債権者は異議者等の全員を被告として、訴訟手続の受継の申立てをしなければならない(127条1項)。
(2) まず、②訴訟に係る売掛金債権は、第2の1(2)と同様に、破産債権に該当する。また、本件では、破産手続開始当時、②訴訟が係属しているため、破産債権査定申立てをすることはできない。また、②訴訟について、破産管財人Xが異議を申し立てている。
(3) したがって、Dは、②訴訟について、Xを被告として、訴訟手続の受継の申立てをしなければならない[3]。
(4) よって、②訴訟は、破産手続との関係で、被告を変えて受継されるという影響を受ける。
第3 設問3(以下、民事再生法は、法名略。)
1 ①について
(1) すでに破産手続が開始している場合に再生手続開始申立てがされたとき、必要があると認める場合は、利害関係人の申立て又は職権によって、破産手続の中止命令が発せられる(26条1項1号)。「必要があると認められるとき」とは、事業の再建を図る見地から、他の手続を中止する必要があると認められる場合をいう[4]。
(2) 本件では、破産手続開始の申立前から破産者Aによる事業再生計画案の立案が遅れていたこと、Aには粉飾決算の疑いや不明瞭な資金流出があること等の事情があり、債権者申立てによって破産手続が開始されている。このような事情にかんがみれば、そもそも事業再建がどこまで現実的かも不透明であるところ、破産手続が先行したとしても事業価値が著しく毀損してしまうというようなことも考え難い。そうだとすれば、破産手続を中止する必要はない。
(3) したがって、Aの破産手続は、そのまま続行される。
2 ②について
(1) すでに破産手続が開始している場合に再生手続開始決定がされた場合、破産手続は中止する(39条1項)。また、再生手続が終了すると破産手続は続行されるが、再生計画認可決定が確定すると破産手続は失効する(184条本文)。ただし、再生計画認可決定確定後に再生手続が廃止(193条、194条)又は取消決定(189条1項)が確定(同条6項)したときは、職権による破産手続開始決定がされる(250条2項)。
(2) したがって、Aの破産手続も上記に従って処理される。
以上
[1] いわゆる破産管財人の第三者性である。本問において、破産管財人の第三者性が問われているとは思われないため、この程度の記載に留めている。
[2] ここで、「見込まれる」額となっているのは、実際に抵当権を行使して本件土地建物を換価してみなければ、本件貸付債権のうちどれくらいを回収できるかが分からないからである。4000万円の回収見込みであったとしても、本件土地建物が6000万円で売れて、不足額が生じない可能性もあれば、3000万円でしか売れず、3000万円が不足額になる可能性もある。
[3] この後の訴訟がどうなるか。係属していた訴訟がどのようなものであっても、破産債権の額の確定に必要な限度で請求の趣旨を変更する必要がある。本問のような給付訴訟のような場合であれば、単純な破産債権の額の確認請求に請求の趣旨を変更することになる。なお、係属していた訴訟が債務不存在確認請求訴訟等の消極的確認訴訟であった場合には、反訴が必要であるとする見解が有力である。また、従前の訴訟状態は新たな当事者に引き継がれる(訴訟状態承認義務)が、破産管財人独自の抗弁(否認権の行使等)は、許される。
[4] 全国倒産処理弁護士ネットワーク編『新注釈民事再生法[第2版]』(金融財政事情研究会、2010年)・126頁。具体的には、破産手続が先行することにより事業価値が著しく毀損してしまう場合とか、個々の債権者による強制執行手続が先行することにより債権者間の衡平が害されるおそれがある場合などが想定される、とする。