法律解釈の手筋

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【実務基礎科目編】予備試験のための有益な基本書等【厳選】

1.はじめに

ここでは、受験生がよく使用している実務基礎科目の基本書や演習書について、個人的な書評を交えながら、紹介する。

まず前提として、僕は人にはそれぞれに合った勉強法があると考えている。基本書等を読まなくても予備校教材だけで予備試験に1年程度で合格できる人もいれば、基本書等や演習書等を通じて深い理解をすることで司法試験に合格できる人もいる。

僕はどちらかといえば後者側の人間だった。予備校のような論点を紹介する教材だと、どうしても論点の文脈が分からなかったりするが、基本書では、原理原則から説き起こして各論点を説明するため、スッと入ってくる感じがあった。

これから紹介する基本書等は、そのようなタイプであった僕が紹介する基本書等になるため、予備校教材だけで十分合格できるタイプの受験生が無闇に手を出すことは、全くお勧めしない。また、仮に手を出すにしても、無闇やたらに全ての書籍を購入するのは、消化不良を起こし、弊害の方が大きくなるおそれがある。自分のキャパシティとの兼ね合いは非常に大事であることに注意してほしい。

今現在予備校教材でよく理解できていない部分がある方や成績に伸び悩んでいる方にとっては、もしかすると最良の教材になり得る。立ち読みからでも良いので、一度気になった書籍を読んでみることを勧めたい。

2.民事実務基礎

(1) 要件事実本

(ⅰ) 大島本

 

2023年3月出版。464頁。

受験生のシェアNo.1といっても過言ではないと思われる。民事実務基礎科目で求められるすべての分野(要件事実、民事事実認定、保全・執行)の知識について必要十分な知識を得ることができる。民事実務基礎科目対策のためにとりあえずまとまった1冊が欲しい、という方にはもってこいの1冊である。

(ⅱ) 新問研

2023年2月出版。176頁。

いわゆる白表紙と呼ばれる、司法修習で使用する教材の1つである。「新問研」と呼ばれる。本書は、要件事実を学ぶときに一番最初に通読すべき書籍である。内容は非常にシンプルかつ明快で、5、6時間で通読可能である。ここに記載されている要件事実については、その文言を一字一句間違えずに記載できるように暗記することが、まずは大事といえる。

なお、この1冊だけでは予備試験で問われる要件事実を網羅できないので、その分は大島本や類型別で補充していく必要がある。

(ⅲ) 手引き

2020年2月出版。150頁。

こちらも白表紙と呼ばれる、司法修習で用いる教材である。判決起案の記載方法を解説するものであるが、試験との関係でいえば、巻末の事実適示記載例集を主に参照することになる。新問研よりも幅広い要件事実の記載方法について、記載例を載せているので、こちらの記載例を暗記することが重要である。

(ⅳ) 類型別

2023年2月出版。256頁。

新問研よりも幅広く要件事実を整理した本である。ここに整理されている要件事実を一通り覚えておけば必要十分な訴訟物と要件事実を整理してくれている。これ以外の問題は、現場思考で考えていくことで問題ないように思うという意味では、この1冊があれば、要件事実は完璧といえるだろう(もっとも、最近は類型別にないような要件事実の問題も度々出題されており、より広く学びたい要請もあるかもしれない。個人的には、勉強時間や他の科目との優先順位との兼ね合いで、類型別レベルまでやっておけば十分だと考えているため、このような記載をしている。)。

もっとも、本書は、要件事実をいわゆるブロック・ダイアグラムの形で整理してくれているに過ぎないので、具体的な要件事実の記載内容については、新問題研究の記載例や、民事判決起案の手引きを参照されたい。

 

(ⅳ) 要件事実・事実認定ハンドブック

2017年9月出版。618頁。

僕が受験生時代に辞書用に使用していた参考書である。要件事実と事実認定に関して抽象的な内容も含めて深い内容を提供してくれる。ただ、内容はかなり難しい(上に、要件事実論について通説とは違う説を採用しているところもある。例えば、一部請求の訴訟物について、通説は一部請求であることを訴訟物に記載しないのに対し、本書では、「〇〇契約に基づく一部請求に係る〇〇万円の〇〇請求権」というように、一部請求であることを明示する説を採用する。)し、受験に直結するような内容ではないので、要件事実論や事実認定論に興味がない人は、手を出さない方が良いと思う。

個人的には、セクションの間にあるcofffee breakがとても面白くて好きで(例えば、ヒルベルトの無限ホテルのパラドクスから、貸借型理論の正当性を主張するなど。)、読み物として楽しんでいた。要件事実論を好きになりたい方は、ぜひ本書を一度手に取ってみることを勧める。

 

