解答例
第1 設問1(以下、民事再生法については、法名略。)
1 小問1
(1) A社は、未払売買代金を約定どおりに支払うことができない。
(2) 仕入先20社のA社に対する売買代金債権は、「再生債権」(84条1項)となる。
ア 「再生債権」とは、①再生債務者に対し②再生手続開始前の原因に基づいて生じた③財産上の請求権であって、④共益債権(民再119等)又は一般優先債権(民再122Ⅰ)に該当せず(民再84Ⅰ)、執行可能性があるものをいう。
イ 仕入先20社の売買代金債権は、再生債務者A社に対するものであり(①)、再生手続開始前の令和3年2月末日までに納品した商品であることから、再生手続開始前の原因たる売買契約に基づいて生じたものである(②)。また、財産上の請求であって(③)、執行可能性もあり(⑤)、共益債権等に該当する事情もない(④)。
ウ したがって、再生債権にあたる。
(3) 再生債権は、後述2や3のような例外事情がない限り、再生計画に従って弁済しなければならない(85条1項)。そして、仕入先20社の売買代金債権には、そのような例外事情がない。
(4) よって、A社は、未払売買代金債権を約定どおりに支払うことができない。
2 小問2
(1) A社は、裁判所の許可を得て、クーポン券を使用させることができる。
(2) クーポン券の保有者の権利は、「再生債権」に該当する。
ア 再生債権の要件は、前述のとおりである。
イ 本件のクーポン券は、A社の店舗において、購入した学生服の仕立て直しや交渉入りのワイシャツの購入等に際して、金券として使用できるとのことであり、クーポン券は、商品引渡請求権や役務提供請求権として、財産上の請求権にあたるといえる(③)[1]。また、①、②、④及び⑤の要件も当然に充足する。
ウ したがって、本件のクーポン券は、「再生債権」に該当する。
(3) 前述のとおり、再生債権は、再生計画に従って弁済するのが原則である。しかし、