解答例
第1 設問1
1 平成25年7月1日に開催された甲社取締役会(以下「本件役会」という。)は、Aが取締役Cに対して招集通知を発していないところ、かかる点が368条1項に反し違法であるとして、本件役会が無効とならないか。
(1) 株主総会を開催するには、その開催に先立って取締役会を開催し、298条1項各号に掲げる事項を定めなければならない(298条4項)。
それにも関わらず、本件では、取締役Aは取締役Cに対する召集の通知を怠っており、368条1項違反が認められる。
(2) そうだとしても、上記違反によって、本件役会は無効になるか。明文の規定がないため問題となる。
ア そもそも、取締役会は取締役会の権限行使を慎重かつ適切ならしめるため、会議 体になっている。そして、役会の招集通知はそのような取締役会への出席の機会を確保する重要な制度である。
そこで、取締役会の招集手続に瑕疵がある場合、原則として取締役会が無効になると考える。
もっとも、法的安定性の見地から、当該取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情[1]があるときは、招集手続の瑕疵は決議の効力に影響を与えないと考える[2]。
イ 本件では、確かに取締役Cに対する招集通知を欠いている。しかし、甲社では取締役は3人しかおらず、その内2人は本件役会に参加し、株主総会の開催に賛成している。そうだとすれば、Cが本件役会に出席したとしても、本件役会の決議の結果が変わることはなく、賛成のままであったはずである。
したがって、取締役Cが出席してもなお決議の結果に影響がなかったといえる。
ウ よって、本件役会は有効である[3]。
第2 設問2
1 平成25年7月16日に開催された甲社株主総会(以下「本件総会」という。)は有効か。
(1) 株主総会が無効となるためには、決議の内容に法令違反がなければならない(830条2項)。そして、かかる法的安定性の見地から、その瑕疵は重大な瑕疵に限られると考える。
(2) 本件では、株主Cに対する株主総会の招集通知を欠いているが、かかる瑕疵は決議の内容に関する瑕疵ではない。
(3) したがって、本件では、無効事由がない。
2 よって、本件総会は有効である。
以上
[1] 特段の事情が認められる場合の具体例は①決議の結果と同一の内容を述べていた場合②いわゆる名目的取締役に招集通知を欠いた場合③すでに辞表を提出して取締役の職務を執行していなかった者への招集通知を欠いた場合④特別利害関係人である取締役への招集通知を欠く場合若しくは役会へ参加させた場合(両場合に反対説あり)などがある
[2] 最判昭和44年12月2日参照。
[3] 東京高判昭和60年10月30日参照(なお、学説では反対説も有力)。