法律解釈の手筋

再現答案、参考答案、法律の解釈etc…徒然とUPしていくブログ… ※コメントはTwitterまで!

最速で司法試験・予備試験に合格するための基本書等

はじめに

こういう記事を書くのは、実は初めてかもしれない。

今までも僕のおすすめする基本書等をまとめてほしいという要望はそれなりにあったのであるが、情報商材に近いような気がしてなんとなく気が進まなかったし、他の受験指導者のブログやnoteでも十分参考になると思っていたので、わざわざ僕がこのような記事を書く必要性を見出していなかった。

ただ、最近は、Twitter等のSNSで誰でも発信する場が整備され、先に司法試験に合格した先輩方が活発に受験勉強のノウハウ等を発信するようになった(Twitter自体は既に10年以上前から多くのユーザーに利用されているわけであるが、受験情報の発信量の増大に関していえば、ここ近年は特にその傾向が顕著であるように感じる。デジタルネイティブ世代が受験生の世代となり、当然のようにSNSを利用していることに起因しているように思われる)。もちろんそれ自体は全く悪くないことなのではあるが、情報量の過多によって、情報の取捨選択に時間がかかるようになり、むしろ受験生にとってメリットといえるのかどうか不透明な状況も生じ始めているのではないかと、感じている。また、増えすぎた情報の中には、いかにもステマや人的政治的関係が含まれたような内容が多分に入り込んだ情報も散見されるようになり、強い言葉を借りていえば、受験生を騙すかのような発信も多くなってきているように感じる。

もちろん、合格された発信者の経験に基づくものである以上、一定の偏りが出てきてしまうのは仕方ないし、僕の記事が完全に客観的で、完全な答えを提示したものであるという気は全くない。だけど、当ブログを開設して既に3年以上が経過するが、当ブログの理念は当初より変わらず「法律の魅力に気づいてもらうことで、楽しく最短で司法試験に合格してもらう」というものであり、僕はその観点から一貫して当ブログやTwitter等を通して発信し続けている。当然、これから紹介する基本書等も誰かから「宣伝してくれ」と頼まれたようなものではない。

本記事では、タイトルにあるように最速での司法試験予備試験の合格を目的として、その目的のために最も有用な書籍をまとめた。できる限り自身の趣味趣向は排除し、最速での試験合格という観点に徹して厳選した(つもりである)。そのため、僕がTwitterでよく勧めている書籍が以下のラインナップに登場していないという状況が生じているが、それは上記の理由によるものである。例えば、民訴の重点講義は、民訴の魅力を感じるにはとても有用な書籍であるためTwitterではよく推奨しているが、同書を読んでいては最速での試験合格という夢はおそらくかなわなくなる。そのような考慮から、本記事のラインナップからは外れている。ここからも、本記事の目的や方向性を理解してもらえるのではないかと思う。

なお、独学を前提にしているため、入門書からあげさせていただいているが、 予備校で既に基礎知識を理解している方は、基本書以下を参考にしていただけると良いのではないかと思う。予備校テキストと別に基本書をどこまで購入する意味があるかは人によって評価が分かれるが、僕の意見としては、各科目1冊くらいは持っておいてよいのではないかと、思っている。予備校本が悪いというわけではないが、やはり予備校テキストには間違いが含まれていることも往々にしてあるため、信用のおける基本書を1冊手元に置いておくことは有用と思われるからである。そこまで強い推奨でもないため、金銭的に余裕がない方は無理をして基本書は買う必要はないと思う。ただ、その場合でも、最低限「その他」で勧めている書籍はぜひ購入されたい。予備校本では手の届かないかゆいところ(そして、司法試験・予備試験の合格のため)の理解に非常に役立つと断言できる書籍を勧めているので、信じて手に取ってみてほしい。

 

本編

前置きがやや長くなってしまったが、さっそく本題へ入りたいと思う。

タイトルにもあるように、本記事で紹介する基本書等は、基本的に予備試験・司法試験に最速で合格するという観点から厳選したものである。これだけでは足りないのではないか、もっと理解しないと厳しいのではないか、という意見もあると思う。また、以下を一通りみれば分かると思うが、特定の科目以外では判例集すら勧めていない。判例の射程を意識することは確かに重要なことではあるが、実際の合格ラインとの関係でいえば、判例集を読んで判例の内容を理解しなくとも、基本書や演習書の内容から判例の概要さえ理解すれば足りると考えている。このように、合格の必要十分条件を突き詰めて考えていった結果、以下の書籍にまで限定していると理解していただけると幸いである。

