法律解釈の手筋

再現答案、参考答案、法律の解釈etc…徒然とUPしていくブログ… ※コメントや質問はTwitterまで!

2018-01-01から1年間の記事一覧

慶應ロー入試 令和元年度(2019年度) 刑法 解答例

解答例 第1 問題1 (以下、刑法は法名略。) 1 事例① 199条[1] 2 事例② 240条後段、236条2項[2] 3 事例③ 252条1項[3] 4 事例④ 60条、65条1項、252条1項[4] 5 事例⑤ 235条 第2 問題2 1 XがAのバッグ(以下「本件バッグ」という。)を取り上げて立ち去った…

慶應ロー入試 令和元年度(2019年度) 民事訴訟法 解答例

解答例 第1 設問1 1 裁判所がBによる売買代金の弁済の事実を認定してXの請求を棄却することは、弁論主義第1テーゼに反し許されないのではないか。 2 弁論主義とは、判決の基礎をなす事実の確定に必要な資料の提出を当事者の権能および責任とする建前をいう…

平成29年度(2017年度) 東大ロー入試 刑事系 解答例

解答例 第1 設問1 (この設問では、刑法は法名略。) 1 XがBの後頭部に回し蹴りをして1カ月の加療を要する傷害を負わせた行為に傷害罪(204条)が成立しないか。 2 Xの上記行為は不法な有形力の行使であり、それによってBの生理機能に障害を加えている。 3 …

平成28年度(2016年度) 東大ロー入試 刑事系 解答例

解答例 第1 設問1[1] 1 Yの罪責 (1) Yが、後述のXの暴行を黙認した行為に、傷害致死罪の幇助犯(62条1項、205条)が成立しないか。 ア Yの上記行為は期待された行為をしない不作為であるが、「幇助」にあたるか。 (ア) 幇助とは、実行行為以外の方法で、実…

早稲田ロー入試 2019年度('18年9月/'19年4月入学) 刑事訴訟法 解答例

解答例 1 Bの供述録取書(以下、「本件書面」という。)は、伝聞証拠(320条1項)であり、裁判所は証拠調べ請求(298条1項)を却下決定すべきでないか(刑事訴訟規則190条1項)。 (1) 伝聞証拠とは、公判廷外供述を内容とする証拠で、内容の真実性が問題となるもの…

早稲田ロー入試 2019年度('18年9月/'19年4月入学) 民事訴訟法 解答例

解答例 第1 設問前段 (以下、民事訴訟法は法名略。)[1] 1 Yの「甲建物は自分が所有している」との主張は、既判力(114条1項)により遮断されないか。 (1) まず、前訴既判力が後訴に及ぶか。 ア 既判力とは、確定した判決の主文に表された判断の通有性[2]をい…

早稲田ロー入試 2019年度('18年9月/'19年4月入学) 刑法 解答例

解答例 第1 甲の罪責 (以下、刑法は法名略。)[1] 1 甲が、包丁をBに突き付けようとして、包丁を持ったままBの方に振り向き、よって、Bの腹部に包丁を刺して死亡させた行為に傷害致死罪(205条)が成立しないか。 (1) まず、甲の上記行為は、Bに向けられた不…

早稲田ロー入試 2019年度('18年9月/'19年4月入学) 民法 解答例

解答例 第1 問題1 小問1 1 EはC所有の甲土地に対して抵当権を有するか。抵当権が存在しているためには、①被担保債権が存在し、②有効な抵当権設定契約が締結されていることが必要である。 2 まず、EはAに対して2000万円の貸金債権を有しており、被担保債権…

平成27年度(2015年度) 東大ロー入試 刑事系 解答例

解答例 設問1[1] (この設問では刑法は法名略。) 第1 Xの罪責 1 Xが「正当な理由」なくB店という「建造物」に管理権者の意思に反して立ち入り「侵入」した行為に建造物侵入罪(130条)が成立する。 2 XがBの金庫という「他人の物」をバールでその効用を害し…

平成26年度(2014年度) 東大ロー入試 刑事系 解答例

解答例 第1 設問1 (この設問では、刑法は法名略。) 1 Yの罪責 (1) Yが「正当な理由」なく、Aの部屋という「人の住居」に、Aの意思に反して立ち入り「侵入」した行為に、住居侵入罪(130条)が成立する。 (2) YがXと「共同」して、Aの両手首を紐で後ろに縛…

