解答例
第1 問題1(以下、刑法については、法名略。)
1 Xが、Aを頭から床に思いっきり投げつけて頭部打撲を負わせ、よって、急性硬膜下血腫により死亡させた行為に傷害致死罪(205条)が成立する。
(1) Xの上記行為は、頭部打撲を負わせ、生理的機能を障害させたところ「傷害」行為にあたる。Xの上記行為によって、Aは死亡した。
(2) Aは、ゴルフクラブを強く握りしめたにすぎず、Xに対して暴行を加えていないため、「急迫不正の侵害」が存在せず、正当防衛(36条1項)は成立しない。したがって、Aの上記行為について違法性は阻却されない。
(3) もっとも、Xは、Aが強盗であると誤信したために上記行為に出ているが、Xの主観において過剰防衛が成立するにすぎず、責任故意(38条1項本文)は阻却されない。
ア 責任故意の故意責任の本質は、反規範的行為に対する道義的非難であるところ、違法性阻却事由も規範たり得る。そこで、行為者の主観を基準にして、正当防衛が成立する場合には、責任故意が阻却されると考える。
イ Xの主観を基準に正当防衛は成立しない。
(ア) 本件では、XはAが強盗でBがコンビニ店員を助ける者であると誤信しているところ、かかる主観を基準とすれば、強盗であるAがゴルフクラブをもってそれを強く握りしめたとすれば、そのままXに襲い掛かってくる可能性が高いといえ、AによるXの身体という法益への侵害が切迫しており、「急迫不正の侵害」が認められる。
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