解答例
第1 設問1
1 令和5年8月21日から9月20日までにかかる未払給料債権について
(1) 未払給料債権の法的性質
破産手続開始前3か月間の破産者の使用人の給料の請求権は財団債権となる(破149条1項、2条7項)。
本件では、令和5年11月21日にAの破産手続開始決定がなされているところ、破産手続開始の3か月前である令和5年8月21日から、Bが解雇された令和5年9月20日までにおいて発生した給料債権のうち、未払である10万円の給料債権については財団債権となる。
(2) 配当手続によらない弁済の根拠
財団債権については、破産手続によらずに、随時弁済をすることができる(破2条7項)。また、財団債権の総額を弁済するのに足りないことが明らかな場合を除いて、破産債権に先立って弁済が可能である(破151条、152条1項)。
本件では、一定程度の破産財団を形成することができ、Bへの未払給料を弁済しても他の優先的な債権者を害することはないと判断しているところ、上記の財団債権たる未払の給料債権については、Bは、配当手続によらずに弁済をすることができる。
2 令和4年12月20日から令和5年8月20日までの未払給料債権について
(1) 未給料債権の法的性質
上記1以外の破産手続開始前に発生した給料債権は、破産手続開始前の雇用契約という破産手続開始前の原因に基づいて発生する、破産者に対する財産上の請求権であり、執行可能であり、かつ、財団債権に該当するものではないことから破産債権(破2Ⅴ)。そして、給料債権は、一般の先取特権を有するため(民法306条2号、308条)、優先的破産債権として取り扱われる(98条1項)。
本件では、令和4年12月20日から令和5年8月20日までの一部の未払給料債権の総額80万円分は、破産手続開始前の給料債権として優先的破産債権となる。
(2) 配当手続によらない弁済の根拠
優先的破産債権たる給料債権については、