東大ロー2年前期 成績

成績発表 東大ローの2年前記の成績が出ました。 再現答案は憲法、民訴、刑訴しかあげていませんが、一応、全科目欠席回数・感想と共に開示しておきます。 1. RWD (生賴雅志) 成績:B 欠席回数:2回か3回 発言回数:2回 妥当。特に文句なし。 2.民事判例研究…

平成25年度(2013年度) 東大ロー入試 刑事系 解答例

解答例 第1 設問1 1 Xが、殺意をもってAの首を絞めつけた行為(以下「第1行為」という。)に、殺人罪(199条)が成立する。 2 Xの上記行為は、人の生命侵害惹起の現実的危険性を有し、「人を殺」す行為にあたる。 3 Aは死亡している。 4 Aの死亡は交通事故…

債務不履行解除の手筋-最判昭和36年判決&平成8年判決-

第1 付随的債務の債務不履行解除 1.最高裁昭和36年11月21日第三小法廷判決 【事案(簡易版)】 YはAに対し甲土地を売却した。その後、AはXに対し同土地を売却した。YはAのために租税金を納付したため、それの償還請求をAに対してしたが、Aがこれに応じなかっ…

定期預金における民法478条の手筋-最判昭和41年判決&59年判決-

第1 定期預金の払戻しと478条適用 1.預金契約とは (1)預金契約の法的性質 預金契約とは、預金者と金融機関との間でなされる契約であり、その法的性質は消費寄託契約(666条)であることに判例学説でほぼ争いなし。 なお、金融機関は預金に関する入出金事務…

慶應ロー入試 平成30年度(2018年度) 憲法 解答例

解答例 第1 設問1[1] 1 訴訟提起の方法 Xは、A市が葬儀会場としてA市民公民館を無料で使用させた行為に、地方自治法242条の2第1項3号に基づく違法確認訴訟を、葬儀委員会に対して補助金100万円を支出した行為に、同条1項4号に基づく損害賠償代位請求訴訟を…

慶應ロー入試 平成29年度(2017年度) 憲法 解答例

解答例 第1 設問1 1 第1に、本件条例はXのB岳へ登る自由を侵害し、憲法13条に反して違憲無効であるところ、かかる無効な条例に基づいてなされた本件過料処分も違法であると主張する。 (1) 山へ登る自由というのは、山へ登ることによって自己の身体の…

慶應ロー入試 平成28年度(2016年度) 憲法 解答例

解答例 第1 A県立大学の、入学試験において一定程度女性を優遇する改革は、男性受験生と女性受験生を不当に差別するものであり、憲法14条1項に反し違憲ではないか。 1 まず、パターン1とパターン3は、男性受験生に比して女性受験生を優遇する点で、別異取…

慶應ロー入試 平成27年度(2015年度) 憲法 解答例

解答例 1 スポンサー適正表示法(以下「法」という。)4条は、事業者のPPやPIといった営利的表現の自由を侵害し、憲法21条1項に反し違憲ではないか。 (1) PPやPIという手法はいわゆる営利的表現であるが、かかる表現に憲法21条1項の保障が及ぶか。 ア 表現の…

『刑法事例演習教材[第2版]』 問題3 「ヒモ生活の果てに」 解答例

解答例 第1 甲の罪責 1 甲がBの頭部右側を5回にわたり殴打した行為に傷害罪(205条)が成立する。 (1) 甲の上記行為は、頭部という人体の枢要部に殴打によって衝撃を加えるものである。暴行を受けたBは4歳半と幼く、殴打という態様の強い暴行から身を守る…

『刑法事例演習教材[第2版]』 問題16 「哀しき親子」 解答例

解答例 第1 乙の罪責[1] 1 乙が、甲と共同して、Aの体を押さえつけた行為に傷害致死罪の共同正犯(60条、204条)が成立する。 (1) 甲乙の上記共同行為は、実行共同正犯の客観的構成要件を充足する。 ア 一部実行全部責任の処罰根拠は、各犯罪者がそれぞれ作…