 (ⅴ) 論点精解改正民法

2020年7月出版。352頁。

民法の参考書なのでは?と思われた方もいるかもしれない。確かに、本書は民法の演習書として出版されている。しかし、内容は民法の事例をまずは要件事実論として整理して、その後要件事実との関係で必要な最低限度で論点を解説し、その後簡単な事実認定の留意点を解説するものであり、ほぼ要件事実論の演習書であるといえる。

民法と要件事実論を横断的に理解できるようになるので、民法の答案を要件事実論で整理するような書き方もマスターできるようになる。面白い角度からの民法の演習書なので、是非とも手に取ってみることを勧めたい。

(2) 事実認定

(ⅰ) 事例で考える民事事実認定

2023年2月出版。130頁。

いわゆる白表紙の1つで、司法修習でも使用する書籍である。通称「ジレカン」と呼ばれる。

民事事実認定の基本的な考え方を学ぶことができる。事実認定を考える際は、このジレカンで整理されている4類型のどれにあたるかをまずは決定し、書く類型の判断基準に従って思考を整理することが重要となる。

こちらの書籍も数時間程度で通読可能な分量となっているので、一度通読して事実認定の手法をなんとなく掴むのが有益と思われる。

 

(3) 民事執行・保全

(ⅰ) 基礎からわかる民事執行・保全

2021年9月出版。288頁。

基礎からわかる民事訴訟法でもおなじみの、和田先生による執行・保全の基本書である。比較的に薄い本で、初学者でも十分に読みやすい書籍となっている。

ただ、個人的には和田先生の文章よりは、下の平野先生の書籍の文章の方が簡潔で分かりやすい印象を受けたので、どちらかといえば、平野先生の書籍を勧めたい。

 

(ⅱ) 平野執行保全

2022年7月出版。

民事執行法・保全の基本書の決定版といえる基本書である。

僕が受験生のときは、こちらの書籍を執行・保全の書籍としてはメインで使用していた。

受験生の方からするとページ数が多く、執行・保全にここまで時間をかけるのはどうなの?と疑問を持つ方もいると思う。ただ、同書籍は、各申請書等の参考書式などを掲載している関係でページ数が増えているだけで、実質的な内容量としては、和田執行・保全とそこまで大差はないように思う。

保全の際に、どの保全手続を選択するかについて、非常に分かりやすく整理してくれているので、それだけでもこちらの書籍で確認してみると良いかもしれない。

3.刑事実務基礎科目

(1)  定石本

2016年12月出版。272頁。

1冊で、事実認定・手続問題、弁護士倫理を一通り学ぶことができる。位置づけとしては、民事実務基礎の大島本といったところであろうか。大島本と同様に、とりあえず1冊で刑事実務基礎の対策をしたい、という方には、こちらの書籍が最適である。

 

(2) プロシーディングス刑事裁判

2019年2月出版。113頁。

いわゆる白表紙と呼ばれる、司法修習で使用する教材の1つである。非常に簡潔にまとめられた書籍で、この書籍と下のプラクティス刑事裁判を1周すれば、刑事実務基礎科目で問われる手続問題については、ほぼ全てに問題なく解答可能であると思われる。

5,6時間で通読可能なので、購入してざっと読んでしまうことを勧める。

(3) プラクティス刑事裁判

2019年2月出版。79頁。

こちらも白表紙の1つで、司法修習でも使用する教材である。

公判の手続の流れを、事案をモデルに解説する書籍である。実際の訴訟資料と同じような訴訟資料が添付されており、それを見ながら読み進めることになる。

プロシーディングスが手続全般の解説をしているのに対して、プラクティスは公判のみを取り出して深く解説するものである。公判前整理手続の流れや各手続を詳しく知るにはプロシーディングスでは足りないため、やはりプラクティスも必要な1冊となってくる。

(4) 事実認定入門

2015年7月出版。200頁。

初学者に向けた刑事事実認定の決定版である。近年は事実認定に関する問題もウェイトを置いて出題される傾向が高く、定石本を用いないとすれば、事実認定はこちらの書籍で勉強するのが良いと思う。

4.法曹倫理

2013年11月出版。284頁。

僕が受験生時代に使用していた書籍である。事例形式で弁護士倫理の問題を解説してくれるもので、

ただ、試験では出題される頻度も低いし、ここまで対策する必要があるかは疑問である。弁護士倫理まで完璧にしたいという方以外は、過去問で問われている条文に関する事例を重点的に回すという利用方法が良いと思われる。

5.おわりに

かなり多くの書籍を紹介させていただいたが、冒頭にも記載したように、決して全ての書籍を購入することを勧めているわけではないことに注意してほしい。僕も受験生の頃に全てを使用していたわけではない。

僕の書評を読んでいただいた上で、今の自分にとって必要な書籍はどれか、というのをしっかり吟味していただいた上で、各書籍を読んでみてほしい。

以上