法律解釈の手筋

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京大ロー入試 平成30年度 民法 解答例

解答例

第1 第1問 小問1[1] (以下、民法は法名略。)

 1 Cは、Aに対し譲渡担保権に基づく返還請求としての甲土地引渡請求をすることが考えられる。かかる請求が認められるためには、①被担保債権が存在し、②有効な譲渡担保権設定契約が締結されていること③②の当時Aが甲土地を所有していること④被担保債権の弁済期の経過④Aが甲土地を占有していることが必要である。

2 まず、CはBに対して200万円の貸金債権を有しており、被担保債権が存在する(①充足)。また、本件被担保債権は弁済期が経過している(④充足)。Aは甲土地を占有している(⑤充足)。

3 もっとも、CA間の甲土地を目的物とする譲渡担保権設定契約は有効か。甲土地はA所有であるためCB間の法律行為が代理契約として有効であることが必要であるが、有権代理となるためには、㋐代理行為㋑㋐に先立つ代理権授与㋒㋐に際して顕名が必要である。

(1) CB間で甲土地譲渡担保権設定契約が締結されている(㋐充足)。また、BはAの法定代理人として上記契約を締結しており、顕名もなされているといえる(㋑充足)。

(2) もっとも、上記契約は利益相反行為(826条1項)にあたり法定代理権(824条本文)の範囲外であるため、㋐に先立つ代理権授与がないのではないか。

  ア 利益相反行為にあたるかどうかは、取引安全の見地から、客観的外形的に判断すると考える[2]

  イ 本件では、BがCから資金を借りる際に、BがAの法定代理人として物的担保を提供しているところ、BとAは経済的に利害が対立する関係にある。

  ウ したがって、上記契約は利益相反行為にあたり法定代理権授与の範囲外であるところ、上記契約に先立つ代理権授与は認められない(㋑不充足)。

(3) よって、CA間の譲渡担保権設定契約は無権代理として無効である[3]

4 また、法定代理権においては、代理権授与に対する帰責性というものを本人である子に観念できない以上、表見代理(110条)の適用もない。

5 よって、Cのかかる請求は認められない。

第2 第1問 小問2

 1 Cは、Aに対し譲渡担保権に基づく返還請求としての甲土地引渡請求をすることが考えられる。

2 次に、CB間の法律行為は有権代理として有効か。

(1) 前述と同様に、Aは代理行為を行っており(㋐充足)、Cの代理人として当該代理行為を行っているため、顕名も認められる(㋒充足)。

(2) もっとも、前述と同様に、本件契約が利益相反行為として無効とならないか。前述の基準により判断する。

 本件では、被担保債権がCのDに対する貸金債権であるところ、AとBは債務者と保証人という関係にはたたず、利害が対立しない。以上にかんがみれば、外形的にみて、AとBの利益が相反するとはいえない。

 したがって、本件契約は利益相反行為にはあたらない。

 (3) よって、本件契約は有権代理として有効である。

 3 もっとも、そうだとしても代理権濫用が認められ、本件契約は無効とならないか。

(1) 親権者が子を代理してする法律行為は、利益相反行為に当たらない限り親権者の広範な裁量にゆだねられている。

そこで、親権者の行為が子の利益を無視して親権者自身又は第三者の利益を図ることのみを目的としてされるなど、親権者に子を代理する権限を与えた法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、親権者による代理権の濫用に当たらないと考える[4]。そして、代理権濫用の場合、経済的効果を本人に帰属させるという表示行為と代理人に帰属させるという内心の不一致がある点で93条類推の基礎がある。そこで、93条類推適用により、相手方が代理権濫用について悪意又は有過失の場合に限り無効となると考える。

(2)  本件では、Bは、Dが競馬資金のためにCから借り受けた200万円の担保としてA所有の甲土地に譲渡担保兼を設定している。これは、完全に子の利益を無視し、第三者たるDの利益を図る目的にでたものであり、特段の事情が存在する。