憲法

憲法は苦手意識を持っている受験生が多い科目であり、時間をかけることが得策とはいえない科目の1つである。特に、基本書を読み込めば論文の答案が書ける類のものではなく、答案作成では、別の訓練が必要になってくる。その意味でも、基本書の使い方としては、全体の概観を抑えた後は問題演習の過程で繰り返し読み返していく、という使い方がメインになってくると思われる。

入門書

 268頁。最初の紹介から、僕のことをよく知る人間からは意外に思われるかもしれない。僕自身が予備校を利用していたが、途中から予備校を批判して独学に切り替えた者だからである。予備校の指導方法にデメリットが多いことはもちろん否定しないが、それでも、伊藤真先生の憲法講義に関していえば、初学者に分かりやすいという観点からすればやはり随一のものと思う。

初学者としては、まずこの1冊からと思われる。

 基本書

484頁&488頁。いわゆる「新四人組」と呼ばれる基本書である(この呼び名は、元々「四人組」と呼ばれる憲法の基本書から由来している。)。憲法Ⅱが僕が受験勉強を終えた後に出版され、ついに2冊が揃った。有力な学者の共著であり、 いわゆる三段階審査論の立場から体系を構築している。分かりやすさ、内容の高度さ共に、現時点において、憲法は本書が基本書の決定版だと思う。

判例集

680頁&428頁。憲法に関しては、どうしても判例集の存在が欠かせないと思われる。論文試験との関係では、判例の射程が検討できるほどにならなくても問題ないと考えてはいるものの、憲法では、短答でも判例知識が深く問われる 以上、判例集を持っておくことは有用である。百選でも良いと思われるが、より長文で判旨を引用し、かつ詳細な解説を加えている本判例集が、最も独学に向いていると考える。

演習書

289頁。改訂がされず少し古くなってしまっているが、やはり色あせない名著であると思うので、演習書は本書を挙げさせていただく。判例の事案への適用の仕方を実際に解説してくれている書籍である。これを読めば、「この判例は、こんな事案にも使えるのか」と目から鱗の連続である。最近は三者間形式(原告、被告、裁判官の三者の立場からそれぞれ論じさせる問題形式)から法律意見書形式に問題形式が離れてしまったため、本書は、問題形式としては古くなってしまっているものの、1つの事案における対立した判例の使い方を学ぶことは、判例の射程の訓練としても有益であり、問題形式の古さは難点にならないと考えている。 基本書から実際に答案への落とし込みを学ぶための演習書として、本書は最適な1冊である。

 その他

114頁。僕が受験勉強をほぼ終えたタイミングで出版された書籍である。 先にも述べたとおり、憲法は基本書を読んでも答案が書けるようになる科目ではない。事例問題と基本書の解説に乖離があるため、憲法の答案を書くには、答案への落とし込み方を知らないと話にならない。本書は、その溝を埋めるための1冊である。まずは本書を読みつつ、上で挙げた判例で考える憲法を解くのが良いと思う。なお、いわゆる小山作法も挙げるか非常に悩んだが、小山作法は難解で読み解くのに時間がかかる可能性があるため、本記事では、差し当たり本書のみを挙げさせてただく。

判例の射程までを論じなくても合格できるとはいったものの、本書については、判例の使い方をとても分かりやすくまとめてくれており非常に有用であるため、 紹介させていただきたい。コンセプトは判例から考える憲法と同じように、いかなる場合にいかなる判例が適用されるかを説明したものである。演習書ではないため、実際の問題を解くのは判例から考える憲法を用いつつ、本書を補助的に用いて、より事案への判例の適用の仕方を学んでいくと良いと思う。

 

行政法

行政法は、論文では頻出の出題分野が限定されており(処分性、原告適格)、一定の処理手順を抑えることが重要な科目となっている。基本書を一通り読んだあとは、問題演習を通じて処分性・原告適格という二大重要論点についての処理手順を確立させ、行政法総論の理解を深めつつ、実体法違反の論じ方を学んでいくことが大事である。

