解答例
第1問
第1 設問1(以下、破産法については、法名略。)
1 小問1
(1) ①について
ア 破産手続開始時に破産者に帰属する財産は、破産財団に属する(34条1項)。また、当該財産が日本国内にあることを問わない(同括弧書き)。
イ ①の財産は、すでに売買代金を破産者Aが支払済みの雑貨であり、破産者Aが所有権を有する財産であるところ、破産者に帰属する財産といえる。また、①の財産はP国所在の販売店で預かられているものであるが、破産財団の帰属に影響しない。
ウ したがって、①の財産は、破産財団に属する。
(2) ②について
ア 34条1項の規定にかかわらず、34条3項各号に該当する財産は、自由財産にあたり、破産財団にあたらない。具体的には、現金99万円まで(34条4項1号、民事執行法131条3項、同執行令1条)と差押禁止財産(倒産法34条2項2号)である。
イ ②の財産は、現金90万であり、99万円を超えない。
ウ したがって、②の財産は、破産財団に属しない。
(3) ③について
ア 34条1項から、破産者が破産手続開始後に取得した新得財産は、破産財団に属しない(固定主義)。
イ ③の財産は、令和4年4月20日に被相続人Cが死亡したことによって相続人兼破産者Aに帰属しているところ、かかる死亡原因は破産手続開始日の令和4年4月10日よりも後である。
ウ したがって、③の財産は、破産財団に属しない。
(4) ④について
ア 破産手続開始前の原因に基づく将来の請求権は、破産財団に属する(34条1項)。
イ ④の財産のような破産手続開始前に締結された第三者のための生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は、破産財団に帰属するか。死亡保険金請求権が「将来の請求権」(破34Ⅱ)にあたるか。
(ア) 通説・執行実務によれば、保険契約の成立とともに抽象的保険金請求権が発生し、同請求権は処分可能でかつ差押えの対象になるとしている。そこで、死亡保険金請求権は「将来の請求権」にあたる[1]。
(イ) ④の財産は、死亡保険金請求権である。
(ウ) したがって、④の財産は、破産財団に属する。
2 小問2
(1) 第1に、Bは、裁判所に対して自由財産の拡張裁判(34条4項)をすることが考えられる。
ア 裁判所は、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた34条3項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、自由財産拡張の決定をすることになる(34条4項)。
イ 本件では、Aは、すぐに新たな職に就くことが難しい上、持病があるため、本件保険契約を解約されてしまうと代わりの医療保険に加入する必要があるところ、その場合には、保険料が従前と比べてかなり高額になることが判明している。
ウ そこで、Bは、以上の事情を主張して、自由財産拡張裁判をすることが考えられる。
(2) もっとも、上記主張は、現金90万円に加えて、預金債権600万円を自由財産として有するAの状況からすれば、拡張の申立てが認められない可能性が高い。そこで、第2に、