   そして、本件では、Cは、Dから本件200万円が競馬資金であることについて告げられており、Bの代理行為が子の利益を無視したものであることについて悪意であるといえる。

(3) したがって、93条類推適用が認められ、本件代理行為は無効である。

5 よって、Cのかかる請求は認められない。

第3 第2問

 1 DはCに対し、差押えに基づいて、 乙債権の支払請求をすることが考えられる。

 2 まず、Cは、保証人としてAに対し保証債務の履行として1600万円を支払い、AのBに対する売買代金債権について法定代位したところ(500条)、上記売買代金債権を自働債権として乙債権と相殺の意思表示をしたと反論することが考えられる。

 (1) 「正当な利益を有する者」とは、弁済をしなければ債権者から強制執行を受ける者をいうところ、保証人CはAに対して弁済をしなければ強制執行を受けるおそれがある。したがって、「正当な利益を有する者」にあたる。

    したがって、CはBに対して売買代金債権を取得している。

 (2) また、BはCに対して乙債権を有しており、債権債務がBC間で相互対立している。そして両債権とも弁済期が到来している。したがって、相殺(505条1項)の要件を充足する。

 (3) これに対して、Dは、Cの上記法定代位よりも、自己の差押えにっ基づく送達が先になされている以上、Cは上記相殺をもって対抗することができない(511条)と最判論することが考えられる。

    本件では、Dの乙債権の差押えに基づく送達が2017年4月5日の午前9時になされているのに対し、Cの法定代位による上記自働債権取得は同月5日午後2時であるところ、差押えが先行する。

    したがって、Dの再反論が認められる。

 3 次に、Cは、Bに対する事前求償権(460条2号)を自働債権として、乙債権と相殺する旨の意思表示をしたと反論することが考えられる。

 (1) Cは、AのBに対する1600万円の売買代金債権をBの委託を受けて保証している。また、上記代金債権は弁済期を経過している(同条2号)。

    したがって、CはBに対して事前求償権を有する。

 (2)  また、BはCに対して乙債権を有しており、債権債務がBC間で相互対立している。そして両債権とも弁済期が到来している。したがって、相殺(505条1項)の要件を充足する。

 (3) これに対して、Dは前述と同様の再反論をすることが考えられる。

511条の反対解釈により、差押えよりも先に自働債権を取得していた場合、相殺権者は差押債権者に対抗することができる。

本件では、2017年4月5日の差押えの送達よりも前の同年3月31日にCはBに対し事前求償権を取得している。

したがって、相殺権者CはDに対し相殺をもって対抗することができる。

よって、Dのかかる再反論は認められない。

 (4) そうだとしても、Dは、CがBに対して事後の通知を怠ったためにBがAに対し上記代金債務を弁済しているところ、Bの弁済が有効とみなされ(463条1項、443条2項)、CのBに対する事前求償権は消滅したため相殺は認められないと再反論することが考えられる。

    CはBに対し事後の「通知」を怠っている。また、債務者Bは「善意」で弁済という「免責を得るための行為」をしている。

    したがって、BのAに対する弁済は有効である。

    よって、Dのかかる再反論は認められる。

 4 以上より、Dのかかる請求は認められる。

以上

 

[1] 同様の問題として早稲田ロー入試2019年度民法問題1小問1参照。また、類似の問題として平成14年度旧司法試験第2問参照。

[2] 最判昭和37年10月2日参照。

[3] 前掲昭和37年判決は「、前記債務の内同女自身の負担部分につき上告人等の前記持分の上に抵当権を設定したことは、仮に借受金を上告人等の利益となる用途に充当する意図であつたとしても、同法条所定の利益相反する行為に当るから、上告人等に対しては無効であるとなさざるを得ない。」としており、親権者の意図は考慮されない。

[4] 最判平成4年12月10日参照。