入門書 

304頁。どの科目にもいえるが、入門書で迷った場合にはストゥディアを選ぶと良いと思う。薄いながらも、内容がしっかりしており、最初の1冊として外れがないからである。行政法では、ストゥディア以外にお勧めできる入門書が特に思い浮かばなかったので、ストゥディアを挙げさせていただく。

基本書

506頁&550頁。大橋先生の行政法の基本書。受験生のシェアはかなり低いようであるが、正直行政法の基本書の中では、随一の分かりやすさだと思う。判例をモデルにした簡単な事例を元にした解説や、Qに対する解説の形式を用いており、問題演習につながる記載方法となっているのが、司法試験対策としての基本書として相性が良い。基本書の段階から問題を意識していくことで効率的な勉強になると思う。 

 演習書

560頁。行政法の演習書の決定版。基礎演習行政法を利用することも考えられるが、より行政法の理解を深めるという点で、こちらの方に分があるのではないか。1部だけでも読めば、基本書では得られない新たな視点を得ることができる。1部とミニ講義だけでも良いので、ぜひ目を通していただきたい。

 

民法

基本的に条文解釈の論点が多いため、ひたすら三段論法を意識して解いていけば問題のない科目である。基本書で記載されている論点がそのまま問題としても問われるため、上記の公法に比べて、基本書と事例問題の乖離が少ない科目である。ネックはその範囲の広さであるため、論文と短答でメリハリをつけて勉強していくことが必要である。

入門書

752頁。民法の全体像をつかむための1冊である。入門書としては道垣内教授が執筆したものもあり、正直どちらでも問題ないと思う。個人的には潮見先生の文章の方がより分かりやすく初学者には受け入れやすいと思うので、こちらを紹介させていただいた。

 基本書

488頁&348頁。正直、民法の総則と物権に関しては、この2冊が殿堂入りだと思う。補論や発展学習まで読むとかなり骨が折れるので、まずは本文だけを通読して、問題演習で悩んだら、補論や発展学習まで目を通す、というのが良いと思う。

423頁。おそらく担保物権法については、道垣内先生、安永先生、松井先生の3冊で受験生のシェアとしては9割以上なのではないかと思っているが、ここはあえて松岡先生の書籍を強く勧めたい。圧倒的な分かりやすさと過不足ない記述は、他の追随を許さないと思う。受験生が苦手にしがちな担保物権法であるが、頻出分野でもあるので、ぜひ本書を通じて得意分野にしていただきたい。

784頁。債権総論を制す者は、民法を制す。債権総論が民法の最も重要な分野であるが、実は原理面が色濃く表れ、難解な概念を多く必要とする分野でもある。中田先生の書籍は、その難解な概念を出来る限り分かりやすく解説した書籍となっている。読み込む価値のある1冊である。

 390頁&256頁。いわゆる潮見イエロー。契約法は実務に出てからは非常に重要な分野であるが、試験との関係では潮見イエロー程度の理解があれば十分対応できる。不法行為法についても、試験との関係ではそこまで複雑な出題をされることはないと思うので、潮見イエローの内容を頭に叩き込んでおけば、ひとまず十分である。

演習書

432頁&416頁&民法は、範囲が膨大であるため、まずは網羅的に問題を把握しておくことが必要である。そのため、ロープラがやはり有用なのではないかと思う。なお、Ⅲの親族・相続に関しては重要性が劣る(うえに、相続法改正に未対応である)ため、購入しなくても問題ないと思われる。

もっとも、ロープラクティスはどちらかというと基本的な問題を抑えるための演習書であるため、今後重点的に出題がされるであろう債権法改正については、もう少し踏み込んだ理解が必要になると思う。したがって、以下の書籍も勧めたい。

342頁。債権法改正が絡む分野についての事例問題をまとめた演習書である。磯村先生独自の問題意識や高度な議論については、本文とは区別して記載されており、どこまでを理解しておけば良いかが明確になっているのが利点である。本書はぜひ抑えておきたい。

 

