法律解釈の手筋

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令和3年度(2021年度) 東大ロー入試過去問 民事系 解答例

 解答例

第1 設問1(設問1(ア)では、民法は法名略。)

1 (ア)について

(1) C社は、Fに対して、法定地上権による占有権原の抗弁を主張することが考えられる。かかる反論は認められるか。

(2) 法定地上権が認められるためには、①抵当権設定時に土地の上に建物が存すること②その土地と建物とが同一の所有者に属すること③土地または建物に抵当権が設定されたこと④競売の結果、土地と建物とが異なる所有者に属するに至ったこと、が必要である[1]。本件では、要件②ないし④は特に問題とならないため、以下、要件①について検討する。

(3) 本件では、抵当権設定時に存在した建物と、本件競売時に存在する建物が異なるものであるところ、①の要件を充足するかが問題となる。

ア 388条の趣旨は、抵当権設定当時の当事者の合理的意思の尊重にある。そこで、法定地上権が成立するためには、抵当権者と抵当権設定者の合理的意思として、新建物について法定地上権を留保したと認められるか否かによって決する。もっとも、当事者の合理的意思のみによって買受人が不測の損害を被るのは取引の安全を害するため、買受人に不測の損害与えないか否かについても考慮すると考える。

イ 本件では、抵当権設定当時、AとC社との間では、C社が乙建物を取り壊し、新たに丙建物を建築することが予定されていた。そこで、AとC社との間で、甲土地のみについて抵当権の設定を受けることを約し、そのうえで、丙建物が建築されたときは、C社はAに対し、丙建物について抵当権の設定をすることとする旨の合意がされた。以上の経緯にかんがみれば、AとC社の合理的意思として、丙建物について法定地上権を留保する旨が認められる。もっとも、買受人Fからすれば、A及びC社間の当該合意について知り得ないため、乙建物を基準として法廷地上権の成立が認められるにとどまると考える。また、本件では、丙建物についてC社の抵当権設定登記が具備されていないものの、Fは甲土地の現地調査をするはずであるので、この点は法定地上権の成立を否定する事情にはならない。

ウ 本件の事実関係と異なって、AがC社から甲土地及び乙建物について共同抵当権の設定を受けていたような場合、当事者の合理的意思から、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり,かつ,新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り, 新建物のために法定地上権は成立しないと考える。本件では、抵当権者AはC社から丙建物の抵当権の設定も受けていたのであるから、特段の事情が認められる。しかし、本件では、Aは丙建物の抵当権設定登記を受けていないところ、買受人Fにとっては、丙建物に対する抵当権の存在を認識せずに、甲土地を更地として評価している可能性がある。そのため、かかる場合には、法定地上権は成立しないと考える。

エ よって、本件では、乙建物を基準として法廷地上権が成立する。これに対して、Aが乙建物についても抵当権設定を受けていた場合には、Fが丙建物抵当権の設定を認識していない限り法定地上権は成立せず、認識していた場合には丙建物を基準として法定地上権が成立する。

2 (イ)について(設問1(イ)では、民事訴訟法は法名略。)

(1) まず、Fの訴状の陳述は、Cの欠席に関わらず、有効な主張となる(161条3項)。

(2) 次に、Cが期日に出頭しないため、「争うことを明らかにしない」にあたり、Fが訴状について記載する①甲土地は、もともとC社が所有していたものを競売によってFが取得したこと、②現在は、丙建物があり、③C社が占有していること、という事実について擬制自白が成立する(159条1項、159条3項本文)。最初の期日より前に被告たるCは訴状を受領しているため、擬制自白を排除する例外(159条3項)にも当たらない。

(3) したがって、裁判所は、Fの請求原因事実について当事者に争いがないものとして認定しなければならず(弁論主義第2テーゼ)、裁判所は、Fの請求を認容しなければならない。よって、C社の期日における欠席は、訴訟法上、上記のような意味を有する。

第2 設問2(設問2では、会社法は法名略。)

1 本件抵当権設定契約は、A及びC社間の契約であるから、「株式会社」との取引ではなく、直接取引(356条1項2号)にあたらない。

2 それでは、本件抵当権設定契約は、間接取引(同項3号)にあたるか。

(1) 間接取引とは、会社が取締役以外の第三者と行う取引で、会社と取締役の利益が相反する取引をいう。同条の趣旨は、会社の利益の犠牲の下に取締役が自己の利益を優先することを防止する点にたる。そこで、当該取締役の関与の程度から、当該取締役と会社の利益が実質的に相反するか否かによって決する

(2) 本件抵当権設定契約は、AのB社に対する貸金債権を被担保債権としてなされたものである。B社の代表取締役はEである。また、EはC社の取締役も務める。確かに本件抵当権設定契約は、DがC社を代表して行ったものであるが、Dは、Eからの依頼によって行っているところ、Eの関与によって、B社とC社との間で利益の相反する取引が行われる危険があるといえる。

(3) したがって、本件抵当権設定契約は、直接取引にあたる。

3 Dは、C社の取締役会の承認を経ることなく本件抵当権設定契約を締結している。間接取引にあたるにも関わらず、取締役会の承認手続を経ていない場合、会社は、取引相手方に対して、当該取引の無効を主張することができる。

4 よって、C社は、Aに対し本件抵当権設定契約は、利益相反取引にあたると主張することができる。

以上

 

[1] 道垣内弘人『担保物権法[第4版]』(有斐閣、2017年)215頁。