第1問
第1 設問1
1 第1に、Dは、役員責任の査定の裁判の申立て(178条1項)をすることが考えられる。
(1) Bは、A社がすでに債務超過の状態にあったにもかかわらず、独断で弟に対する貸付行為をしている。経営状態が悪化しているような状態においては、適切に経営改善のための対策の立案・実行など必要な措置を講じる義務を負っているところ、上記貸付行為は、かかる義務に反する行為である。したがって、Bが弟に貸し付けた行為は、任務懈怠として、会社法423条1項に基づく損害賠償責任を負う行為にあたる。
(2) 178条1項の趣旨は、簡易・迅速な手続による役員の責任追及を可能にする点にあるところ、「必要があると認める」とは、損害賠償請求についての債務名義を作成する必要をいう。本件では、判明した事実により、Bの任務懈怠責任が明らかとなっているところ、この点について、債務名義を作成して、迅速に財産を取得する必要があるといえる。したがって、「必要があると認めるとき」にあたる。
(3) よって、Dは、上記の事実を疎明し(178条3項)、上記の申立てをすることができる。
2 第2に、Dは、第1の役員責任の追及を可能にするため、役員の財産に対する「保全処分の申立て(177条1項)をすることが考えられる。
(1) 同条の趣旨は、役員の責任追及の実効性確保にあるところ、「必要があると認める」とは、財産保全をする必要性をいう。本件では、A社は自ら破産手続開始の申立てをすることなく、事業を停止したままにしているところ、Bが自らの財産をそのまま隠匿や散逸させる可能性がある。したがって、Bの財産を保全する必要性が認められる。
(2) よって、Dは、役員の財産に対する保全処分の申立てをすることができる。
第2 設問2
1 第1に、Dは、BやA社の従業員に対し、破産に関する説明を求め、又は、破産財団に関する帳簿、書類その他の物権を検査することができる(83条1項前段、40条1項3号)。B及びA社の従業員は、これらの説明請求に対し、説明義務を負う(40条1項柱書)。
2 第2に、