商法

民法と同様に、条文の解釈問題が多い。後述するように基本的な論点をいかに落とさずにいけるかが勝負となるため、基本を特に徹底したい科目である。なお、手形小切手法と商法総則・商行為法については、受験戦略上捨てることも視野に入れてほしい。

入門書

224頁。会社法は、社会人経験のある方ならともかく、学生だと株式会社の制度を理解していない方がほとんどと思われる。 したがって、本書のようなもので、株式会社の仕組みを一通り学ぶのが有用と考える。もし株式会社についておおよその理解をしているという場合には、以下の基本書から読み進めていただいて問題ない。

基本書

656頁。いわゆる紅白本。田中会社法と非常に迷ったが、田中会社法は司法試験との関係では余事記載も多いように思われるので、必要十分の記載でかつ断トツで分かりやすい本書を推薦する。

235頁。手形小切手法の通説の基本書としては、本書が決定版である。念のため挙げているが、はっきり言って手形小切手法は今後論文試験での出題可能性はかなり低い(上に、もし出題されたとしても受験生でも対策している者が少ないため、ほぼ差が出ないことが予想される)ため、基本書すら不要と思う。不安症の方は購入して良いと思うが、司法試験の勉強では、膨大な出題範囲から何をやるかより何を捨てるかを常に意識していただきたい。その意味で誤解をおそれずにいえば、手形小切手法は最も捨てやすい分野である。

186頁。商法総則・商工違法に関しても論文試験との関係では出題可能性が低いものの、民法の特則であり、その比較で勉強しやすい分野ではあるため、短答対策のために持っておいて損はないと思われる。近藤先生の書籍と迷ったが、個人的には弥永先生の文章の方が初学者には分かりやすいと思うので、本書を挙げさせていただく。

演習書 

388頁。会社法に関しては、予備試験も司法試験も、基本的な問題と応用的な問題がバランスよく出題される。したがって、勝負は基本的な問題をいかに落とさないかにかかる。ロープラの強みはその網羅性であり、基本的な問題を漏れなく収録している。ひとまずロープラを解いておけば、他の受験生が知っていて自分だけが知らない問題が出題されるという可能性はなくなる。会社法はとにかく基本問題を押さえたい。

 

民事訴訟法

全体として、苦手な受験生が多いため、特に好きでない場合には力を入れる必要のない科目である。三段論法にしたがって解けない問題もよく出題されるため、答案の型を意識しづらい点でも、対策しづらい。基本の理解を整えた後は、原理・原則を中心に縦の理解(深い理解)を広げていくことが重要である。

入門書

412頁。少し古い書籍とはなるが、入門書の分かりやすさとしては、やはり中野先生だと思われる。民訴は、特に新たな議論が多く集積されているわけでもないので、入門書レベルであれば、古さに関しては大きなデメリットではないと考える。

基本書  
民事訴訟法

民事訴訟法

Amazon

784頁。いわゆる瀬木民訴。必要十分な内容で、かつ、難解な民訴法の概念を分かりやすく記述してくれる基本書で本書の右にでる書籍はない。リークエも本書に負けず劣らず素晴らしい書籍ではあるが、少しボリュームがあることと、リークエを通読するのに時間をかけるくらいなら、基本書としては瀬木民訴を利用し、後述の読解民訴の理解に時間をかけるべきであること等の理由から、瀬木民訴を推薦する。

演習書

248頁。いわゆるロジカル民訴。民事訴訟法の演習書は種類が多く、逆に悩ましいところではあるが、独学であることも考慮すれば、解答例がついている点で他の演習書よりも本書にやや分がある。特に、問題のレベルも基礎的な問題に終始しており、かつ、出題範囲にも外れがない。やや問題数が少ないようにも思われるが、正直民訴では未知の問題の出題が多いので、全ての問題に対応しようとすることはかえって有害である。横の理解(網羅性)の広げ方としては本書程度で十分であり、あとは後述の読解民訴で縦の理解(深い理解)を広げていくことが重要である。 

