法律解釈の手筋

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【刑事訴訟法編】司法試験・予備試験のための有益な基本書等【厳選】

1.はじめに

※この項目は他の書評記事でも記載した内容と同じなので、そちらをすでに読んでいただいた方はこの項目を飛ばしていただいて構わない。

ここでは、受験生がよく使用している会社法の基本書や演習書について、個人的な書評を交えながら、紹介する。

まず、前提として、僕は人にはそれぞれに合った勉強法があると考えている。基本書等を読まなくても予備校教材だけで予備試験に1年程度で合格できる人もいれば、基本書等や演習書等を通じて深い理解をすることで司法試験に合格できる人もいる。

僕はどちらかといえば後者側の人間だった。予備校のような論点を紹介する教材だと、どうしても論点の文脈が分からなかったりするが、基本書では、原理原則から説き起こして各論点を説明するため、スッと入ってくる感じがあった。

これから紹介する基本書等は、そのようなタイプであった僕が紹介する基本書等になるため、予備校教材だけで十分合格できるタイプの受験生が無闇に手を出すことは、全くお勧めしない。また、仮に手を出すにしても、無闇やたらに全ての書籍を購入するのは、消化不良を起こし、弊害の方が大きくなるおそれがある。自分のキャパシティとの兼ね合いは非常に大事であることに注意してほしい。

今現在予備校教材でよく理解できていない部分がある方や成績に伸び悩んでいる方にとっては、もしかすると最良の教材になり得る。立ち読みからでも良いので、一度気になった書籍を読んでみることを勧めたい。

 

2.基本書

(1) 基本刑事訴訟法

2020年6月出版。392頁。

2021年3月出版。432頁。

2020年に1冊目が出版された、基本〇〇シリーズの刑事訴訟法Ver.である。

正直、この基本〇〇シリーズは個人的には好きではないのであるが、こと刑事訴訟法に関しては、この基本書を最もお勧めとして紹介しないといけないレベルの完成度であると思っている。まず手続理解編と論点理解編で分けた構成は秀逸であるし、内容も

ネックは2冊組になってしまっているため、その分量の多さにあるが、2冊合わせて約820頁であることを考えると、酒巻刑訴とは140頁差ということで、バカみたいに分量が多くなっているわけではないことに留意されたい。刑事実務基礎の対策にも使いやすいことを考えると、この2冊を買っておいて全く損はないと考える。

(2) 酒巻刑訴

2020年7月出版。682頁。

酒巻教授による基本書である。法学教室で連載されていた論稿をベースに書籍化されたものであるが、その内容は非常に拡張高く、古き良き基本書という印象を受ける。

しかし、その内容は鋭く、内容にも深みがある。酒巻先生の学説は他の論文や書籍でも引用されることが多い権威の高い基本書であるので、すべての説をこの基本書から採用してもまず問題ないという意味では、使いやすい1冊であると思う。ちなみに僕が受験生時代にメインで使用していたのはこの酒巻刑訴である(学説も、例えば訴因変更の可否とかは、判例の基準ではなく酒巻説を受験答案で採用していた。※みんなに判例と違う説を勧める趣旨ではないので注意されたい。)

権威の高い基本書を使用したいという方には、酒巻刑訴をお勧めする

(3) リークエ刑訴

2018年2月出版。600頁。

従来から根強い人気を誇っているリークエシリーズの刑事訴訟法Ver.である。

 

 

3.副読本

(1) 川出判例講座

2021年10月出版。576頁。

2018年5月出版。240頁。

基本書の項目に記載しようか迷ったが、若干基本書として使うには使いづらいと思ったので、副読本という位置づけにした。もっとも、それくらい基本的な解説も充実しており、基本書としての使用も不可能ではない書籍といえる。

判例をベースに刑事訴訟法理論を解説してくれている。以下で紹介する古江本が難しすぎる、という方はこちらの川出判例講座を副読本として用いることをお勧めする。

(2) 古江本(事例演習刑事訴訟法)

2021年9月出版。574頁。

刑事訴訟法といえばこの本、という書籍である。タイトルに「事例演習」とあるとおり、演習書という位置付けであるが、個人的な使用方法としては、読み物としての使用で良いと思うので副読本の項目で紹介させていただいた。

もっとも、シェアの割には、かなり難易度の高い書籍である。古江本を完璧に理解していれば、間違いなく刑訴で上位を狙えるレベルの内容になっている。

(3) 事例から考える刑事証拠法(電子書籍版のみ)

まだ電子書籍のみの販売であるが、良書なので紹介しておきたい。

法学教室の連載で、証拠法のみを重点的に解説したものとなっている。特に伝聞法則の説明の箇所はかなり秀逸で、伝聞法則を根本的な部分から理解することができる。

近い将来紙でも書籍化されると思われるが、待ちきれない人はまずは電子書籍版で読み進めることをお勧めする。

 

4.演習書

特になし。

あえて挙げるとすれば、粟田知穂『エクササイズ刑事訴訟法』(2021年6月出版)である。司法試験と同じくらいの長文事例が18問掲載されており、比較的コンパクトな演習書である。その分解説もかなり簡潔である。

もっとも、刑事訴訟法は予備試験と司法試験の過去問で重要な論点はほとんど出尽くしているといえる状態になっており、過去問を解きつつ、古江本を読み進めていく、という勉強法で全く問題ないと考える。また、基本刑事訴訟法や古江本も事例形式になっているので、最悪そちらで事例のイメージは持てるであろうことからも、その点からもあえて演習書を他で持つ必要性が低いといえる。

そのため、上記の問題集に手をつけるよりも、過去問を解くことをおすすめする。過去問だけでは不安という方は、上記演習書を解くことを勧める。

 

5.判例集

(1) 判例百選

2017年5月出版。278頁。

刑事訴訟法の判例集も、判例百選一択で良いと考える。

川出判例講座が判例集として位置づけられる可能性もある(こう考えると、川出判例講座のバランスの良さがかなりお分かりいただけると思う。)が、純粋な判例集としては、百選で良い。

刑事訴訟法は判例がかなり重要なので、さすがに判例百選は必読の1冊と思われる(もちろんイチから読み進めていくのではなく、基本書や演習書で出てきた判例を詳しく知るために、判例百選の当該判例の頁を読む、という使い方である。)。

 

6.おわりに

かなり多くの書籍を紹介させていただいたが、冒頭にも記載したように、決して全ての書籍を購入することを勧めているわけではないことに注意してほしい。僕も受験生の頃に全てを使用していたわけではない。

僕の書評を読んでいただいた上で、今の自分にとって必要な書籍はどれか、というのをしっかり吟味していただいた上で、各書籍を読んでみてほしい。

以上