慶應ロー入試 平成26年度(2014年度) 憲法 解答例

解答例 1 Dによる不許可処分は、Xの取材の自由を侵害し、憲法21条1項、刑事収容施設及び被収容者の処遇に関する法律(以下、「法」という。)114条1項に反する。 2 取材の自由は、憲法21条1項によって保障される報道の自由の不可欠の前提を成すものであり、…

『刑法事例演習教材[第2版]』 問題18 「キング・オブ・アフリカ」 解答例

解答例 第1 乙の罪責 (以下、刑法は法名略。) 1 乙の、Aに対してお金を払う気がないのに「品物を受け取るまでは渡せない」などとお金を払う気があるかのように装って、よってAを誤信させ「キング・オブ・アフリカ」(以下「本件ダイヤ」という。)を交付させ…

債権譲渡と相殺の手筋-最高裁昭和昭和50年12月8日第一小法廷判決-

1.最判昭和50年12月8日 【事案】 訴外会社AはYに対し、弁済期昭和42年12月3日、金額261万4000円の売掛債権(以下「本件売掛債権」という。)を有し、Yは、右売掛債務支払のために、同年7月3日金額を右同額、満期を同年12月3日とする約束手形(以下「本件約…

差押えと相殺の手筋-最高裁昭和45年6月24日大法廷判決-

1.最大判昭和45年6月24日 【事案(簡易版)】 XはAの国税債務滞納処分として昭和33年9月4日、A会社がY銀行に対して有していた預金債権を差押えた。これに対して、Y銀行は、9月4日時点でA会社に対して貸付債権を有しており、Y銀行とA会社の継続的取引約定書に…

東大ロー期末試験 上級刑事訴訟法 '18年度 再現答案 【評価:A】

再現答案 第1 第1問 (以下、刑事訴訟法は法名略。) 1 Kらが公道上に設置されたごみ集積所に出したごみ袋を密かに回収し、中身を点検した行為について (1) 上記行為は、領置(221条)にあたり、「強制の処分」(197条1項但し書)にあたらないか。もし仮に上記行…

慶應ロー入試 平成30年度(2018年度) 刑事訴訟法 解答例

解答例 第1 問題1 (以下、刑事訴訟法は法名略。) 1 小問1について 被疑者段階において検察官の請求により勾留された者が、同一の犯罪事実で交流機関に起訴された場合には、起訴と同時にそれまでの被疑者勾留が被告人勾留に切り替わり、特別の手続なしに被告…

東大ロー期末試験 上級民事訴訟法 '18年度(松下淳一問) 再現答案  【評価:A】

再現答案 第1 第1問(1) (以下、民事訴訟法は法名略。) 1 ①について (1) 外側説とは、一部請求の場合に相殺の抗弁を認めるときに、一部請求額からではなく、その債権の総額を基準にして自働債権として認められた額を控除する考え方である。 かかる考え方は…

東大ロー期末試験 上級憲法 '18年度 再現答案 【評価:B】

再現答案 第1 弁護士の主張 1 弁護士としては、XをA県迷惑防止条例(以下、「本条例」という。)15条1項で逮捕することは、Xの取材の自由を侵害し、憲法21条1項に反すると主張することが考えられる。具体的には、Xの行為の憲法上の意義がCの法益侵害の程度に…

『ロースクール演習 民事訴訟法[第2版]』 問題2 解答例

解答例 第1 設問1 1 裁判所の本件判決は、弁論主義第1テーゼに反し許されないのではないか。 (1) 弁論主義とは、判決の基礎をなす事実の確定に必要な資料の収集、提出を当事者の権能かつ責任とする建前をいう。その趣旨は、私的自治の訴訟法的反映に基づく…

慶應ロー入試 平成29年度(2017年度) 刑事訴訟法 解答例

解答例 第1 設問1 (以下、刑事訴訟法は法名略。)[1] 1 現行犯逮捕(憲法33条、刑訴法213条・212条1項2項)は令状なくして逮捕できる。通常逮捕における令状主義の趣旨は、あらかじめ令状裁判官に逮捕の理由・必要性を審査させることにより、被疑者の人権を保…