その他

350頁。いわゆる読解民訴。予備試験・司法試験共に、民訴の問題は独特の出題がなされることが少なくなく、実質的には概念の理解を直接問われるような問題もある。民訴に関しては、何より相対的に沈まないことが重要になってくるのであるが、沈まないためには誤った理解を露呈しないことが求められる。読解民訴は、多くの受験生が陥っている誤解を紐解くのに役立つ一冊となっている。やや難点なのは、勅使川原先生の文章が若干分かりづらいことであるが、何回も読むことで徐々に理解を深められるとポジティブに捉えて、熟読をされたい。

 

刑法

得意な受験生が多い科目である。処理手順が完全に確立されているため、論文との関係では、しっかりと答案の型を身に着けることが重要である。共犯は難解な分野であるが頻出分野でもあるため、しっかりと理解していきたい。論文試験では、あてはめが重要になってくることが多いため、他の科目に比してより問題演習を多く積みたい科目である。

入門書

288頁&282頁。井田先生の著作はどれも傑作であるが、実はこの入門書が最も名著なのではないかと感じさせる。入門書とされているが、(もちろん初学者が理解できるくらい分かりやすいことを前提に、その上で)一度刑法を学んだ者が再度読んでも新たな発見が得られる内容となっており、その点でも本書が非常に優れていることが分かる。刑法の事例問題は内容が分かりやすいが(甲が乙をナイフで刺した、など、一般人でも事案を想像できる)、理論的な部分を原理面まで理解しようとすると、闇に堕ちる科目である。本書は、初学者が理解に苦労する難解な分野を必要最低限の記載でとどめつつ、かつ、試験に合格するために必要な知識をつけることができる最良の1冊である。

 基本書

548頁。いわゆる山口青本。総論各論を1冊でここまでコンパクトに仕上げているのは、さすがの一言に尽きる。定義、保護法益、学説等が完結にまとめられており、短答論文共に有用な1冊である。本書だけは必ず熟読されたい。本書以外に総論各論で分冊されている書籍(例えば、基本刑法など。)を紹介するか迷ったが、後述の橋爪連載と本書で十分であると判断した。

演習書 

 291頁。網羅性・問題の難易度等総合的にみて刑法の演習書の決定版であることは疑いがないと思う。ただ、個人的には、刑法は過去問だけで十分乗り切れると思うため、本書を使用する必要性はそこまで高くないのではないかと思っている。実際、僕は司法試験を受験するまで本書の問題を解いたことはなかった。司法試験と予備試験過去問で主要論点はほぼ網羅されているため、以下で紹介するいわゆる橋爪連載を片手に過去問を解いていけば、ひとまず十分なのではないだろうか。学生等で時間に余裕がある場合には、本書で演習を積むことをおすすめしたい。

その他

470頁。いわゆる橋爪連載(書籍化されたので、今後は「悩みどころ」と称されるようになる気がする)。上記のとおり、山口青本まで読んだ後は過去問演習をどんどん行っていただきたいのであるが、そのとき、さらに深い理解が求められたときに必要となる1冊である。橋爪先生は非常に文章能力が高く、本書も明快な内容で論点を深堀りしていくため、すっと内容が入ると思う。事例を念頭に置きつつ解説が進んでいくため、事例演習にすぐに役立つ内容になっている。難点なのは、刑法各論がまだ書籍化されていないこと。「刑法各論の悩みどころ」については、図書館や図書室で法学教室の連載を全てコピーすることを強く勧めたい。

 

刑事訴訟法

こちらも刑法と同様に得意科目とする受験生が多い。出題範囲が多くないため、より各論点の理解を深めていきたい。また、論点も限られているため、論証パターンをしっかり練り込んで準備しておき、本番ではあてはめに時間を回せるようにしたい。

入門書 
刑事訴訟法入門

刑事訴訟法入門

Amazon

362頁。いわゆる緑本。刑事訴訟法入門書の定番中の定番。刑事訴訟法の全体像を理解するにはこの1冊が欠かせない。

 基本書

392頁&432頁。いわゆる基本刑訴。酒巻刑訴と非常に迷ったが、分かりやすさ、手続面の理解のしやすさという点で、基本刑訴に分があると判断した。実は、この2冊を買えば、入門書として紹介した緑本も要らないのではないかと思わせるくらいには、分かりやすく、かつ、必要十分な内容がまとめられている。今後、受験生的には、本書が決定的な基本書になると予想する。

