法律解釈の手筋

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平成23年度 予備試験 民事訴訟法 解答例

解答例

 

1 原則的検討事項

(1) 控訴状の控訴人欄は「Z」と表示されているところ、被告と異なる者が控訴提起しているため、本件控訴提起は不適法ではないか。

(2) まず、被告と控訴人が異なるかどうかを判断するために、本件訴訟における当事者が誰かを検討しなければならない。

ア 当事者の確定の基準については、基準の明確性から、訴状に表示された者を当事者と考える。

イ 本件では、訴状の記載欄には「Y」と表示してある。

  ウ したがって、本件における当事者たる被告はYである。

(3) 次に、被告と控訴人が異なるかについて検討しなければならないが、控訴状の控訴人欄は「Z」であるのに対し、本件当事者はYであるため、控訴人でない者による控訴であることが明らかである。

(4) もっとも、裁判所としては、控訴状の補正(290条参照)をすることができないかを検討しなければならないが、当事者である被告はすでに死亡しているところ、控訴人欄を「Y」に訂正したところで、存在しない者による控訴提起として不適法になる。

2 原則的裁判内容

以上の検討により、286条2項1号に反するとして、控訴審裁判長は控訴状却下命令(288条、137条2項)又は、控訴審裁判所は控訴不適法却下判決(290条)をしなければならないのが原則である。

3 もっとも、以上の裁判によると、以下の不都合が生じる。

(1) 控訴状却下命令ないし控訴不適法却下判決により、原判決は確定する。原判決は死者という実在しない者を被告としているため、無効な判決となる。

(2) しかし、Xは実質的には相続人Zを相手に勝訴しており、本件訴訟によってZに対して強制執行ができないことは妥当でない。また、Zにおいても、自ら訴訟行為をしていたにも関わらず、かかる責任を負わないとすることは妥当でない。

4 例外的検討事項

(1) そこで、例外的に、Zを本件訴訟の当事者とすることで、Xに当事者の表示の訂正をさせた上、控訴棄却判決をし、XがZに対し強制執行できるようにさせることができないかを検討する。

ア まず、当然承継(114条1項1号)の類推適用により、本件訴訟の原審において、Zが被告になっていたと考えることができる。

イ また、Zが原審においてした訴訟行為は、32条1項に基づく訴訟行為であり、当事者と同等の手続保障が与えられていた以上、原審におけるZの訴訟行為を有効と解することに問題はない。

(2) 次に、上記例外的措置が無理だとしても、任意的当事者により当事者をYからZに変更することで、例外的に控訴棄却判決をすることができないかを検討する。

  ア まず、任意的当事者変更については明文の規定がないものの、時効の完成猶予、訴え提起期間順守等のメリットがあるため、訴えの主観的追加的併合と訴えの取下げの複合行為として認められると考える。

    そこで、任意的当事者変更が認められるためには、①旧訴と新訴との間に38条の要件該当性が認められること②第1審係属中であること③訴えの取下げについての同意があることが必要である。

  イ 本件では、旧訴はXのYに対する売買契約に基づく売買代金支払請求であるのに対し、新訴はXのZに対するXY間の売買契約に基づく売買代金支払請求である。Yは旧訴の訴訟係属時点においてすでに死亡しているため、そもそも38条の要件を充足することはあり得ないものの(①不充足)、実質的には両訴訟の目的である権利は同じ売買契約に基づく売買代金支払請求権であり、類推適用の基礎がある。

    次に、本件では控訴提起が問題となっているところ、第1審係属中ではない。しかし、同要件の趣旨は新当事者の審級の利益の保護にあるところ、Zは第1審において法定代理人として訴訟行為を行っており、手続保障は与えられていたといえ、審級の利益は害されていないと考える。したがって、②要件は実質的に充足していると考える。

    そして、③については、旧訴被告Yは既に死亡している以上③要件のYの同意は不要であると考える。

  ウ したがって、本件では、任意的当事者変更の類推適用が認められる。

  エ 任意的当事者変更によって、新当事者は当然には従前の訴訟状態を承継しないものの、旧当事者の訴訟追行が新当事者のそれと実質的に同一視できる場合には、新当事者は旧当事者の訴訟追行の結果を争えないと考えるところ、本件では、Yは第1審において法定代理人としてZを代理しており、実質的に旧当事者Yと新当事者Zは同一であるといえる。

    したがって、任意的当事者変更の効果として、Zは従前の訴訟状態を承認しなければならず、第1審は有効であるため、第1審を取り消し、第1審裁判所に差し戻す必要はない(308条1項)。

5 例外的裁判内容

(1) 以上の検討により、まず、裁判所は、当然承継の類推適用により、裁判所がXに対して表示の訂正を釈明し、Xがこれに応じて訴状の表示の訂正をした場合、売買契約締結事実の存在について心証を形成できたときには、控訴棄却判決をすべきである。

(2) 次に、上記措置が認められないとしても、控訴審裁判所は、Zに対し任意的当事者変更をした上で控訴提起する旨の補正ないし釈明をし、Zが任意的当事者変更をした場合、上記と同様に売買契約締結事実の存在について心証形成できたときには、控訴棄却判決をすべきである。しかし、Zは任意的当事者変更に応じない可能性があるため、Xに対しても任意的当事者変更及び控訴提起又は付帯控訴をする旨の釈明をすべきである。この点について、全部勝訴者のXには控訴の利益がないとも思えるが、第1審判決の既判力はXY間にしか及ばずZには及ばないところ、Zに対し既判力を及ぼす利益があるといえ、この点は問題とならない。

以上