法律解釈の手筋

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【Aさん】東大ロー入試 平成31年度 民事系 再現答案【59.5点】

※こちらは、平成31年度の東大ロー入試を受験した私の後輩の再現答案です。今後東大ローを受験される方の参考になれば幸いです。そして、再現答案を寄稿してくれた後輩には感謝しております。この場をお借りしてお礼申し上げます。以下の文章は後輩からいただいた文章を、手を加えず体裁のみを整えて記載しております。

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1.再現答案

(59.5点)

第一 問(1)

1 P社はQ社が実質的にR社に無断転貸をしたとして、本件賃貸借契約を解除することができないか(民法612条2項)。

(1) この点、無断転貸があれば原則として無催告解除が可能である。しかし賃貸借契約は当事者の個人的信頼関係に基づく継続的契約であり、賃借人保護の観点から無制限の解除は認めるべきでない。そこで、無断転貸があっても当事者間の信頼関係が破壊されたといえるような場合でなければ解除することができないと解する。

(2) 本件をみると、確かに形式的に見ればR社がQ社の発行済株式全部について譲渡を受けているだけであり、本件賃貸借契約の当事者はP社とQ社のままであるから、無断転貸があるとはいえず612条2項を直接適用することはできない。

しかし、完全親会社たるR社が本件不動産を利用している状況があり、Q社がR社に無断転貸した場合と同様の事態が生じている。そのため実質的な無断転貸があったといえる。

そして、Q社がP社取締役Bの一人会社であって、P社とQ社の本件共同事業の一環として本件賃貸借契約行われており、P社はBとの間で本件保証契約を結んでいるという背景から、本件賃貸借契約において当事者間では共同事業目的達成のためBが株主となるQ社を借主として予定していたといえる。

そうだとすれば、本件賃貸借契約において、本件共同事業が頓挫した後、競合他社であるR社がQ社の完全親会社となって本件不動産を利用し利益をあげることにより、P社とQ社間の信頼関係は破壊されたといえる。

(3) したがって、P社は本件賃貸借契約を解除することができる(612条2項類推適用)。

第二 問(2)ア

1 本件訴えは、P社とP社取締役Bを当事者とするものであるから、株式会社と取締役との間の訴えである。P社は監査役会設置会社(会社法2条10号)であるから、取締役会設置会社であり(同法327条1項2号)、本件訴えにおける会社の代表者を取締役会で定めることができる(同法364条)。

2 よって本件訴えにおいてAは会社の代表者となることができるため、本件訴えは適法である。

第三 問(2)イ

1 Fは単独で本件訴えを提起することができるか。監査役会の決定に反する監査役の行為の適法性が問題となる。

(1) この点監査役の監査の範囲は円滑な経営のため、適法性監査のみであり妥当性監査は認められない。また、監査役会の判断に反する行為を認めると、統一的かつ効果的な監査の実行という監査役会の目的が達成できなくなる。

よって、監査役は監査役会の決定に反して訴えて提起することはできないと解する。

(2) 本件において、監査役が本件訴えを提起しないという取締役会の決定を監査役会が監査役の過半数(同法393条1項)をもって承認している以上、かかる承認に反して本件訴えを提起することは許されない。

2 したがって、本件訴えは違法であり、裁判所は却下すべきである。

第四 問(3)

1 P社株主は本件訴えにおいて会社側に補助参加(民事訴訟法(以下「民訴法」)42条)することができないか、補助参加の利益の有無が問題となる。

(1) 補助参加は紛争の一回的解決を図ることを趣旨とする。まず、第三者は理由中の判断に影響を受けることが多いから「訴訟の結果」とは判決の主文だけでなく理由中の判断も含むと解する。そして、「利害関係」とは単なる事実上の利害関係ではなく法律上の利害関係をいい、その法律上の利害関係に影響を及ぼすおそれがあれば、補助参加の利益が認められると解する。

(2) 本件をみると、確かに本件訴えにおいてP社が敗訴すればP社は賃料回収が困難となる可能性があり、会社からの配当等を受けられなくなる可能性があるが、これらは経済的・事実的利害関係にすぎない。そして、株主は株主代表訴訟(会社法847条1項)などの手段をとることもできる。

よって、P社株主の法律上の利害関係に影響を及ぼすおそれはない。

(3) したがって、P社株主は本件訴えに参加することはできない。

以上

 

2.受験雑感

問1

実質的な無断転貸としたが、問題文の事情をどう使うかで悩み、信頼関係の破壊の事情として評価するというように、正解筋の構成がわからず、かなり散らかった答案になった。初っ端からこんな感じで、さらに後に設問が2つ残っていたため、時間配分を気にしながら解いた。

問2

試験時間中頭が真っ白というか、「これ何書けばいいのか・・・」と呟きかけるレベルで意味不明な問題だった。とりあえず六法を10分くらい引いて、完答は無理と思い書き出した。監査役会設置会社の場合だけ条文がないため、364条(取締役会設置)か386条(監査役設置)で迷い、364条の適用があるとして書いたため、確実に0点だとおもった。(監査役会関連の390条~395条で386条準用する的な条文があれば・・冷静に364条を適用したのは今でもアホだなと思う。完全にドツボにはまった。)

そもそも監査役に関する知識に穴があった。(イ)では唯一知っている監査の範囲の論点をもとに現場で考えたが、正反対の答えを書いてしまった。独任制とかから展開できればよかったが、そこまで冷静に回答できなかった。

問3

時間が足りず、思いついた補助参加の論証とあてはめを雑に書くことしかできなかった。会社849条の存在に気づく時間もなかった。会社側に株主が参加するパターンについて今まで勉強したことなかったので苦労した。

 

全体的に難しく、最も手ごたえがなくその感触通り唯一の50点代であった。ただ、どれだけの人が完答できたのか・・というレベル(特に設問2)。分量は裏面の半分くらいまで。

いわゆる典型的な問題はなく、基本知識を前提とした発展的な問題に対応できる力が必要だと感じた。東大の民事は本当に難しいと感じさせる問題であった。

逆にこれだけ間違った内容や無茶苦茶な答えを書いても、60点くらいはつくらしい