演習書

特になし。

刑事訴訟法に関しては、他の科目にも比して、過去問でほぼ全ての主要論点が出題されたといっても過言でない状況である。したがって、過去問を全て解いて理解しておけば、余裕で合格ラインに達する。刑訴の過去問は司法試験・予備試験共に良問揃いだし、基本的な問題も多く出題されているので、演習書を挙げる必要性を見いだせなかった。

過去問を徹底することを勧めたい。

 その他

488頁。いわゆる古江本。本書は 一応演習書ではあるものの、どちらかといえば理解を確かめるための書籍であるため、その他として紹介させていただく。予備校生でも本書の存在を認知している者は相当数いるのではないかと思われる。刑訴の重要論点について教員と学生2人の対話形式で解説が繰り広げられるという形式。難解な部分も多いため受験的に不要論も根強いところではあるが、刑訴を理解するにはやはり本書は外せないと思う。

 

民事実務基礎

570頁。いわゆる大島本。民事実務基礎を学ぶための決定的な1冊。もちろん新問研・類型別という手もあるわけだが、初めて要件事実を学ぶ者にとっては、やはり大島本が最も有用であることは否定できないと思われる。これを片手に予備試験の過去問を全て解けば、十分合格レベルに到達できる。

 

刑事実務基礎

272頁。 刑事実務基礎の決定本は、やはりこの1冊になるのではないだろうか。いわゆる白表紙(プロシーディングス刑事裁判、プラクティス刑事裁判)という手もあるが、事実認定が手薄になってしまうし、白表紙は薄すぎるためどうしても行間を読まないといけない場面が出てきてしまう。刑事実務基礎も、白表紙よりも本書が有用であることは否定できないと思われる。

 

おわりに

以上で紹介を終わりたいと思う。

本記事の前提として、最後に2つだけ注意事項を記載しておきたい。

まず1つ目として、答案の書き方だけは予備校を利用した方が効率的である、ということである。

答案の書き方について解説した書籍もないではないし、それに加えて、Twitter、ブログ、note等で合格者の方が発信されている情報をひたすら調べることで、答案の書き方を学ぶことは十分可能であると思う。しかし、それはかなり時間のかかる作業であるというデメリットがある。また、答案作成術は予備校のノウハウが最も集積されている分野であり、答案の書き方に関しては、予備校の講座を取っておくことが間違いないということがあげられる。

そのため、一応答案の書き方を解説したアガルートの講座を以下に紹介しておく。

2021司法試験| 論文答案の「書き方」

サンプル講義が掲載されているので、そちらを視聴してみてもし役に立ちそうと考えるのであれば、受講を勧めたい。

また、論証パターン集はやはり持っておいて損がないと思う。まとめノートとして使えるし、論証パターンの有用性は否定できないからである。

正直論証パターン集はどれでも良いと思うが、ここでは一番王道の趣旨・規範ハンドブックを挙げておく。

 

2つ目として、上では(刑事訴訟法を除いて)演習書を紹介しているが、何よりもまずは過去問を解いてほしい、ということである。

過去問を解くことは、①最終的に試験で解くこととなる問題のレベルがどのようなものかを把握すること②実際に解いてみて、合格レベルがどのくらいかを体感すること③同じ問題がでたときに書き負けないようにすること、といういくつかの目的があり、その目的が達せられる程度の年度分くらいは過去問を解いてみることをお勧めする。また、最近はすでに10年以上の過去問が司法試験と予備試験でそれぞれ集積されているので、出題範囲としてもかなりの分野を網羅し始めているので、(刑事訴訟法以外でも)演習書をあえて解かなくても過去問だけで勝負できるようにはなってきていると思う。

特に最近は、

 この実践演習シリーズで予備試験の解説をしてくれていたり、

このように各科目ごとに司法試験の解説をしてくれている書籍も数多く登場しているため、過去問演習に困らない環境は相当程度整ってきている。ぜひこれらも活用して、過去問演習を最優先で行うことを勧める。

 

非常に長くなってしまったが、本記事がこれから司法試験・予備試験を目指す受験生や、既に司法試験の勉強を開始しているが方向性で悩み始めている受験生の役に立てば幸いである。

 

以上