法律解釈の手筋

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平成27年 予備試験 行政法 解答例

解答例

 

第1 設問1

 1 本件指定は中間的行為であるが、法効果の直接性が認められず、「処分」にあたらないのではないか。

 2 「処分」とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。

 3 河川法(以下、「法」という。)6条1項3号は、同項1号の区域と一体として、河川管理者が管理を行う必要がある区域を河川区域として指定することができることを定めている。本件指定は同号に基づいてなされている。指定がなされると、同条4項により公示がなされる。また、法12条1項は河川管理者は河川の台帳を調製し、これを保管しなければならないことを定めており、その台帳のひとつである河川現況台帳(同条2項)の図面には河川法施行令(以下「施行令」という。)5条2項により縮尺図にて河川区域の境界を定めることとされている(同項1号)。そして、河川区域内では工作物の新築、改築、除却(以下、「新築等」という。)をしようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならず(法26条)、それに反した場合、監督処分をうけることになる(法75条1号)。かかる規定の効力は法102条2号の罰則規定によって実効性が担保されている。

   以上にかんがみれば、河川区域の指定によって、河川区域内の住民はその所有権等に制限を受け、公示によってその制限を受けるかどうかについて具体的に予測可能となる。

 4 しかし、本件指定によって、その後に河川区域内の所有権者について収用処分や換地処分が予定されているわけではなく、最判平成20年9月10日(以下「平成20年判決」という。)[1]の射程が及ばず、法効果の直接性が認められない。また、本件指定に対して取消訴訟を認めなくとも、本件指定に反対の者は、河川区域内での新築等の許可申請をして、その却下処分に対して取消訴訟を提起するので足りる。したがって、実行的権利救済の観点からも、本件指定に対して取消訴訟を認める必要性がない。この点についても平成20年判決の判例の射程が及ばない[2]

 5 よって、本件指定は「処分」にあたらない[3]

第2 設問2

 1 本来河川区域内にある建築物については、河川管理者の許可なくして改築することが許されず(法26条1項)、かかる規定に違反した場合は、河川管理者から監督処分を受ける(法75条1号)。

   本件では、本件コテージが河川区域内にあり、かつ、Cは本件コテージの改築をしている。それにも関わらず、河川管理者A県知事の許可を得ていない。

   したがって、原則として、Cは本件処分を受ける地位にある。

2 しかし、本件命令は、約14年にもわたって河川法上の問題を指摘されず、かつ、本件コテージの改築の際に、本件コテージが河川区域外であることを職員Dに対して確認したCの信頼を害する点で、信義則に反し違法とならないか。

(1) 確かに、長期間にわたって河川法に反していることを指摘されていない場合、河川法に違反していないとの信頼が生じ、かかる信頼が保護に値することもあり得る。特に、河川法違反の有無について、自ら行政に確認した者については、なおさら信頼を保護すべき場合がある。しかし、河川法の目的は、河川区域内を河川管理者の監督下におくことで、住民の生命・身体を保護する点にあると思われるところ[4]、河川区域内に建築物がある場合については建築物を利用する住民の生命・身体に対する重大な権利侵害が生じうる点にかんがみ、信義則の適用については慎重に決するべきと考える。

   そこで、河川法の上記目的と当該処分を受けた被処分者の信頼の程度を比較し、被処分者の信頼を特に保護すべきと認められる特段の事情が存在する場合に、初めて信義則が適用され、当該処分が違法になると考える。

(2) 本件では、Cは,2000年に本件キャンプ場を設置し,本件キャンプ場内に本件コテージを建築した。河川法上の問題について,2014年7月に至るまで,A県知事から指摘を受けることはなかった。また、Cは、本件コテージについて多額の費用を要する改築を決断する際,本件指導に携わるA県の建築指導課の職員Dに対し,「本件コテージは河川区域外にあると理解しているが間違いないか。」と尋ねており、河川課の担当職員Eから「測量をしないと正確なことは言えないが,今のところ,本件コテージは河川区域外にあると判断している。」旨の回答を受けた。以上にかんがみれば、Cは本件コテージが河川区域外にあることについて相当の信頼を有していたということができる。また、上記信頼に基づくCの行動に帰責性もなかった。他方、本件処分がなされた経緯は、2014年7月にA県外にあるほかのキャンプ場で河川の急激な増水による事故が発生したことを契機として、本件コテージの設置場所について調査したというものである。すなわち、本件キャンプ場において何らかの事故があったというわけではなく、全く無関係のキャンプ場において起きた事故を原因としてなされた調査に基づいて、本件処分がされている。そうだとすれば、本件キャンプ場において将来河川の氾濫による事故が起きるかどうかについては全く不明であり、すぐに本件コテージを除却すべきということにはならないはずである。また、本件コテージは河川区域内にあるかどうかについて測量をしないと正確な解答ができないくらいには河川区域内外に近い場所に位置しており、氾濫によって本件コテージに被害の生ずる危険性が低い場所にあるといえる。

   以上にかんがみれば、Cとしては、B川の氾濫のおそれや、本件コテージについて将来事故が起こるおそれについて調査をしたうえで、事故の起きる可能性が高いと判断されるまでは、Cの信頼を特に保護すべき特段の事情があるといえる。それにもかかわらず、A県が何らの調査もせずに本件命令を発した点については、Cの信頼を害する信義則違反がある。

 (3) したがって、本件命令は信義則に反し、違法である。

以上

 

[1] 土地区画整理事業の事業計画決定について処分性を肯定した判例。かかる判例は、土地区画整理事業の事業計画決定がなされると、特段の事情のない限り具体的な事業がそのまま進められ、換地処分が当然に行われる、という土地区画整理法の制度設計から、「施行地区内の宅地所有者等は,事業計画の決定がされることによって,前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされる」として、法効果の直接性を認める。

[2] 平成20年判決の土地区画整理事業については、換地処分がなされる前に実際の工事が進捗してしまう点にかんがみて「換地処分等の取消訴訟において,宅地所有者等が事業計画の違法を主張し,その主張が認められたとしても,当該換地処分等を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして事情判決(行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性が相当程度ある」ため、「事業計画の適否が争われる場合,実効的な権利救済を図るためには,事業計画の決定がされた段階で,これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性がある」と判断した。

[3] この問題においては処分性を肯定することは非常に困難である。この問題については、おそらく結論にも配点が振られていると予想する。

[4] 河川法第1条「この法律は、河川について、洪水、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もつて公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とする。」