法律解釈の手筋

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令和5年度 司法試験 民事訴訟法 解答例

解答例

第1 設問1(以下、民事訴訟法は法名略。)

1 (a) 法的根拠及び判断基準

民事訴訟法上、違法収集証拠に関する明文規定は存在せず、また、刑事訴訟と異なって将来の違法捜査の抑止という点を重視する必要がないことからすれば、真実発見の観点から、違法収集証拠の証拠能力は原則として認められると考える。しかし、違法な行為によって収集した証拠すべてに証拠能力を認めることは、裁判所が違法収集行為を認めその行為を助長することにつながる。そこで、違法収集証拠については、信義則上(2条)証拠能力が否定される場合があると考える。具体的には、①刑事上罰すべき行為にあたる違法行為による場合はすべて証拠能力が否定され、②刑事上罰すべき行為にあたらない程度の行為の場合には、違法性の程度・証拠の重要性等諸般の事情を総合考慮して決すると考える[1]

2 (b) あてはめ及び結論

本件では、Yの行為は犯罪行為に該当しないため、直ちに証拠能力が否定されることはない。たしかに、Yは閉じてあったXのノートパソコンを開くことで、本件メールを閲覧可能にしている。ノートパソコンを開くという行為は機密性の高い第三者のノートパソコンのプライバシーを一定程度侵害する。しかし、Xのパソコンにはパスワードがかけられておらず、Yはパスワードを解析するといった行為をしたわけではなく、その違法性の程度は高いとはいえない。また、本件動産の売買契約に関するやり取りはすべて口頭でなされたうえに、引渡しもYがXに直接交付する方法によりなされており、本件動産の売買契約を証明する証拠が他にない。そうだとすれば、本件メールの内容は、本件動産の売買契約を証明するために不可欠といえ、本件文書の証拠の重要性は非常に高いといえる。

以上にかんがみれば、本件文書の証拠能力は認められる。

第2 設問2

1 課題(ア)

(1) 控訴審裁判所は、甲債権は弁済により消滅したとして、原判決を破棄し、Xの請求を棄却することができるか(305条)。不利益変更禁止の原則(304条)との関係で問題となる。

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